ローランドが新たに送り出したリニアPCMレコーダ「R-09HR」。今回は実際の録音操作や強化された再生機能をチェック、そして発表会の場で実際に収録した生録WAVファイルを公開する。その音質を体感してもらおう。

リモコン操作でもクリッピング確認とレベル調整が可能に

R-09HRの録音操作はR-09と基本的に変わりはない。中央のRECボタンを押して録音待機状態にし、左側面のINPUT LEVEL +/-ボタンで録音レベルを調整、もう一度RECボタンを押して録音開始、STOPボタンで停止だ。RECボタン周りのインジケータは録音待機時には赤く点滅、録音中は点灯し、一目で動作状況がわかる。録音レベル調整はR-09では30段階だったがR-09HRは80段階となり、より細かい調整ができそうだ。

録音操作手順やインジケータ動作はR-09と共通。録音レベル調整は80段階設定と細かくなった

録音操作に多用するRECやSTOPといったボタンはサイズも大きくクリック感があり、操作感は良好。サンプリングビット数/レートなどの設定はMENUボタンを押してメニューから行う。これらのボタンはサイズが小さく爪先で押すような感じになる。

ディスプレイはR-09、R-09HRとも有機ELディスプレイを採用し、解像度も同じだ。ただしR-09HRはR-09に比べサイズが約2倍に拡大されている。表示される情報の項目にはほとんど変わりはないものの、レベルメータやタイムカウンタが大きくなっているため、視認性は高まっている。

ディスプレイに表示される情報量はほとんど変わらないものの、面積がR-09(右)に比べ約2倍に広がり、視認性が高まったR-09HR(左)の有機ELディスプレイ

ディスプレイ下にPEAKインジケータを搭載、またレベルメータにはピークホールド機能も備わる。ホールド時間も長めで視認しやすい

MENUボタンの右には独立したPEAKインジケータも搭載、クリッピング時には赤く点灯する。R-09HRではさらに本体上部、マイクの間にもインジケータが加わった。これはリモート・インジケータと名付けられ、本体から離れて付属リモコンで操作していても動作状況が確認できるというもの。録音待機時はゆっくり点滅し、録音中は点灯するのはRECボタン周辺のインジケータと同様だが、さらに録音待機および録音中に過大入力があると速く点滅し、クリッピングが発生したことがわかるようになっている。

本体上部、ステレオマイクの間に新たに搭載されたリモート・インジケータ。前面のRECインジケータと同様に録音動作状況を知らせることに加え、クリッピング発生もわかるので、本体から離れていてもリモコンで録音レベル設定を行うことも可能だ

三脚を使うにはオプションのR-09HR用カバー/スタンド・セットが必要。カバー+小型三脚という構成はR-09用オプションと変わらないものの、本体サイズが変更されたためR-09用のカバーは流用できない

本格的に録音作業を行う場合、三脚やマイクスタンドを活用して本体を固定したほうがベター。そのために本体に三脚穴を設けている製品もあるが、R-09HRでは本体には三脚穴は用意されず、別売オプションの「R-09HR用カバー・スタンド・セット」を使う必要がある。この専用カバーに三脚穴が用意されているので、R-09HRにカバーを装着し、付属三脚や手持ちの三脚、または別売マイクスタンドアダプタを使う、というパターンだ。

可変スピード再生にも対応、録音音質は確実に向上

R-09HRは再生機能も強化されている。R-09ではA-Bリピートとリバーブ機能だけだったのに対し、R-09HRでは50~150%の範囲で10段階の再生スピードの変更が可能となった。可変スピード再生は楽器練習時にも便利だろう。またリバーブ機能も引き続き搭載されており、Hall1、Hall2、Room、Plateと4タイプを選択できるのはR-09と共通で、さらにリバーブのかかり具合を10段階で調整できるようになっている。なおリバーブはいわゆるかけ録りはできず、再生専用だ。また可変スピード再生とリバーブ機能は、88.2および96kHzで録音したファイルでは使えないので、そこには注意が必要だろう。

可変スピード再生やリバーブタイプの設定はメニューから行う

可変スピード再生とリバーブは「SPEED」「REVERB」ボタンを押すごとにオン/オフが切り替わり、オン時にはディスプレイにアイコン「SPD(SPEED)」「REV(REVERB)」で動作状況が表示される

そして本体とは直接的な関係はないものの、R-09HRでは嬉しい付属品が追加された。それが波形編集ソフトの「Cakewalk Audio Creator LE」。これは録音したファイルをパソコンに読み込み、不要な部分のカットやトリミングといった編集作業や音量を引き上げるノーマライズ、CD-Rを利用しての音楽CD作成といった波形編集ソフトの基本的な機能が揃っている。「Cakewalk Audio Creator」という製品の機能簡略版といえるソフトで、Audio Creatorの特徴であるノイズリダクションプラグインなどは含まれていないものの、R-09HRで録音したファイルを一通り編集するには十分だ。まだ波形編集ソフトを持っていない人にとっては嬉しいバンドルソフトだろう。

バンドルソフトの「Cakewalk Audio Creator LE」。カット編集やフェード、ノーマライズ処理、オーディオCD作成などが可能。VSTプラグインにも対応している

最後に音質について。先日行われたR-09HRの発表会では弦楽四重奏の生録音体験会も開催されたので、その録音ファイルをサンプルとして掲載しよう。手持ちの24bit/96kHzで録音したWAVファイルの冒頭と最後の不要部分だけカットおよびフェード処理し、それ以外は未加工である。少々録音レベル設定が低めで、また発表会という場もありカメラのシャッター音も入っているものの、原音に近く、また臨場感あふれる音となっている。同じ24bit/48kHzに設定してR-09と共に録音してみても、R-09HRではより自然な感じで録音され、音質は向上しているといえるだろう。

R-09HRの録音サンプル R09HR.zip
約42秒、PCM、24bit/96kHzのWAVファイルをzip形式で圧縮してある(22.9MB)

R-09HRは24bit/96kHz録音に対応しただけでなく、SDカードスロットの改良、ディスプレイの大型化による視認性の向上、リミッタや可変スピード再生機能の搭載、リモコン付属など、細かい使い勝手も確実に向上したといえる。逆にいえばR-09の弱点を潰してきたともいえる仕上がりで、リニアPCMレコーダ市場ではまた注目の製品となりそうだ。