iPodとiPod nanoに対応、固定方法は少し不安

本格的なX-Y型ステレオマイクを搭載し、iPodでリニアPCM録音を可能とするAlesisのiPod専用レコーダ「ProTrack」。まずは対応するiPodだが、これはiPod classicおよび第5世代のiPod(HDDタイプ)、そして現行製品を含むiPod nano第2~第4世代となっている。iPodをセットするdockポート部分には特に調整機構などはないが、厚みの異なるiPod各製品をフィットさせるため、2種類のパッドも付属している(図1~2参照)。

図1 図2

ProTrackのdockポート部分はちょうどiPod classicが収まるサイズ

薄いiPod nanoなどをフィットさせるために、厚みの異なる2種類の両面テープ付きパッドが付属している

iPodの装着方法はとても簡単で、このdockポートに差し込むだけ。ただし、この状態でも問題なく録音は行えるものの、dockポートにはロック機構などはない。そこで落下を防ぎ、またiPodを傷つけないように「スレッド」と呼ばれるプラスチックカバーが付属している。説明書によると円形の穴が開いているものはipod classic/第5世代ipod/第2および第4世代ipod nano用となっており、半円形の穴が開いているものは第3世代iPod nano用だ(図3参照)。実際に手元にあった旧iPod classic 160GBをセットしてみたところ、パッドを使用しなくてもぴったり収まった(図4~5参照)。ただしスレッドを装着してもiPodをがっちりと押さえ込むようなデザインではなく、Pro Trackを手前に傾けるとiPod classicもすこし動いてしまう。第3世代iPod nano用スレッドはiPod本体を押さえられそうなデザインになっているのだが、重いHDDタイプではdockコネクタに負担がかからないかちょっと心配だ。

図3 図4

iPodの上に被せるように装着するスレッド。左がiPod classic/第5世代iPod/第2および第4世代iPod nano用、右が第3世代iPod nano用。ただしProTrackのチラシには「2009年1月現在、第4世代iPod nanoにはスレッドが非対応」という記述もあるが、現物が手元になかったため詳細な対応状況は不明(左)。旧iPod classic160GBをセットし、スレッドを被せた状態(右)

図5

比較的厚めの旧iPod classic160GBはパッドを使用しなくてもぴったり。なおこの状態ではスレッドが固定されており、OPENスイッチをスライドしながら外す

iPod nanoでは高音質だが、HDDタイプでは回転音がノイズになってしまう

iPodを装着した状態でProTrackの電源スイッチを入れると、iPodのメニューに「ボイスメモ」と表示される(図6参照)。操作そのものはiPod本体のクリックホイールで行うが、MENUとENTER(iPod本体のセンターボタン)はProTrack側にも装備される。

ボイスメモメニューを開くと「録音を開始」のほか、音質設定を行う「品質」も用意されている(図7参照)。選択肢は「高」(16bit/44.1kHzステレオ)と「低」(16bit/22.05Hzモノラル)のみ、どちらも記録フォーマットはWAVだ。これは前回触れたiPodが標準で備えるボイスメモ機能の仕様そのもので、24bitWAV録音などには非対応。またMP3やAACといった圧縮フォーマットでの録音にも対応していない。

録音を行うにはボイスメモメニューを開いた状態で入力レベルを調整し「録音を開始」を選択すればよい(図8参照)。他社のリニアPCMレコーダのようにいわゆる録音待機の状態というものはなく「録音を開始」を選択するとすぐに録音がスタートする。いわばこのボイスメモメニューを開くことが録音待機状態だ。入力レベル調整時にヘッドホンを繋げばすぐにモニタも可能。ヘッドホンモニタの段階ではかなり細かい音まで拾っており、見た目の印象通りにマイク性能はなかなかよさそうだ。

図6 図7 図8

iPodを装着してProTrackの電源を入れると「ボイスメモ」メニューが現れる。これは他社のiPod用外付けマイクと同じ

録音音質の設定は「品質」で2段階から選択し、フォーマットはWAV固定

ボイスメモメニューを開いた状態で録音レベルを調整し「録音を開始」を選択すれば録音スタート。ヘッドホンモニタも可能

実際に旧iPod classic160GBを使い録音・再生してみたところ、確かに細かい音まで拾っているのだが、テープの走行音のようなノイズが入っていることに気が付いた。どうやら内蔵HDDの稼動音を拾っているようだ。説明書にも「HDDタイプで内蔵マイクを使った録音を行うとHDDの稼動音を拾うことがある」との注意書きがある。確認してみると、再生時にはバッファメモリを活用するためかHDDはほとんど停止しているのだが、録音時は大容量のWAVで記録し続けるためか、HDDは回転しっぱなしである。

個人的にはHDDタイプのiPodでリニアPCM録音が可能になれば、リニアPCMレコーダで活用されているSDHCカードよりもはるかに長時間録音が出来そうという点でも興味があった。しかし残念ながら内蔵マイクでは実用上厳しいようだ。説明書で推奨されているようにHDDタイプでは外付けマイクを利用し、せっかくの高性能内蔵マイクを活用したいならば事実上はフラッシュメモリタイプのiPod nano専用となるだろう。稼動部分がないフラッシュメモリならば今回のようなノイズは発生しないはずである。筆者自身はずっとHDD搭載iPod派でありiPod nanoは所有していなかったため、友人のiPod nanoを使いごく短時間ではあるが試してみたところ、やはり目立ったノイズは記録されなかった。ヘッドホンモニタの印象通りに、16bit/44.1kHz録音としてはなかなかの高音質といえる。

このようになかなか興味深いProTrack、ただリニアPCMレコーダとして考えると、カタログスペック的には他社のリニアPCMレコーダでは24bit/96kHzに対応したものが珍しくないのに対し、ProTrackでは16bit/44.1kHzどまりという点が気になるかもしれない。もっともこれは先に述べたようにiPod標準のボイスメモ機能を活用するオプションであるためしょうがないところだ。今回は並べてテストしたわけではないが、過去に試用したiPod用外付けマイクと比べるとProTrackのほうが高音質に録れている印象を強く受け、やはりマイク性能は優れているようだ。

なおProTrackは単体では現在のところiPhone 3Gと第2世代iPod touchには対応していないものの、iTunes StoreのApp Storeで販売されているBiasのアプリケーション「iProRecorder」をインストールすることで、ProTrackを利用しての録音が可能だという(図9参照)。アプリのインストールで進化するiPhoneと第2世代iPod touchにはいくつかの録音アプリがリリースされているものの、内蔵マイクはモノラルだ。また本格的な外付けマイクの対応も遅れているようだ。その意味ではiPod touchやiPhone 3G用の録音デバイスとしても、こういった製品が充実するとまた面白くなりそうだ。

図9

App Storeで販売されている「iProRecorder」をインストールすれば、ProTrackにiPhone 3G/第2世代iPod touchを装着してのレコーディングも可能