【コラム】

違法にならないネットライフ

21 アフィリエイターとドロップシッパーの法的責任を考える

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前回では、アフィリエイトとドロップシッピングについて、その運営者の法的な地位の違いなどについて見ていきました。今回は、法的位置づけの異なるアフィリエイターやドロップシッパーが、それぞれどのような法的責任があるかについて説明します。

アフィリエイターの場合は、誇大広告による消費者被害が発生した場合の法的責任の問題などがあり、ドロップシッパーの場合は、売主としての法的責任の問題などがあります。(編集部)


【Q】アフィリエイターやドロップシッパーは何に気をつければいい?

前回の説明によれば、アフィリエイターは広告主の商品の紹介・推薦者であり、ドロップシッパーは原則として売主である、とのことですが、アフィリエイターやドロップシッパーにはどのような法的問題があるのでしょうか?


【A】広告に関する法的規制などに気をつける必要があるでしょう。

アフィリエイターには、広告するにあたり、広告に関する法的規制(薬事法、食品衛生法など)や、誇大広告による消費者被害が発生した場合の法的責任の問題があります。ドロップシッパーについては、誇大広告に関する法的規制(景表法も含まれます)のほか、売主としての法的責任の問題や、ドロップシッピング・サービス・プロバイダ(DSP)との契約でDSPが販売責任を負う場合に、ドロップシッパーは売主としての責任を負わないで済むのか、という問題があります。


アフィリエイターの法的問題

まずアフィリエイターの法的問題について考えてみます。

一般にアフィリエイターは、自分のサイトの閲覧者がアフィリエイト広告をクリックし、商品を購入する件数が増えるほど、自分の報酬につながるわけですから、クリック数を増やすために、商品について誇大広告がされてしまう恐れがあります。このような誇大広告を規制する法律としては、主に、「景表法」「薬事法」「食品衛生法」などがあげられます。

(1)景表法について

景表法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」で、同法では不当表示が禁止されています。例えば、食品の産地偽装(優良誤認表示)や、割引で販売しているといいながら当該割引後の価格が実は定価であるというような場合(有利誤認表示)などが不当表示に該当します。

それでは、同法の規制は、アフィリエイターに及ぶのでしょうか?

同法では、「自己の供給する商品又は役務の取引」(同法第4条第1項柱書)についての表示を規制対象としているので、自ら商品を供給せず、広告主の商品等を紹介・宣伝しているにすぎないアフィリエイターはこれに当たらないため、同法の規制対象となりません。

なお、広告主とアフィリエイト・サービス・プロバイダ(ASP)の責任について、詳細は割愛しますが、広告主は自己の商品を販売している以上、景表法の規制対象となるとされています(厳しい結論ではありますが、広告主はアフィリエイターの広告内容について責任を負うことになります)。また、ASPについては、広告代理店のような地位であり、原則として規制対象とはなりませんが、ある特定の広告主のアフィリエイトのみを仲介してるような場合には、例外的に規制対象となる可能性があります。

(2)薬事法について

薬事法でも、誇大広告は禁止されています。同法第66条第1項では、「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」と規定されています(※1)。

※1 違反した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金。懲役と罰金双方が科せられることもあります(同法第85条第4号)

景表法の場合と異なるのは、「何人も」と規定されているように、この規制は、規制対象となる主体が限定されていない点です。したがって、アフィリエイターも薬事法の規制対象となるので、注意が必要です。

また、薬事法でさらに注意が必要な点は、健康食品に関する広告内容についても規制されていることです。同法第68条では、「何人も」医薬品として承認を受けていない食品などについて、「その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない」と規定されています(※2)。

※2 違反した場合の罰則は、上記誇大広告の場合と同様(同法第85条第5号)

したがって、例えば、医薬品として承認を受けていない健康食品をアフィリエイターが紹介する際に、「体内の脂肪燃焼作用あり」「血中コレステロール低下」といった広告や、「昨日までの疲れが取れる」「医者要らず」といった広告をすることも、薬事法違反となります。

(3)損害賠償責任のリスク

行政規制としては、代表的なものを紹介しましたが、この他にも販売する商品の種類によっては、食品衛生法や、健康増進法などの法律により、虚偽・誇大な広告などが禁止されています。では、上記のような法規制の対象となっていなければ、誇大広告をしても問題ないのでしょうか。例えば、アフィリエイターは景表法の規制対象とはなりませんが、それは景表法上の不当表示にあたる行為をしても何の責任も負わなくて済むということなのでしょうか。

結論からいえば、閲覧者から、アフィリエイターの不当表示を信じて商品を購入してしまったことを理由に、不法行為による損害賠償を請求されるリスクがあることは否定できません。

この点については、まだ解釈や裁判例が固まっていない状況ではありますが、現時点でいえることは、上記で規制されるものはもちろん、景表法などの規制が及ばないものについても、誇大広告や閲覧者に誤解を招くような行き過ぎた広告は避けるべきということです。特に、効能や性能に関する情報はおおげさになりやすいので、より注意して広告すべきでしょう。

ドロップシッパーの法的問題

次に、ドロップシッパーにはどのような法的問題があるのでしょうか?

