こんにちは。ますます元気な私、上杉さくらである。坂東の人間にとって、西に向かうのは気持ちが向上している時。逆に、北に向かうときは、心が落ち込んでいることが多いそう。というわけで、気分がみなぎっている今日この頃、西日本は兵庫の余部鉄橋第2回目をお届けする。

今回の旅の行程。鳥取ってけっこう近かったのね

嗚呼、単線。架線もない。これが本線だと誰が思うだろうか

餘部駅に着いたら、写真を撮るためにまずはロケハン。余部鉄橋の第一の撮影ポイントは、駅のホーム上の小高くなっているところだ。階段があって、ちょっとした展望台になっている。こういう撮影ポイントを「お立ち台」と鉄ちゃんやメディアもいるが、「お立ち台」と聞いてジュリアナと扇子と荒木師匠が頭の中をよぎるのはきっと私だけではないはず……。

今回の旅ではネコ・パブリッシングの「お立ち台通信」を非常に参考にした。旅には持っていくのを忘れてしまったのだが、一応参考文献として。

お立ち台に立った私だが、まだ人がそんなに人はいない。さすがに、東京からここまでくる鉄ちゃんもそんなにはいないのだろう。次に列車が鉄橋を通るのは12時22分。しばらく、餘部駅周辺を散策をしてみよう。

集落の中の余部鉄橋

余部鉄橋は高さ41.45mで、下には集落がある。臨時の通り道を通って、約40m下の地上におりてみる。途中、橋を見上げるとトレッスル橋の二等辺三角形が美しい。建設当時の写真や絵葉書を見ると、最初に二等辺三角形の橋脚を組み立て、その後に線路を通していったようだとわかる。餘部駅自体は比較的新しい駅。橋は明治時代に完成しているが、駅ができたのは1959(昭和34)年。無人駅でホームは1つで、側線もない「棒式」ホームと呼ばれている。

三角形の橋脚が美しい。下から見上げると……かなり怖い

余部鉄橋の下は、鎧側には整地が進んでいるため民家がない。鳥取側にはまだ民家が残り、瓦が黒く光っている。今から22年前の1986(昭和61)年12月28日、強風で回送中の「みやび」7両が、強風にあおられ余部鉄橋から地上に転落。死者6名、重軽傷6名という痛ましい事故が起きた。うち、死者5名重軽傷5名が地上の水産加工工場で働いていた方々だったそう。天空から列車が降ってくる危険性……。橋は美しいのだが、この事故のことを考えると複雑な気持ちになる。ちなみに2010年には、列車遅れの解消のために現在の橋の南側にコンクリート橋ができる予定だそう。

再び40m道をのぼり、駅のホームに戻る。まずはホームすぐ隣の場所から余部鉄橋を撮影。「う~ん、イマイチ……」。橋りょうの迫力がないのだ。そこでお立ち台へ行くと、人が増えてきている。撮影をしてみると、さすがお立ち台だけあってきれいな写真が撮れた。前回動画を紹介したので、今回は特急「はまかぜ」の画像を。クリーム地にブルーの線がくっきりと目立つキハ181系気動車が使われている。通常、餘部駅は通過だが、この日は臨時停車していた。

余部鉄橋を特急「はまかぜ」が走る

お立ち台には鉄ちゃんたちが……。鉄子の姿も。「今日でこの鉄橋なくなっちゃうんだって! 」と女子が言う。いえいえ違います、なくなるのはお立ち台

KISS FM KOBEのベリカード。FM局はその土地でしか聴けないので、ベリカードはいい記念になる

急に思い立った今回の旅であるが、私の旅の楽しみの1つはその土地のローカルラジオ局の放送だ。なので、ラジオを持っていく。たまに、BCL少年だったことを思い出し、ラジオ局に受信報告書を送ったりもする。すると、ベリカード(QSLカード)がもらえたりするのだ。今回はKISS FM KOBE。餘部に来る前に途中下車した香住にも放送局があり、本局と周波数が異なる。月曜日に受信報告書を送ったら、なんと4日後の金曜日にベリカードが送られてきた。

話がそれてしまったが、無事に撮影も終わり、「さて帰りはどうしようか」。とりあえず鳥取にも行きたかったので、旅をそのまま続行。餘部から14時1分発の浜坂行きに乗る。次の次の駅が浜坂なので、あっという間に14時6分着。浜坂で15分待ち合わせし、鳥取行きの列車に乗った途端に爆睡してしまったので、全く周囲の景色を見ていない。鳥取には15時17分に着いた。

途中、浜坂駅で目撃したラッセル車。この他、香住や豊岡でも同じ型のラッセル車を目撃

ここで、昼過ぎだというのにまだお昼をとっていなかったことに気が付く。とりあえず、ホームの立ち食いそばを探してみる。鳥取駅のホームには、「砂丘そば」という立ち食いそばがあり、これがうまいんだ。いわゆるかけそばは「砂丘そば」という名のメニューで、たぶん……310円(記憶価格です、ごめんなさい)。

「かけそばください」と頼むと、お店のおばちゃんは怪訝な顔。「そうか、かけそばとは言わないんだ」と気が付いて、「砂丘そば」と頼む。かけそばと考えると値段は高いかもしれないが、とびうお(あご)のちくわとだし汁がおいしいだなぁ~。

砂丘を見て、姫路へと抜ける

鳥取といえば砂丘。鳥取に来て、砂丘を見ずに帰れるものか。タクシーに乗って2,000円ちょっとで砂丘入口に到着。入口の丘を上ると、「いやぁあ、来てよかった! 」と心の底から思った。この日はちょっと暑かったので、バニラ味のソフトクリームを食べながら、靴と靴下を脱ぎ捨てる。砂丘を日本海に向かって歩いていき、「お~い! 」と叫んでみる。砂丘にはラクダがいて、ロバもいる。

鳥取砂丘。靴下を脱ぎたくなる気持ちがわかる?

砂丘を歩くと、砂がどんどん崩れ落ちていく。砂男。砂女。「ひとえに風の前の塵に同じ」と平家物語のごとしだ(なんのこっちゃ)。この時、帰り道のことを全く考えていなかったことに気付き、いそいそとタクシーで鳥取駅にリターン。駅弁を買い、再び同じホームで「砂丘そば」を食べ、姫路行きの特急「スーパーはくと12号」に乗車した。

奮発して鳥取駅で買った駅弁「お好みかに寿司」(1,250円)。最後の1個だったので、隣の子どもが「なくなっちゃった! 」と悲しそうだった。ゴメン。普通の「かに寿司」と違うのは、ちらしの他にかにの巻きものとにぎりが入っているところ

姫路行きに乗ったのは、山陰本線をたどっていくより、いったん瀬戸内海側の山陽本線に出たほうがスムーズに大阪・東京方面に行くことができるからだ。特に、1994年に智頭急行智頭線が開通してからは、鳥取 - 姫路間がとても便利になった(伯備線・智頭急行智頭線・姫新線・山陽本線経由)。この日乗った「スーパーはくと」号は青とシルバーを基調としたおしゃれなデザインの特急。席もゆったりとして、ゴージャス。ただし、残念なことに、伯備線、智頭急行智頭線、姫新線は単線なのだ。この日も下りの電車が遅れたため、「スーパーはくと」号は18分遅れ。ここが悩ましいところである。

「スーパーはくと」号。しゃれています(郡家駅にて)

郡家駅で「スーパーはくと」号は対向列車を待ち合わせ。単線ならでの光景で、駅舎ものんびりした感じ

スピードアップして、「スーパーはくと」号は走っていく

姫路に着いたのは午後7時頃だった。