【コラム】

違法にならないネットライフ

8 メルマガ送信に注意! 法改正で"事前承諾のない広告宣伝メール"は違法(後編)

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前回は、2008年の特定電子メール送信適正化法(特電法)と特定商取引法(特商法)の改正により、広告宣伝メールの規制が強化されたことについて説明しました。どちらの改正においても、送信先の事前の承諾を得ていなければ送信できないとする「オプトイン規制」が導入され、広告宣伝メールの送信に関するハードルは相当高くなりました。

ですが、規制を強化するばかりでは、健全な経済活動を行っている広告主や送信事業者に対して、その活動の範囲を狭めることになりかねません。こうしたことを考慮し、改正法では、オプトイン規制の例外や、事前承諾の保存義務が負担になりすぎないようにするための規定を定めています。

今回は、「メルマガ送信に注意! 法改正で"事前承諾のない広告宣伝メール"は違法」の後編として、オプトイン規制の例外などについて説明します。

また、メールの送信に関しては個人情報を扱うため、個人情報保護法との関係や、特電法と特商法の関係についても述べていきます。(編集部)


【Q】広告宣伝メールの事前承諾義務に例外はある?

インターネットを利用して腕時計の通信販売事業を行っています。新商品を発売するに際し、顧客に電子メールにてダイレクトメールを送信するためには、事前の承諾が必要になったと聞きましたが、例外はあるのでしょうか。また、その他に、どのようなことに気を付ければ良いでしょうか。


【A】契約内容の通知やフリーメールに付随する広告は例外です。

「オプトイン規制」が導入されたことにより、広告宣伝メールを送るためには、原則として受信者の事前承諾が必要となったことは前回説明しました。しかし、契約内容の通知やフリーメールなどにおける付随的な広告宣伝などの一定のメールについては、オプトイン規制の例外とされています。ただ、事前の承諾を得た場合でも、承諾について記録の保存義務が定められています。また、受信者から今後は広告宣伝メールを送信しないように求められた場合には、原則として送信を止めなければなりません(オプトアウト規制)。


前回は、広告宣伝メールについて、特電法及び特商法によって、オプトイン規制が導入されたことについて説明しました。今回は、オプトイン規制に対する例外と、オプトアウトなどについて説明します。

特電法におけるオプトイン規制の「例外」

特電法は、オプトイン規制の例外として、次の場合には事前承諾がなくても広告宣伝メールを送信することを認めています。

1. 電子メールアドレスの通知をした者(同法第3条1項2号)

自分の電子メールアドレスを通知した場合には、通知した側にも、通知を受けた者から電子メールの送信が行われると予測できる場合があると考えられるため、設けられた例外規定です。

「通知した」と認められる具体的な範囲は施行規則で定めることになっています。そのため、施行規則第3条では「書面により通知する方法」の場合、この例外にあたるものと定めています。これは、名刺などの書面で電子メールアドレスを通知した場合には、書面を提供した側も、書面を受け取った者から電子メールが送られてくることの予測可能性があるものと考えられるからです。

また、書面によって電子メールアドレスが通知されていなくても、契約申込者に対して申込内容を通知するために送信するメールや、フリーメールなどで広告宣伝を「付随的」に行う場合には、支障が少ないと考えられるため、同条では、オプトイン規制の例外としています。

2. 取引関係にある者(同3号)

これは継続的な取引関係があることを前提としています。そのため、例えば、過去に一度だけ商品の売買契約取引が存在するというだけでは、取引関係にあるとは言えません。これに対して、売買契約の前提として、例えば会員契約を締結しているような場合には、一度の取引であっても継続的な取引関係と言える場合があります。

3. 自己の電子メールアドレスを公表している団体・営業を営む個人(同4号)

この場合も、電子メールが送られてくることの予測可能性があるものと考えられるため、例外とされています。

「自己の電子メールアドレスを公表している団体・営業を営む個人」とは、ウェブサイトなどでメールアドレスを公開している場合のことです。ただし、電子メールアドレスの公表と併せて特定電子メールの送信をしないように求める旨の表示がなされている場合には、いわば送ってほしくないと宣言しているわけですので、送ることができません(施行規則第4条ただし書き)。

以上のような、オプトイン規制の例外に該当する場合には、特電法との関係では、受信者から事前承諾を得ることなく、広告宣伝メールを送信することができます。

特商法におけるオプトイン規制の「例外」

特商法は、オプトイン規制の例外として、次の電子メールに「付随的に」広告を行うことを認めています。あくまで「付随的に」行われる広告を例外として認めたものですので、広告を主とするようなメールは例外にはあたりません。

1. 契約内容又は契約の履行に関する重要な事項を通知するメール(法第12条の3第1項2号)

2. 相手方の請求又は承諾を得て送信される電子メール(法第12条3第1項3号・施行規則第11条の4第1号)

3. フリーメールなど広告が行われることを条件として提供される電子メール(法第12条3第1項3号・施行規則第11条の4第2号)

