【コラム】

明らかになったジェフ・ベゾスの新型ロケット - Amazon宇宙便は実現するか

2 ニュー・グレンの正体

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明らかになったニュー・グレンの正体

謎に包まれていたニュー・グレンだが、3月7日になり、ようやくその一端が明らかにされた。

まず打ち上げ能力は、2段式の場合で地球低軌道に45トン、静止トランスファー軌道に13トンだという。3段式の場合の打ち上げ能力はまだ不明だが、静止トランスファー軌道への打ち上げ能力はより増えることになろう。ただ、ブルー・オリジンは3段式のニュー・グレンを「月・惑星探査機打ち上げ用」としているため、実際の運用の中で静止衛星の打ち上げに使われるかはわからない。

ニュー・グレンの最新の想像図 (C) Blue Origin

衛星を分離するニュー・グレン (C) Blue Origin

この打ち上げ能力は、現在運用中のどのロケットよりも強力なものの、大きさの近いサターンVと比べると半分ほどしかない。

その最も大きな理由は、機体を再使用するためである。逆に言えば、使い捨てで打ち上げれば、打ち上げ能力はより増える。

ニュー・グレンの再使用方法は、基本的にはスペースXの「ファルコン9」ロケットと同じで、第1段に少し推進剤を残した状態で第2段と分離し、第1段は大気圏に再突入して、エンジンを逆噴射して海上に待つ船に着地させて回収。一方の第2段はそのまま衛星を軌道まで送り、使い捨てる、という形をとっている。

ただ、細かく見ていくと、ファルコン9と異なる部分もある。たとえばファルコン9は格子状のグリッド・フィンを使って機体の姿勢を制御するが、ニュー・グレンのそれは、いかにも翼という形をしている。また、機体の下部にはやや大きめの固定式の翼も装着されており、おそらくこの翼で、船が待つ場所へ目掛けて機体を滑空飛行させる狙いがあるものとみられる。

また、着陸脚はファルコン9の4本に対して6本もあり、もし1本が展開できなかったり、着陸時に折れたりしても、残りの5本で機体を支え、倒れないように配慮されている。

さらにこの翼と着陸脚は、打ち上げ前に展開、収納できるようになっており、離陸前の飛行機の翼のように、機能するかどうか実際に確認することができる。一方のファルコン9のフィンと着陸脚は、実際に使う段になって初めて展開するようになっているため、打ち上げ前に実際に動かして確認することはできない。

翼を使って滑空飛行するニュー・グレンの第1段機体 (C) Blue Origin

着陸脚や安定翼は、打ち上げ前に実際に展開して機能の確認をする (C) Blue Origin

もうひとつの大きな違いは、回収用の船が移動しているところにある。スペースXの船は基本的に、あらかじめ指定した場所で待機するようになっており、エンジンや舵はついているものの、波や海流で流されるのを防いだり、あるいはズレを修正するためにある。

しかしブルー・オリジンは、船をロケットの飛んでくる方向に合わせて航行させ、その上にロケットを着地させるというやり方を採用している。おそらく移動させることで、水平方向の相対速度をできる限り合わせ、その分ロケット側の制御の負担を軽くする狙いがあると考えられる。

こうした違いは、どちらが優れているかということは難しい。たとえば着陸脚だけ見ても、安定性という点ではニュー・グレンのほうが優れているが、着陸脚や駆動機構が多い分、機体の質量が増え、打ち上げ能力が減る。どちらにもそれぞれ一長一短があり、一言でいえば設計思想の違い、あるいはどちらも正解、ということだろう。

ちなみに、スペースXとブルー・オリジンが同じ、「ロケットの第1段を船で回収し、再使用する」というアイディアにたどり着いたのは、もちろん偶然ではない。海岸沿いからロケットを打ち上げれば、海上を飛行することになるのは必然だし、そのロケットを回収しようとするなら、飛んできたコースをUターンして発射台まで戻るか、あるいは海上に船を用意して降ろすしかないというのも当然である。

実はブルー・オリジンは、2014年にこのアイデアを特許申請している。しかし、スペースXから「以前に学術論文で同様のアイディアが示されているため、特許申請は無効ではないか」との意見が出され、ブルー・オリジン側もそれを確認したため、2015年に申請を取り下げている。その後、スペースXがやや先行して実用化に成功し、現在に至っている。

船に舞い降りたニュー・グレンの第1段機体 (C) Blue Origin

同じ船で回収する手法をとっているスペースXの「ファルコン9」ロケット。着陸脚の本数や安定翼の形状などが異なる (C) SpaceX

次回は3月23日に掲載予定です。

参考

Blue Origin details new rocket’s capabilities, signs first orbital customer - Spaceflight Now
Eutelsat first customer for Blue Origin’s New Glenn - SpaceNews.com
Introducing New Glenn - YouTube

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インデックス

連載目次
第4回 2020年、月への「Amazon宇宙便」が実現?
第3回 ロケット・スタートを切ったニュー・グレン
第2回 ニュー・グレンの正体
第1回 イーロン・マスクを迎え撃つ「ニュー・グレン」
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