こんにちは。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。

今日もさっそく最近流行の動画や埋もれている良動画を独断と偏見で皆さんに紹介していこうと思います。選ぶ基準はただ一つ、僕の趣味です!

さて、ニコニコ動画では年に何度か特定のジャンルの動画が大流行することがあるのですが、その中の一つに「IKZO」ブームがあります。……と、アルファベットで表記しても、わからない方にはさっぱりだと思いますが、IKZOとは「イクゾー」と読み、これはすなわちあの大物歌手「吉幾三」のことを指すスラングなのです。

ではなぜ吉幾三がニコニコ動画で流行ったのか……不思議に思われる方のために、動画をご紹介しながら、改めてニコニコにおけるIKZOブームを振り返ってみたいと思います。

すべての元凶(?)となった動画は、ブームに先駆けること一年。2007年の5月に投稿されていました。


吉幾三の大ヒット曲「俺ら東京さ行ぐだ」を別の楽曲と無理矢理に合わせた、いわゆる"マッシュアップ"動画で、その強引かつ絶妙な編集が大いにユーザーにウケましたが、しかしこのときはまだ、ブームと呼べるほどのものではありませんでした。

吉幾三が「IKZO」として本格的にニコニコ動画でブレイクしたのは、翌年の4月。若者に大人気の女性アーティスト「Perfume」の「ポリリズム」と、「俺ら東京さ行ぐだ」とをミックスした「ポリ幾三」の衝撃的な登場がきっかけとなりました。


※元動画は現在削除されており、こちらは同動画の作者が再投稿したバージョン

この動画を契機として、ニコニコ動画では「俺ら東京さ行ぐだ」を様々な楽曲と合わせるマッシュアップブームが起こり、次々と作品が投稿されるようになりました。


個人的にIKZO関連の動画で一番好きな作品。「capsule」「Daft Punk」「Beastie Boys」という3組のミュージシャンの作品をマッシュアップした元動画がまず存在し、さらにそこに吉幾三を重ねるというミックスに挑戦。どう考えても無謀に思える試みでありながら、しっかりとかっこよく仕上げてきた奇跡の動画です。


おなじみ「TM NETWORK」の名曲「Get Wild」に「俺ら東京さ行ぐだ」を強引にミックス。……合うわけがないと思わせておいて、なぜか合ってしまう驚異の順応性! この"どんな楽曲にもなぜか合う"という特徴こそが、ニコニコ動画でIKZOブームが長く続くことになった最大の理由だと思われます。

こうなると、あとはもう「どんな楽曲と」「どんな風にセンスよく合わせるか」というアイデア勝負の戦いであり、より斬新なマッシュアップを生み出すためにユーザーは試行錯誤を重ね、IKZOブームはさらに加速していったのでした。


こちらの動画はまさかの宇多田ヒカルとのコラボ! 「Traveling」と「俺ら東京さ行ぐだ」のマッシュアップ。……そろそろお気づきかとは思いますが、IKZO動画はタイトルの名付けセンスも非常に重要です。


大物海外アーティスト「Red Hot Chili Peppers」との夢の競演!(?) イントロ終盤からするりと入ってくる「俺ら東京さ行ぐだ」の存在感がすごいことになっています。「これはこれでありだな」と思わせられる完成度はお見事。


「俺ら東京さ行ぐだ」が合うのは普通の楽曲だけではありません。こちらはファイナルファンタジー7のBGM「片翼の天使」と組み合わせた動画。もうここまでくると逆に合わない曲を探す方が大変なのでは……という気すらしてきますね。


そしてIKZOはついにクラシックの世界にまで進出! もう僕からは何も言うべきことはありません……。

……さて、ここまでIKZOがブームになると、気になるのは吉幾三ご本人がこのムーブメントについてご存じなのかということですが……。


なんと、ブームが始まってから数ヶ月後、ご本人がニコニコ動画に登場! これはニコニコ動画の運営サイドが働きかけたもので、よく了承してくれたものだと思います。まさかの本人降臨にニコニコユーザーも驚喜している様子がコメントからうかがえますね。

ちなみに2008年の7月末には、ニコニコ動画の時報に吉幾三が登場したこともありました。


現在は吉幾三ブームも一段落した感がありますが、決して終わったわけではなく、一つのジャンルとして定着したためにそれほど目立たなくなったといったところでしょう。

実際にまだIKZO動画は投稿され続けており、去る2009年11月11日には吉幾三誕生祭として、40人ものユーザーが合作したメドレー動画「【吉幾三】IKZO合作メドレー「大吟醸 '09」【生誕祭】」が発表されています。


数十年のギャップをものともせず、時代を超えて若者を熱狂させる「俺ら東京さ行ぐだ」。真の名曲は、いつまで経っても色褪せることはありません。

勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ

1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。

(タイトルイラスト:3P3P) ※本コラムで紹介している動画は、作者やサイトなどの都合により削除されることもあります。あらかじめご了承ください。