以上のオプトイン規制の例外に該当する場合には、特商法との関係では、受信者から事前承諾を得る必要はありません。

なお、本件のように特電法及び特商法の適用がある場合、両者の例外規定を満たさなければ、オプトイン規制により事前承諾が必要となります。

「事前承諾」の保存義務について

オプトイン規制においては、受信者から事前に請求や承諾を得ていることが、適法性の重要な判断基準となります。そこで、オプトイン規制を実効性のあるものにするために、請求や承諾を得ていることを証する記録として、以下のような保存義務が定められています。

まず、特電法においては、広告宣伝メールを送信することについて承諾などを取得している個別の電子メールアドレスに関して、承諾などを取得した際の時期、方法などの状況を示す記録を、原則として、当該電子メールアドレスに広告宣伝メールを送信しないこととなった日から1カ月間を経過する日まで保存することが義務づけられています。

ただし、定型的な様式で承諾などを取得している場合であって、広告宣伝メールを送信することができる電子メールアドレスと他の電子メールアドレスを区別している場合には、個別の電子メールアドレスごとの記録に代えて、電子メール当該区別を行っている記録と承諾などを取得した書面・電子メールなどに記載した定型的な様式を記録することで足ります。

また、特商法においても、個別の請求や承諾ごとに、請求や承諾があったことを示す記録を、最後に広告宣伝メールを送信した日から3年間保存することが義務づけられています。

ただし、定型的な様式によって、受信者にとって広告宣伝メールの請求や承諾に関するものであることが容易に認識できるように表示してあり、請求や承諾に関する情報を一覧性のある電磁的記録として自動的に編集する方法を用いている場合には、個別の請求や承諾ごとの記録に代えて、定型的な様式を記載した書面や電子メールなどの記録とその内容が表示された時期を示す記録を保存することで足ります。

事業を行うに際して、請求や承諾があったことを個別に記録して保存することは、大きな負担となると思われます。したがって、実際の運用においては、広告宣伝メールを送信することに関する承諾や請求を取得する際に、そのことを容易に認識できる定型的な様式を用いることがポイントとなります。

なお、どのような表示方法によれば「容易に認識できる」と言えるかについては、前回も紹介しました、経済産業省の『電子メール広告をすることの承諾・請求の取得等に係る「容易に認識できるよう表示していないこと」に係るガイドライン』が参考となります。

「オプトアウト」とは?

受信者から広告宣伝メールの送信を拒否された場合には、以後、原則として広告宣伝メールを送信することはできません。これを「オプトアウト」といいます。

オプトアウトを確実に行うことができるように、特電法や特商法においては、受信拒否の連絡先となる電子メールアドレスやホームページアドレス(URL)などを表示する義務が定められています。

表示方法については、容易に認識できるように表示する必要があり、先述の経済産業省のガイドラインが参考となります。

また、「原則として」というのは、特電法及び特商法において、それぞれオプトアウトにも例外が定められているからです。例えば、契約の申込者に対し申込内容に関する事項を通知するために送信される電子メールにおいて広告宣伝が付随的に行われる場合や、フリーメールなど広告又は宣伝が行われることを条件として提供される電子メール通信サービスにおいて広告宣伝が付随的に行われる場合などが、例外に該当します。例外に該当する場合には送信を拒否することはできません。

個人情報保護法との関係について

顧客の電子メールアドレスにダイレクトメールを送信する行為は、個人情報の利用に該当します。個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対して、予め本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことを禁止しています(法第16条1項)。

したがって、本件でも、個人情報取扱事業者に該当する場合には、ダイレクトメールを送信する行為が個人情報の利用目的として特定されている必要があります。もっとも、特定された利用目的の範囲での個人情報の利用には、本人の同意は必要とされていませんので、顧客に無断であることから直ちに違法となるわけではありません。

終わりに(特電法と特商法への対応のポイント)

広告宣伝メールには、特電法及び特商法が適用されることとなりました。オプトイン規制の例外規定や保存義務などについて、特電法と特商法とでは内容が異なりますが、対応としては、より厳しい内容を定めた特商法の規定を遵守することが望ましいと思われます。 対応のポイントとしては、「受信者の立場に立って考えること」「広告宣伝メールの送信に関する承諾であることが分かりやすい形で定型的な様式を用いて承諾を取得すること」「承諾の記録を3年間保存すること」「容易に送信拒否ができるようにしておくこと」が重要です。

(南石知哉/英知法律事務所)

弁護士法人 英知法律事務所

情報ネットワーク、情報セキュリティ、内部統制など新しい分野の法律問題に関するエキスパートとして、会社法、損害賠償法など伝統的な法律分野との融合を目指し、企業法務に特化した業務を展開している弁護士法人。大阪の西天満と東京の神谷町に事務所を開設している。 同事務所のURLはこちら→ http://www.law.co.jp/

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