パイオニアのスクラッチ対応DJ用CDプレイヤー「CDJ-400」はUSB端子を搭載し、パソコンとの連携も可能なのが特徴のひとつだ。三回目となる今回は、このUSB関連の機能を中心にどんなことができるのかをチェックする。

USB機器をソースとしたDJプレイ

CDJ-400には2系統のUSB端子が搭載されている。これはパイオニアのDJ用CDプレイヤーでは初めてのことで、これまでのCDJシリーズにはなかった機能を実現している。今回はこのUSB関連の機能についてチェックしていこう。

本体背面にもUSB端子を搭載。オーディオ出力はアナログアウトと、コアキシャルのデジタルアウトが1系統ずつ備わる。CONTROL端子は対応ミキサーと組み合わせてフェーダースタートなどを可能とするもの

この2つのUSB端子はそれぞれが異なる機能を持つ。まずは本体上面に搭載されたUSBポート、これは機能としてはシンプルで、USBメモリやUSBハードディスクを接続するための端子だ。

CDJ-400やその他のパイオニア製プレイヤーに限らず、最近のDJ用CDプレイヤーの多くは音楽CDだけでなく、MP3ファイルの再生にも対応している。とはいっても大部分の製品は光学ドライブしか搭載していないため、CD-R/RWメディアにMP3ファイルを焼き、ドライブにセットすることでMP3を再生するというパターンだ。

このCD-R/RWを介したMP3再生はCDJ-400でももちろん対応している。CDJ-400はこれに加え、USBメモリやハードディスクといったマスストレージ対応のUSB機器に保存したMP3ファイルを直接認識し、再生可能となっている。

USB機器を活用したMP3再生は操作も非常にわかりやすく、USB機器を接続すると自動的に認識されるので、USBモードに切り替えるだけ。あとはCDをソースにしているときとまったく同じように再生やキューポイント操作、テンポコントロール、ループなどの操作ができる。

USB端子にUSB機器を接続すると自動認識される。SOURCE SELECTのUSBボタンを押すとUSB機器内のMP3ファイルを再生できる。CDを再生したいときはCDボタンを押せばよい。なお、USBマスストレージ対応機器をソースとして使えるため、iPodをUSBケーブルで接続すればiPod内の曲を再生することも可能だ

また音楽CDにはなく、MP3ファイルでは使える便利な機能がタグ表示だ。CDJ-400のディスプレイで曲名やアルバム名、アーティスト名を確認し、選曲できる。音楽CDならばせいぜい10~20曲しか収録されていないので再生したい曲もすぐに探せるが、1GBのUSBメモリにMP3ファイルを保存すると100曲以上は軽く入ってしまうので選曲が大変だ。タグ表示ができるとそれを見ながら選曲できるのはありがたい。

本体ディスプレイはMP3ファイルに埋め込まれたタグ情報の表示にも対応。左側のTEXT MODEボタンを押すと曲名、アルバム名、アーティスト名と表示が切り替わる。ただし日本語表示には非対応だ

ディスプレイ右側にはロータリーノブとBACKボタンを搭載。USB機器内にフォルダごとに分類して曲を保存している場合は、携帯プレイヤーのような操作感で選曲できる。なおロータリーノブでの選曲はUSB機器に限らず、音楽CDでも使える

このUSBモードではフォルダ階層にも対応、ディスプレイ右に配置されたロータリーノブを使い、回してフォルダ選択や選曲、押して曲の選択をすることができる。

USB機器を活用してのMP3再生は単純な機能ではあるが、一度CD-Rにデータを焼く手間が省けるため、結構便利だ。またイベント会場にこのCDJ-400が設置されている場合なら、大量のCDを持ち込む必要もなく、USBメモリだけを持っていくことでも対応できてしまうだろう。ただ音質を追求するならばWAVファイルが再生できるとより強力だ。残念ながらCDJ-400のUSB機器からの再生はあくまでもMP3のみでWAVには非対応だ。今後の製品での進化に期待したいところである。

