歳をとるにつれて、自分より若い仲間の割合が増える。私にとっては当たり前なのだが(自分が歳をとるわけだから……)世の中的にはそうでもないらしい。確かに、同じ世代の仲間といつもつるんでいると、仲良くみんなで歳をとっていくのだろう。私はたまたまそういうグループにはあまり属していないが、そういう仲良しグループがあるのは良いことだと思う。

たとえ後押しを望まれていても

自分よりも少しお若い方だろうなと油断していると、実は20歳年下とか、24歳(ふた周り)年下とか、普通に私の身の回りにいらっしゃる。この傾向はますます強くなる。もうじき30歳近く年下の方とかが普通に私の生活動線に現れてくるのだろう。

そういう歳の離れた方たちの中でも、わざわざ私にカラんでくる人というのは、相当の"物好き"か、"遊び人"か、"怖いもの知らず"か……とにかく、普通におもしろい人が多い。あるいは、本人はそれほどおもしろい人ではなくても、何かおもしろいことをやろうとしている人が多い。

現状に不満で悶々としているだけの人というのは、あまり寄ってこない。すでに"うっかり"何か大それたことを始めかけた人とかが、「本当にこれでいいんですかね?」と、途中からいろいろと話を持ち込まれる。

個人的に"生き方"的な相談をされる場合、相談の前に答えはすでに脳内で決まっていることが多い。私の役割は"後押し"をすることしかない。こうした場合、私はかなりネガティブなことも言う。すると、普通、20代や30代の方を相手にネガティブなことを言う大人気ない大人は少ないらしく、相当本人は驚くようだ。そもそもが、背中を押して欲しいわけなので……。

口からつばを飛ばしながら、そんなことはないです。大丈夫ですと、怖い顔をして反論することもある。啓蒙書やビジネス入門書に書いてあったような用語を用いて、もう一度最初からビジネスモデルを説明してくれることもある。

でも、別に私は言っていることがわからないからネガティブなことを言うわけではない。他に誰もネガティブなことを言う人がいないだろうからネガティブなことを言っているのだ。「もっとポジティブなこと言ってくれると思っていました」と目をウルウルしながら言われることもまれにある。口では言わなくてもそう思われている可能性は高い。それ以来、あまり連絡をとってこなくなる方もいる。

最初に理路整然と、いろいろと話してくれた時よりも、2度目に口から泡をとばしながら早口で説明してくれた時の勢いある説明の方が、内容は同じかもしれないけれど、振りきれていてよいことが多い。「勢い」というのは大切だ。もっともっと強く振り切った方がいい。スピードも上げた方がいい。これ以上、ボコボコに言われたことがないというくらい、叩かれた企画やアイデアの方が、誰からも一同も叩かれないものよりは強く育つと思う。

私のプロフィールの経歴や、公開しているコラムの内容や、顔写真の見た目からは、怖いもの知らずで、勢い良く、大胆に、尖って、いろいろなことやっているようによく思われるが、実際は全くその逆だ。最悪の場合にどうするかとか、守るべきものは何かとか、逃げるときの最短コース(撤退障壁)など、どちらかというと安全策から考える。思い切って何かをやってみて成功したことの何倍も、思いきれなくて損をしたことが実際には多い。 思い切って振り切ってみて成功したケースは、むしろごく稀だ。「勇み足」というか「向こう傷」というか、最後になって"奇跡的"にうまくいった出来事などが積み重なって、後から考えると笑い話の一つになる。あたかも計画的・戦略的に振る舞った結果であるかのように、自身のキャリアの素材として誰かが美味しく調理してくれる。その時一緒だった仲間たちが徐々に増え、財産になる。できた料理を一緒に食べる。

「キャリア」というのはそういうものだと思う。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。(現 株式会社東京片岡英彦事務所 代表取締役)主に企業の戦略PR、マーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2011年から国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。2013年、一般社団法人日本アドボカシー協会を設立代表理事就任。