オリンパスとしては初のリニアPCMレコーダ「LS-10」。同社はICレコーダでは定番ブランドとしての地位を確立しているが音響機材には初挑戦ともいえる。ICレコーダとの違いはどこにあるのか、使い勝手はどうか、チェックしてみよう。

リニアPCMレコーダとしてはコンパクトなデザイン

スリムな印象のLS-10。重量的にはそれほど軽くないものの、ボディは金属製で各部の作りを含め、質感はかなり高い

オリンパスの録音機材といえば、WMAで録音できるコンパクトなICレコーダ「Voice Trek」シリーズがある。これはステレオ録音に対応している製品もあるが、モノラル録音のみというものもあり、高音質に録音するというよりは、会議や講演の録音といった記録的な使い方が中心と考えられるシリーズだ。

そのオリンパスがVoice Trekシリーズとは別に送り出した新製品が「Linear PCM Recorder LS-10」だ。リニアPCMレコーダと銘打っていることからわかるように非圧縮PCMのWAVフォーマットに対応し、最高24bit/96kHzでの録音が可能となっている。さらにWAVだけでなくMP3とWMAにも対応。3種類のフォーマットに対応しているレコーダは珍しい。

本体デザインはVoice Trekシリーズと似た印象で、他メーカーの製品に比べてかなりスリム 。さすがにサイズはVoice Trekシリーズと比べると二回りほど大きくなってはいるものの、リニアPCMレコーダとしてはもっともコンパクトな部類である。ただしボディが金属製のためか見た目よりもずっしりしており、バッテリ込みの重量は約165gだ。電源は単3乾電池2本で、内蔵マイクを利用しての24bit/96kHz録音で約8時間駆動できる。

電池ボックスは本体背面、単3電池を二本使用する。バッテリーライフは他の製品に比べても長め

記録メディアは内蔵2GBメモリに加え、SD/SDHCカードスロットを備える。なお価格はオープンで、量販店での実売価格は5万円前後。これは現時点のリニアPCMレコーダ市場では、内蔵メモリを搭載しているとはいえ平均よりちょっと高めというところだろう。

本体メモリに加え、SD/SDHCカードスロットも備える。SDHCカードは8GBまでサポート

マイクアンプも含め、音質にこだわった設計が施されている内蔵ステレオマイク。角度は90度で固定

内蔵マイクの集音範囲や指向性を5モードから選べる指向性マイク機能。PCM(WAV)録音の場合は16bit/44.1kHzでのみ使用できる

内蔵マイクはアルミ削り出し部品を使用、本体の振動を伝えにくい設計が施されている。左右マイクの配置は90度で固定となっているものの、録音対象との距離や使用目的に合わせてマイクの指向性を5つのモードで変化させる「指向性マイク(DVM)」という機能を備えている。そのほか、マイク感度は2段階で切り替え可能、風切り音の影響を低減するローカットフィルタ機能も用意されている。

手軽に録れるオートモードも用意

RECボタン回りのインジケータは録音待機時には点滅、録音中には点灯する。PEAKインジケータは一目でわかりやすい位置だ

レコーディング時に重要な録音レベル設定はマニュアルで設定することが基本とはなるものの、LS-10には録音レベル設定が不要なオートモードも用意されている。録音レベルを調整する時間がない、また音質にはこだわらずにとりあえず残しておきたいといったとき、オートモードが選べるのは便利だろう。また、マニュアルモードでも、クリッピングを防ぐリミッタ機能を利用できる。

録音レベルの調整は他の製品とほぼ同じ操作で、RECボタンを1回押すと録音待機状態となり、入力レベルメータを見ながら本体右側のREC LEVELダイアルで設定する。もう一度RECボタンを押せば録音スタートだ。もちろんヘッドフォンを接続し、モニターしながらのレベル調整および録音が可能だ。RECボタンに限らずSTOPやPLAY、そして十字キーはサイズが大きく段差もはっきりしたデザインのため、操作性はよい。慣れれば暗闇でも基本操作に戸惑いは感じないだろう。

ディスプレイの入力レベルメータはピークレベルを一定時間ホールド表示するピークホールド機能も備えてはいるが、その表示が小さく、またホールド時間が短いため、かなり注意していないと見逃してしまう。ディスプレイ下にはレベルオーバ時に赤く点灯するPEAKインジケータが用意されているのでクリッピング時にはすぐにわかるものの、レベル調整に多用するレベルメータが見づらいのは残念だ。音質的には細かい音がひとつひとつはっきりと聞き分けられ、優れているといってよいだろう。

ディスプレイに表示されるレベルメータ、L/Rチャンネルとも-3db付近に表示されている"]"がピークホールド表示、ホールド時間が短いためレベル調整はしづらい

背面には小型ながらもステレオスピーカ、そして固定に便利な三脚を直接セットできるよう三脚穴を備える

面白いところとしては、本体背面にステレオスピーカと三脚穴が備わる。小型スピーカなのであくまでも録音結果の確認程度ではあるが、ヘッドフォンを繋がなくとも聞くことができるので意外と便利。三脚穴があることで、アダプタや専用ケースを使用せずともLS-10単体で三脚に固定できるので、かなり実用的な装備だ。

なお風切り音を防ぐために屋外ではほぼ必須となるアクセサリ、ウインドスクリーンは標準で付属。別売オプションとしてはACアダプタや外付けマイクといった定番的なものに加え、リモコンセットも予定されている。リモコンについてはまだ詳細は発表されていないもののワイヤレスなので、三脚に固定して屋外で生録したいといったニーズには便利そうだ。

LS-10は内蔵マイクなど設計にはかなりこだわったようで、今回は試用スケジュールの関係上から視聴ファイルは用意できなかったが音質はなかなか良好だと感じた。またリニアPCMレコーダとしてはコンパクトな本体も持ち運びやすく、毎日持ち歩くことも無理ではない。録音レベル設定が不要のオートモードの存在や、MP3とWAVに対応しているという点もあり、普段は気軽にMP3で録り、ここ一番というときはWAVで録音レベルをきちんと設定して残す、といった使い方もできるだろう。メモ録音的なICレコーダと、高音質のリニアPCMレコーダを1台で兼用させたい、といった人にもお勧めしたい。