CDJ-400がDJソフトの操作インタフェースに

CDJ-400の本体背面に搭載された、もうひとつのUSB端子。これはパソコンと接続するための端子だ。ではパソコンとCDJ-400を接続すると、具体的にどんなことができるのか。これがパイオニアのWebサイトを見ても少しわかりづらい。

背面USB端子をパソコンに接続している場合は、USBボタンを押すことでUSB機器再生を行うMEMORYモードと、CDJ-400からパソコンをコントロールするPCモードが交互に切り替わる

まずひとつ目は、USB接続のMIDIコントローラとして動作すること。つまりMIDI信号の受信ができるDJソフトと組み合わせれば、CDJ-400のボタンやジョグダイヤルを使い、パソコンのDJソフトを快適に操作できる。この場合、形状はともかく機能としては通常のMIDIコントローラなので、DJソフトにこだわらなくとも、たとえばDAWソフトをコントロールすることも可能だ。

ふたつ目は対応DJソフトのコントロールヴァイナルCDを使わずに、CDJ-400から直接操作できることだ。これはMIDIではなく、いわばネイティブ対応というレベルで動作する。MIDIコントローラとしてCDJ-400を使うときは、ソフトウェア側でプリセットが用意されていなければ手動でMIDI信号を割り当てる必要がある。しかし、対応DJソフトと組み合わせた場合は、この割り当て設定を行わずともすぐに連携しての遠隔操作が可能となるようだ。現時点で対応が表明されているDJソフトは、パイオニアの「DJS」(ただし近日リリース予定のVer.1.5で対応予定)とRANEの「Scratch Live」だ。

パイオニアのDJソフト「DJM」は、近日リリース予定のVer.1.5よりCDJ-400からのコントロールに対応する予定

同梱される特殊なCDまたはレコードを使用することで、従来のCDJやターンテーブルといった機材を操作インタフェースに使えるRANEのDJソフト「Serato Scratch Live」

Scratch Liveについて簡単に説明しておくと、これはパソコンとUSB接続の専用オーディオインタフェース、そしてパソコン接続非対応の従来型DJ用CDプレイヤーまたはアナログターンテーブルを組み合わせて使用するDJソフトだ。専用の「コントロールヴァイナル」というCDをCDJシリーズにセットすることにより、CDJ本体をインタフェースとして使い、パソコン側にインストールしたソフトをコントロールできるようにする仕組みだ。通常のCDJシリーズでScratch Liveをコントロールする場合はこのコントロールヴァイナルCDが必須。しかしCDJ-400ではそれが不要となるのが特徴である。

実際にScratch Liveの最新バージョン(Ver.1.8.0)とCDJ-400を組み合わせて試してみたところ、残念ながらうまく動作しなかった。MIDIコントローラとしては動作するので、Scratch Live側でMIDIの割り当て作業を行えばリモートコントロール自体は可能なのだが…。

Scratch LiveはMIDIでのコントロールも可能、手動でCDJ-400の各ボタンを割り当ててやることで、CDJ-400を操作インタフェースとして使える。この方法ならば対応ソフトに限らず、MIDI機能を備えたソフトならCDJ-400を使える

そこでパイオニアに確認したところ、Scratch Liveに関してはソフトウェア側がまだ未対応で、次のアップデート(Ver.1.8.1)で対応する予定とのこと。また先に述べたMIDI以外でのコントロールについては、CDJ-400が、パソコンにとってマウスやキーボードと同じようにHID(Human Interface Device)として認識され、対応ソフトなら割り当て作業を行わずとも起動するだけでコントロールが可能になるという。これはDJS、Scratch Liveとも共通だ。

今回、CDJ-400によるDJソフトの完全なコントロールを試すことができなかったのは残念だが、MIDIのセッティングを行わずにコントロールできるのは便利そうだ。最近はDJプレイ用のMIDIコントローラもいくつか登場しているが、CDJそのものがコントローラになるのはやはり魅力的である。今後のDJ用CDプレイヤーは、このようなパソコンとの連携も注目すべき機能となりそうだ。