【コラム】

明らかになったジェフ・ベゾスの新型ロケット - Amazon宇宙便は実現するか

1 イーロン・マスクを迎え撃つ「ニュー・グレン」

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Amazon.com創業者のジェフ・ベゾス氏率いる宇宙企業ブルー・オリジンは3月7日、開発中の新型ロケット「ニュー・グレン」の詳細を発表。さらに、2社と衛星打ち上げの契約を結んだことも発表した。

民間発の宇宙企業というと、これまで多くの企業が話題になっては消え、その中でスペースXが、ロケットの再使用や火星移住計画などのさまざまな話題を振りまきつつ、実際に多くの成果をあげてきた。しかし自ら、あまり情報を出さない秘密主義の道を選び、虎視眈々と強力なロケットの開発を続けてきたのが、ブルー・オリジンである。

ニュー・グレンの初打ち上げは2020年に予定されており、2021年からは商業衛星の打ち上げも始まる。しかし、ベゾス氏とブルー・オリジンにとって、商業打ち上げは始まりに過ぎない。彼らの真の目的は、人類の宇宙進出にある。

「ニュー・グレン」ロケットの想像図 (C) Blue Origin

ブルー・オリジンが開発した「ニュー・シェパード」ロケット。これまでに4回の再使用による合計5回の飛行に成功している (C) Blue Origin

謎だらけのブルー・オリジン

ブルー・オリジンは、Amazon創業者であり、ワシントン・ポスト紙のオーナーとしても知られるジェフ・ベゾス氏によって、2000年に設立された企業である。ちなみにイーロン・マスク氏率いるスペースXの設立は2002年なので、ブルー・オリジンのほうが2年早い。

ベゾス氏はブルー・オリジンを立ち上げた目的を、「人類が宇宙に進出し、活動の場とするため」だと語る。そのためには、誰もが気軽に宇宙に行けるような、安価で安全なロケットが必要になる。そこで同社は、飛行機のように同じ機体を何度も使い回せる、ロケットと宇宙船の開発に挑んできた。

ただ、何かと話題を提供する他の宇宙企業と違い、ブルー・オリジンは長らく秘密主義を貫き、たとえば新しいロケットを開発したり、打ち上げたりしても、その詳細はすぐには明かさず、打ち上げのインターネット配信が行われるようになったのもここ最近からで、その実態は長らく不明だった。

しかし実際には、同社のモットーである「Gradatim Ferociter」(ラテン語で「一歩一歩、獰猛に」)の言葉どおり、陰ながら着実に開発を進めていたのである。

ブルー・オリジンはまず、ワシントン州に設計開発の拠点を、またテキサス州にあるベゾス氏所有の広大な牧場に、エンジンやロケットの試験場を構え、ロケットの開発や飛行試験を繰り返した。開発資金も、最近でこそNASAや他の企業から提供を受けているが、設立当初から現在まで、大部分はベゾス氏が出資しているという。ちなみにフォーブスなどによると、ベゾス氏の資産は733億ドル(約8兆円)にもなる。

現在までに同社は、「ニュー・シェパード」と名付けられた小型のロケットを開発し、同じ機体を4回再使用し、合計5回飛行させることに成功している。ニュー・シェパードは人工衛星を打ち上げるだけの能力はもっていないが、人や実験機器を乗せたカプセルを、高度100kmの宇宙空間まで持ち上げる能力はある。これまでの飛行はすべて無人で行われたが、早ければ今年中にも有人での飛行試験を始め、数年以内に人を乗せての宇宙観光や、微小重力状態を利用した実験を、ビジネスとして展開したいとしている。

ブルー・オリジンを率いるジェフ・ベゾス氏 (C) Blue Origin

ニュー・シェパードは垂直離着陸式の、再使用可能な小型ロケットである (C) Blue Origin

また並行して、より大型で、そして人工衛星や宇宙船を打ち上げられる新型ロケット「ニュー・グレン」と、それを打ち上げるための強力なロケット・エンジン「BE-4」の開発も行っている。

ブルー・オリジンが「ニュー・グレン」と名付けられたロケットの開発を行っていることを明らかにしたのは、2016年9月のことだった。グレンというのは、米国人として初めて地球のまわりを回る宇宙飛行に成功した、宇宙飛行士のジョン・グレン氏にちなんでいる。

ニュー・グレンの開発は2012年から始まっており、また現在の機体とは形などが異なるものの、衛星打ち上げロケットを開発しているということはたびたび語られていたが、その具体的な情報が公にされたのはこのときが初めてだった。

しかし、秘密主義な同社らしく、このときニュー・グレンの詳細がすべて明らかにされたわけではなかった。

たとえばロケットには2段式と3段式があり、目的によって使い分けること、第1段機体は再使用ができること、そして直径は7m、全長は最大95mと、大きさだけ見ると、かつてアポロ計画で使われた史上最大のロケットのひとつ「サターンV」(直径10m、全長110m)にも匹敵するサイズであること(丁寧に比較図まで用意された)、などは明かされたものの、打ち上げ能力や打ち上げコスト、価格など、肝心なことは明らかにされなかった。

ブルー・オリジンが2015年に発表した大型ロケットの想像図。現在のニュー・グレンとは大きく異なり、またニュー・グレンという名前もなかった (C) Blue Origin

2016年に発表されたニュー・グレンの想像図。大きさだけ見ると、既存のどのロケットよりも大きく、史上最大のサターンVにも匹敵する。しかし…… (C) Blue Origin

次回は3月21日に掲載予定です。

参考

Blue Origin | BE-4
Blue Origin | Our Approach to Technology

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インデックス

連載目次
第4回 2020年、月への「Amazon宇宙便」が実現?
第3回 ロケット・スタートを切ったニュー・グレン
第2回 ニュー・グレンの正体
第1回 イーロン・マスクを迎え撃つ「ニュー・グレン」
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