【コラム】
前回は、自分が開設したブログに、他の人の誹謗中傷が書き込まれた際の対応方法について検討しました。
今回は、同じコメント欄への書き込みでも、自分自身への誹謗中傷が書き込まれた場合、いわゆる「炎上」してしまったケースです。できれば訴訟などはしたくないところですが、どうしても中傷がやまない場合や「犯行予告」をされた場合などは、法的手続きに踏み込まざるを得ない場合もあります。今回は、こうした場合にとりうる対応策について、詳細に検討していきます。(編集部)
インターネット上でブログを公開していますが、このブログのコメント欄に、ブログ開設者である私自身を誹謗中傷する書き込みが大量になされたり、私に対し犯罪を予告する書き込みや私の個人情報の書き込みがなされたりしました。どのような対応を行えばよいでしょうか。
ブログ開設者であるあなた自身を誹謗中傷する書き込みがなされたような場合、まず原因の把握が重要です。その上で、現実的な対応策としては、(1)エントリーの内容に非がある場合は、それについて謝罪などを行う、(2)コメント欄を閉鎖する、(3)様子を見る、などの対応が考えられます。それでも書き込みが続く場合、法的手続きとしては、発信者情報を取得し、書き込み者に対して損害賠償を請求することが考えられます。また、犯罪を予告する書き込みがあったような場合には、刑事告訴なども検討することができるでしょう。
2009年2月初め、お笑いタレントのブログに誹謗中傷のコメントを書いていた男女が警視庁により書類送検される方針が固まったという報道がありました。前回のコラムでは、もっぱらブログ開設者以外の第三者に対する誹謗中傷、プライバシーの侵害があった場合のブログ開設者の対応方法について検討しました。
今回のコラムでは、ブログ開設者自身に対して誹謗中傷やプライバシーの侵害がなされた場合の対応について検討します。
さまざまな理由により、ブログのコメント欄に、開設者に対する大量の誹謗中傷コメントが書き込みをされることがあります。コメントの内容も単純な誹謗中傷にとどまらず、住所などのプライバシー情報や、ひどいものでは犯罪を予告するようなものまであります。このような事態になった場合、ブログ開設者はどのように対応すべきでしょうか。
まず、書き込みがなされることになった原因を把握することが大切です。第三者からの誹謗中傷は、全く理由のないものもありますが、何らかの理由があることが普通です。ブログのエントリーの内容が原因か、ブログ外の事情(いさかい・怨恨)が原因かなどによって、とるべき対応は変わってきます。原因を無視した対応を行うと、さらに状況が悪化することがあります。
また、書き込みを行っている者(以下、発信者)がどのような者なのかも把握しておくべきでしょう。不特定多数の第三者なのか、特定の個人・グループなのか、ブログ開設者との関係はどのようなものかなどによってその後の対応は異なります。
さらに、書き込み自体の内容も問題です。単なる嫌がらせなのか、ブログのエントリーやブログ開設者の行為に対する批判なのか、といったことも対応に影響します。また、書き込みが名誉棄損などに該当する違法なものであるのか、それとも適法な批判にとどまるのか、といった点も取りうる手段が異なってくるため重要です。
書き込みがなされた原因や発信者、書き込みの内容が把握できれば、次に具体的な対応策を検討します。
対応方法にはいろいろと考えられますが、現実的な対応策としては、(1)エントリーの内容について非がある場合は謝罪などを行う、(2)コメント欄を閉鎖する、(3)様子を見る、などがあげられます。どの方法が適切かは、上記の書き込みがなされた原因、発信者の特性、書き込みの内容などによって異なってくるものと考えられます。
例えば、ブログのエントリーの内容に反応して不特定多数の第三者による書き込みがなされたような場合には、原因が解消され、適切に対応がなされれば、長期にわたって誹謗中傷が繰り返されることは少ないものと思われます。
一方、怨恨など、ブログ外の理由が原因で特定の個人から誹謗中傷の書き込みが継続する場合には、上記のような対応では問題が解決されず、後で述べる法的手続きまで検討すべき場合もあるでしょう。思い当たる原因がない場合も同様です。