まず、ドロップシッパーも、商品を販売する上で宣伝・広告をするわけですから、前述した景表法、薬事法などの各種行政規制の対象となります。

また、アフィリエイターが自分のサイトで商品を広告・推薦するにとどまるのに対し、ドロップシッパーは、自分のサイトで自ら設定した価格で商品を販売することから、売主となるのが原則なので、アフィリエイターに比べて、より重い責任が発生します。

(1)売主としての法的責任

ドロップシッパーは、自分のサイトで商品を販売するため、売買契約の売主としての責任を負います。具体的には、商品給付義務(販売責任)が発生しますし、商品が不良品だった場合には、瑕疵担保責任も問題となります。また、ベンダーから商品が届かず、消費者が債務不履行を理由とする解除をした場合には、原状回復義務として既に支払われた代金の返金義務なども発生します。

ドロップシッパーとドロップシッピング・サービス・プロバイダ(DSP)との契約により、DSPが売主としての責任を負うことになっている場合には、第一義的には上記責任をDSPが負うことになります。

しかし、売買契約に基づく責任については、DSPが破産したり、連絡がとれなくなったような場合に、ドロップシッパーが売主としての責任を一切負わないで済むかという問題があります。この点については、まだ十分に法解釈などが整理されていない部分ですが、消費者保護という観点や、DSPが破産・行方不明となった場合の不利益をドロップシッパーと消費者のどちらが負うべきかという観点からすれば、ドロップシッパーに何らかの責任が発生するリスクがないとは言い切れません。

(2)特定商取引法の表示義務

売主は、特定商取引法第11条により、氏名・住所などの表示義務が課せられます。同条の表示義務に関して、DSPが売主としての責任を負担するのであれば、DSPが同条に基づく表示をすれば足り、ドロップシッパーの情報を表示する必要はないかどうかという点が問題となります。この点については、平成18年に経済産業省が調査に動いたとの報道もありますが、その後の動きについては特に報道されていないようです。現時点では、この問題に関して行政処分がされた事例はないようですが、今後の法解釈やそれに基づく運用の動向について、十分注視しておく必要があります。

(3)個人情報保護法に基づく義務

個人情報保護法に基づく義務については、ドロップシッピングを行うにあたり、顧客情報の管理を通じて個人情報を保有し同法第2条第3項の「個人情報取扱事業者」に該当すれば、DSPとの契約内容いかんにかかわらず、ドロップシッパーも個人情報取扱事業者としての責任を負うことになります。

最後に

以上、もっぱら、アフィリエイターやドロップシッパーの法的責任を検討してきましたが、この他に、アフィリエイターやドロップシッパーとなった人と広告主、ASP、ベンダー、DSPといった業者との間の法的紛争の問題があります。

具体的には、卸価格などが当初の説明と違うとか、なかなか事業が開始されないといった問題です。これらについては、問題となる業者の債務不履行を理由として、契約を解除して初期費用の返還を請求したり、損害が発生していれば損害賠償を請求したりすることが考えられます。しかし、仮に裁判でこのような請求が認められたとしても、問題となる業者と連絡がとれなくなったり、業者に資力がなくなっていたりすると、一度払った金銭の回収は非常に困難となります。

そこで、アフィリエイトやドロップシッピングを開始するにあたっては、どのようなリスクがあるのか、また、関係する各業者がどのような業者なのか、といった点について、十分に注意して検討する必要があるでしょう。

実際、アフィリエイトやドロップシッピングで高額な利益を得ている方がいるというのも事実ですが、誰もが簡単に高額な利益を得ることができるわけではありません。これらはあくまでもビジネスであって、リターンのみならずリスクも十分に検討した上で判断すべきですし、初期費用が高額な場合は、より慎重に判断すべきといえます。

また、今回ご紹介したように、アフィリエイトやドロップシッピングは新しいビジネスの形態ということもあり、法解釈や法整備がまだまだ十分に成熟していません。その中で消費者被害のような問題が多数発生すれば、厳しい法規制をしなければならないのではないか、といった動きにもなってくると思われます。したがって、業界団体としても、悪質な業者による消費者被害を防ぐべく、業界団体レベルでの自主的かつ実効的な対応や取組みが望まれるところです。

(北澤一樹/英知法律事務所)

弁護士法人 英知法律事務所

情報ネットワーク、情報セキュリティ、内部統制など新しい分野の法律問題に関するエキスパートとして、会社法、損害賠償法など伝統的な法律分野との融合を目指し、企業法務に特化した業務を展開している弁護士法人。大阪の西天満と東京の神谷町に事務所を開設している。 同事務所のURLはこちら→ http://www.law.co.jp/

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