CDを使ったDJプレイを実現するDJ用CDプレイヤー。このジャンルで人気の高いパイオニアから登場した「CDJ-400」は手ごろな価格と多機能を両立して注目を集めている。DJ機材の基本も確認しつつ、CDJ-400をチェックしていこう。

DJプレイの元祖、ターンテーブルの基本

昨年末にパイオニアよりDJ用CDプレイヤーの新製品「CDJ-400」が発売された。さまざまな新機能が用意されており、なかなか興味深い機材なので実際の使い勝手も含めチェックしてみたい。これまで本連載では、いくつかのDJ機材を取り上げてきたが、DJ用CDプレイヤーを取り上げたことはなかった。DJプレイに興味はあってもまだ実際に機材を所有していない人には、わかりにくいところもあるジャンルだろう。今回はDJ用アナログターンテーブルやCDプレイヤーの基本も紹介しつつ、CDJ-400をチェックしたい。

パイオニアのスクラッチ対応CDJとして一番低い価格帯ながらも、魅力的な新機能も備える新製品「CDJ-400」。中央のDJミキサーはDJM-400

2chのデジタルDJミキサーであるパイオニア「DJM-400」。クロスフェーダ、EQ、ヘッドフォンキューといったDJミキサーの基本要素に加え、エフェクトやサンプラー機能も搭載している

まず、異なる2つの曲をミックスして繋いでいくDJプレイの基本となる機材構成だが、これは2台のプレイヤー+DJミキサーという構成になる。それぞれのプレイヤーで違う曲を再生し、DJミキサーで音を混ぜる(ミックスする)わけだ。

このときに使うプレイヤーには、アナログターンテーブルや今回紹介するようなDJ用CDプレイヤーがあり、純粋なプレイヤーではないもののパソコン用のDJソフトもこの範疇に入るだろう。

この中で最初に登場したのはアナログターンテーブルで、テンポが異なる曲を繋げるためにピッチコントロール機能を搭載していることが、通常のレコードプレイヤーとの最大の違いだ。

DJプレイではターンテーブルとレコードの間に、レコードの滑りをよくするためのスリップマットを挟む。これによりターンテーブル自体は回転し続ける状態でありながら、レコードを軽く押さえるとキューポイントで一時停止の状態にできる

またアナログターンテーブルを使ったDJプレイでは、スリップマット上に置いたレコードを手でグルグルと回してキューポイント(再生を始めるポイント)を探す、レコードを手で押さえて回転を止め、キューポイントで一時停止の状態にする、レコードをリリース(レコードから手を離して回転させる)して再生を開始する、レコードを軽く押さえたり、逆に軽く早回しして微妙にピッチをずらし、2曲のテンポを合わせるといったようなテクニックを使う。そのために回転トルクがすばやく得られるダイレクトドライブ方式の製品が主流となっているのも、目的に合わせて進化したといえるポイントだ。

アナログターンテーブルの世界的標準機種として改良が加え続けられ、30年以上生産されるベストセラーとなったテクニクスSL-1200シリーズの現行製品「SL-1200MK6」

さらにアナログターンテーブル独自のプレイといえるのが、レコードを手で押さえて前後に小刻みに動かすスクラッチだろう。曲中のごく短い部分で行うため、曲そのものというよりは、曲を題材としてサンプリング的に音を聴かせるテクニックだ。DJプレイといってもスクラッチを多用するジャンルとあまり使わないジャンルがあるが、ヒップホップなどはスクラッチを多用するので、ヒップホップDJをやりたいという人ならスクラッチも当然のごとく、やってみたいと感じるのではないだろうか。

DJ用CDプレイヤーとはどんな機材か

次にDJ用CDプレイヤーだが、これはアナログターンテーブルと同様にピッチコントロール機能を備える。また、通常のCDプレイヤーの一時停止とは異なり、キューポイントを非常に細かく、フレーム単位でコントロールできるCDプレイヤーである。

アナログターンテーブルがレコード盤の溝からレコード針で音を拾うのに対して、CDプレイヤーはCDの盤面をレーザー光で読み取るという構造上の違いはあるものの、DJ用CDプレイヤーのピッチコントロール機能は、アナログターンテーブルの操作をデジタル的に実現したものと考えてよい。アナログターンテーブルとは異なり、回転するCDを手で押さえることはできないため、ジョグダイヤルを回してキューポイントを探したり、ピッチを可変させることができるインタフェースとなっている。

数多くのメーカーからDJ用CDプレイヤーが発売されている中で、パイオニア製品は長い歴史を誇る。DJ用CDプレイヤー全般を「CDJ」と称することもよくあるが、これもパイオニアの製品名CDJシリーズからきているのかもしれない。

さて、先にDJ用CDプレイヤーはアナログターンテーブルをデジタル的に実現したものという記述をしたが、登場当初よりアナログターンテーブルの機能をすべて再現できていたわけではない。その一例がスクラッチで、初期のDJ用CDプレイヤーはスクラッチを多用するDJには未完成といえる製品であった。逆にアナログターンテーブルにはないメリットもあり、ピッチを可変させてもキーを変えずに再生することができた。これはデジタルならではの機能で、テンポがかなり異なる曲であっても、違和感なくミックスすることができる。

もっともDJ用CDプレイヤーではスクラッチはできないというのは過去の話で、現在ではスクラッチ対応の製品も多い。アナログターンテーブルでは実現できないデジタルならではの機能も多く搭載され、機能的には明らかに上なのだ。

パイオニア「CDJ-1000MK3」はスクラッチに対応するだけでなく、フラッグシップ機らしくジョグダイヤルの操作感も細かく調整できる。実売価格は150,000円前後

パイオニア「CDJ-800MK2」は上位機種CDJ-1000MK3とジョグダイヤルのサイズを含めほぼ共通のインタフェースでスクラッチ機能も搭載。実売価格は90,000円前後

パイオニア製品の中では「CDJ-1000MK3」と「CDJ-800MK2」はスクラッチに対応している。ただし、これらはプロ向け、上級者向けといった位置付けで、機能的には非常に充実しているものの、価格設定も高価だ。パイオニア製品でエントリユーザーから中級者向けといえる価格設定の「CDJ-100S」や「CDJ-200」はスクラッチ未対応だ。DJプレイにはプレイヤーが2台必要となるため、スクラッチ対応機種を2台購入するとその入門機と上級機の価格差はさらに広がってしまう。CDを使ったDJプレイでスクラッチにも挑戦したい入門者は、思い切って最初から高価な機材を選ぶか、スクラッチをあきらめるか、その二択を迫られていたのだ。

実売価格50,000円前後と手ごろなパイオニア「CDJ-200」。DJ用CDプレイヤーの基本機能に加えてエフェクトやループ機能も備えるが、スクラッチには非対応

その状況の中で登場した新製品が、今回取り上げるCDJ-400である。実売価格は70,000円前後、価格的にはまさにCDJ-200とCDJ-800MK2の間に位置しており、スクラッチ機能にも対応。さらに上位機種にもまだ搭載されていない新機能まで備えており、価格と機能のバランスでどれを選ぶか悩んでいた人には、なかなか魅力的だ。どんな機能を備えているのか、次回からチェックしていこう。