なお、前回コラムでも言及したとおり、書き込みの削除やコメント欄の閉鎖などについては、ブログ開設者がこれらを行ったとしても、特に発信者が損害を受けるわけではなく、問題はないと考えられます。
上記の対応を行っても、誹謗中傷が継続する場合、または、犯罪を示唆するような書き込みがなされるような場合には、発信者を特定し、さらなる法的手続きをとることを検討してもよいといえます。
発信者を特定するための情報(以下、発信者情報)を入手するためには、通常以下の2段階のステップが必要となります。
権利侵害情報を特定し、発信者のIPアドレス、書き込み時刻の情報を入手する(第1段階)
入手したIPアドレスからISP(インターネット・サービス・プロバイダ)を特定し、ISPに対して、発信者の氏名、住所、メールアドレス等の開示を要求する(第2段階)
このうち、第1段階については、ブログのサービスとしてアクセスログが取れるようになっている場合があり、ログから発信者のIPアドレスなどが入手できる場合があります。
もしそのような設定になっていなければ、ブログサービスを行っている会社に対して発信者情報(通常はIPアドレスおよび書き込み時刻の情報しか保持していません)の開示を求めることになります。
前回でも取り上げたとおり、発信者情報の開示を求めるためには、権利侵害の明白性、開示を求める正当な理由の二つの要件が必要です(プロバイダ責任制限法第4条第1項)。したがって、まず対象となる書き込みを特定し、その書き込みがブログ開設者である自分自身のどのような権利を侵害するのか明らかにしておかなければなりません。
第1段階においてIPアドレスなどの開示が行われれば、開示された情報をもとにさらにISPに対して発信者情報の開示を求めることになります。ISPは通常は接続料金を徴収するために接続者の氏名や住所などを保持していますので、発信者情報としてこれらの情報を開示してもらえれば、発信者のところまで行きつくことができることになります。
以上の手続きについては、訴訟外で行うことも可能ですが、ブログサービスの提供業者やISPが開示を拒否した場合には、発信者情報の開示を求めて訴訟を提起することが必要となります。
もっとも、発信者情報の開示要求がなされた場合には、発信者に対して発信者情報を開示していいかどうか意見を求めることとなっており(プロバイダ責任制限法第4条第2項)、ISPがこの法律を知っていれば、発信者情報の開示がなくとも少なくとも発信者に対して意見照会がなされることになります。
そのため、第2段階の手続きにおいては仮に発信者情報が開示されなくとも、開示請求を行うだけで発信者に対して一定の警告を与えることができることになります。
以上のとおり、発信者情報の開示を求め、発信者を特定することができれば、発信者に対して損害賠償請求などを求めることが可能になります。
もっとも、危害を加えることを示唆するような書き込みがなされたような場合には、脅迫罪(刑法第222条)などを構成することがありますし、名誉棄損罪(刑法第230条)についても冒頭の事件のように最近は積極的な運用もなされているようです。したがって、状況によっては警察に相談あるいは告訴をするなどの方法も検討することになります。
いずれにせよ、コメントを書き込む側は常に匿名が守られるという意識で書き込みを行っていると、突然責任を追及されることもあり得るので、十分に配慮した上で書き込みを行うべきであると言えます。
なお、今回取り上げた発信者情報開示請求について、詳しくは、下記ウェブサイトに記載されているガイドラインを参考にしてください。
プロバイダ責任制限法関連サイト http://www.isplaw.jp/
(安藤広人/英知法律事務所)
弁護士法人 英知法律事務所
情報ネットワーク、情報セキュリティ、内部統制など新しい分野の法律問題に関するエキスパートとして、会社法、損害賠償法など伝統的な法律分野との融合を目指し、企業法務に特化した業務を展開している弁護士法人。大阪の西天満と東京の神谷町に事務所を開設している。 同事務所のURLはこちら→ http://www.law.co.jp/
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