【コラム】

違法にならないネットライフ

1 自宅の絵画を撮ってホームページに載せたら、作者から……

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ネットサービスを利用すれば、誰もが気軽に情報を発信し、大勢と共有できるご時世となりました。その一方、ブログやホームページに何かを掲載する場合、それが合法なのか違法なのかといった不安を感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、そうした法律上の疑問に明確に答えてくれる人は身近にはいないかもしれません。そこで本連載では、専門家の視点からネットトラブルのさまざまなケースを想定した法的アドバイスを行っていきます。アドバイスしてくれるのは、インターネット関連の法律に詳しい英知法律事務所の弁護士の方々です。安心してネットサービスを利用していくためにも、ぜひとも参考にしていただければと思います。

第1回は、デジカメで自宅の絵画を撮影、ホームページに掲載したところ、著作権者からクレームが来たというケースです。著作権法第30条の定める「私的使用のための複製」に該当しないかという点などが問題となります。(編集部)


【Q】絵画の写真をHPに載せるのは問題ないと思ったのですが……

自宅に所有して飾っている絵画(レプリカ)をデジタルカメラで撮影して、画像データをホームページに掲載したところ、絵画の著作権者から写真の掲載を中止してもらいたいとの申し入れがありました。このような場合、写真の掲載を中止しなければならないのでしょうか。


【A】著作権侵害に当たるので、掲載は控えましょう。

著作権者の許諾を得ていない場合は、絵画に関する著作権(複製権・公衆送信権)の侵害として、差止め、損害賠償請求を受ける恐れがありますので、写真の掲載を中止する必要があります。


著作物とは

著作権法は、著作物を、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(同法第2条1項1号)と定義しています(なお、以下、著作権法のことを「同法」と省略していいます)。

しかし、創作的であるといっても、高度の芸術性を備えている必要はなく、具体的な表現形式に著作者の個性が現れていれば足りると考えられており、例えば、小学生が描いた絵画であったとしても、著作物となり得ます。

本件のような絵画について、著作権法は著作物の一種として例示しており(同法第10条1項4号)、著作物にあたることについては問題のないものと思われます。このため、それを利用する際には著作権法を遵守する必要があります。

著作権について

著作物に関する著作者の権利は、著作権(著作財産権)と著作者人格権に大きく分けられ、さらに著作権は著作物の利用態様に応じて、複製権(同法第21条)、上演権及び演奏権(同法第22条)、上映権(同法第22条の2)、公衆送信権(同法第23条)などの権利に分かれています(参考:文化庁ホームページ)。

例えば、複製権であれば、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」(同法第21条)と定められています。「専有」とは、独占権という意味ですので、著作者の許諾を得ずに著作物を複製した場合には、原則として複製権の侵害となります。ここで「原則として」というのは、著作権法では例外的に著作者の許諾を得なくても利用できる場合が定められているからです。これを「著作権の制限」と呼んでいます。

そのため、本件での利用態様が著作権の侵害とならないかについて検討する必要があります。

なお、本件では、画家が生きていることから問題とはなりませんが、著作権には保護期間が定められており、原則として著作者の生存中と死後50年間とされています(同法第51条2項)。このため、著作者が既に亡くなっている絵画であっても、著作権による保護が及ぶ場合がありますので、注意が必要です。

複製権について

複製とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」をいいます(同法第2条1項15号)。

本件では、絵画をデジタルカメラで撮影することによって、デジタル画像データを作成していますので、かかる行為は複製に該当します。また、ホームページに掲載するためには、通常、Webサーバにデジタル画像データを「コピーして」置いておくこととなりますので、こうした行為も複製に該当します。

次に、著作権の制限規定の適用についてですが、個人が趣味で作成するホームページなどであれば、著作権法第30条の定める「私的使用のための複製」に該当しないかという点が問題となります。

この点、同条が定める私的使用とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするとき」(同法第30条1項本文)とされており、ホームページに掲載された場合には、インターネットに接続している全世界の人々によって閲覧が可能となりますので、仮にホームページが個人的な趣味として作成されたものであったとして、私的使用とは言えません。

したがって、著作権者の許諾を得ているか、他の制限規定に該当するなどの例外的な事情がない限り、複製権を侵害することとなります。

なお、著作権は、著作者人格権と異なり、他人に譲渡を行うことが可能です。著作権者の譲受人が存在する場合には、著作者ではなく、著作権者である譲受人の許諾を得ることが必要となります。

公衆送信権について

公衆送信については、同法第2条1項7号の2で定義されています。定義が複雑であることから、簡単に言えば、不特定の者又は特定多数の者に対して、直接に受信されることを目的として著作物を送信することをいいます。

不特定の者又は特定多数の者を対象としますので、メールで特定の少数人に対して著作物を送信した場合には、前述の複製権侵害の問題などを生じるとしても、公衆送信には該当しません。

また、インターネットのようなオンデマインド型の送信の場合には、求めに応じて送信することを可能な状態に置いた時点で公衆送信となります(同法第23条1項括弧内)。つまり、実際にホームページを閲覧した者が存在しなくとも、インターネット上で閲覧が可能なようにWebサーバにデータを格納した時点で公衆送信権に対する侵害が成立することとなります。

以上から、複製権に関する場合と同様に、著作権者の許諾、他の制限規定に該当するなどの例外的な事情がない限り、公衆送信権を侵害することとなります。

差止請求

著作権が侵害された場合には、著作権者は、侵害者に対して、侵害を停止するよう請求することができ(同法112条1項)、損害賠償を請求することもできますので(民法709条)、本件で著作権侵害に該当する場合には、写真の掲載を中止する必要があります。

(南石知哉/英知法律事務所)

弁護士法人 英知法律事務所

情報ネットワーク、情報セキュリティ、内部統制など新しい分野の法律問題に関するエキスパートとして、会社法、損害賠償法など伝統的な法律分野との融合を目指し、企業法務に特化した業務を展開している弁護士法人。大阪の西天満と東京の神谷町に事務所を開設している。 同事務所のURLはこちら→ http://www.law.co.jp/
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