リニアPCMレコーダのメリット

コンパクトな本体にステレオマイクを搭載し、内蔵メモリやメモリカードといった半導体メディアに音声をレコーディングできる機材、それがリニアPCMレコーダだ。録音されるファイル形式は製品により多少の違いはあり、複数の方式をサポートしているものが大部分だが、原則として非圧縮PCMのWAVファイルとして録音できる。これが「リニアPCMレコーダ」というジャンル名の由来だ。

本体にマイクを内蔵してメモリに録音できる機材としては、会議や講義の議事録をメモ的に録音するためのICレコーダというジャンルもある。こちらはWAVをサポートする製品がないわけではないものの、基本的にはMP3やWMAなど、圧縮ファイルとしてレコーディングする。本体サイズはリニアPCMレコーダよりICレコーダのほうがコンパクト、しかし高音質を求めるならリニアPCMレコーダ、という棲み分けになっている。

コンパクトで手の出しやすい価格が受け、ロングセラーとなったEDIROLの「R-09」

5秒前から録音を開始するプリレコーディング機能を搭載したソニーの「PCM-D50」

このリニアPCMレコーダ、これまでに本連載でもEDIROLの「R-09」やソニーの「PCM-D50」といった製品を紹介してきた。コンパクトな機材で、外付けマイクを用意しなくともなかなかの高音質で録音できるため、音楽活動にも役立つ機材なのだ。

以前だったら練習をカセットテープやMDといったメディアに録音していた人がほとんどだろう。しかしカセットテープはランダムアクセスができず、MDはランダムアクセスはできるものの、録音フォーマットは音データを圧縮したATRACとなる。リニアPCMレコーダはそれらに比べても高音質だし、録音したファイルはUSBやメモリカードリーダ経由で簡単にパソコンに取り込めるため、オリジナルCDを作るための素材などにも活用しやすいというメリットがある。

リニアPCMレコーダの中で最初のヒット作となったのがEDIROLのR-09、これは本体がコンパクトで、デジカメなどで広く普及したSDカードをメディアとして使い、また価格的にも比較的安価と、初めて使うリニアPCMレコーダとしてバランスが取れた一台である。現在は登場当初に比べてかなりメモリカードの価格が下がっており、アマゾンのような大手通販サイトでも、2000円以下で2GBのSDカードが入手できる。これだけの容量があれば16bit/44.1kHzでは3時間以上、24bit/48kHzでも2時間以上の録音が可能で、複数のSDカードを取り替えながら使うにも抵抗のない状況になったといえるだろう。

それぞれに特徴のある新製品たち

EDIROL R-09は現在でもロングセラーとなっているが、このヒットに刺激を受けたのか、最近このジャンルには続々と新製品が登場している。

最高24bit/96kHzでのレコーディングも可能、コンパクトなオリンパスの「LS-10」

再生スピードの可変やMTR的に使えるオーバーダブ機能など、個性的な機能を備えるTASCAMの「DR-1」

まずはICレコーダではトップブランドのひとつであるオリンパスが、このジャンルで初めて出してきたLS-10。デザイン的には同社のICレコーダブランドである「Voice Trek」シリーズと似ているものの本体は一回り大きく、本格的なステレオマイクを搭載。2GBの内蔵メモリに加え、SD/SDHCカードスロットも備える。

TASCAMのDR-1はSD/SDHCカードスロットを備えるリニアPCMレコーダ。内臓ステレオマイクの角度は録音状況に合わせて90度可変できる。ピッチを変えずに再生スピードが変更できたり、エフェクトやメトロノームを内蔵していたり、また録音済みのファイルにさらにオーバーダブできるなど、音楽練習にも役立ちそうな機能を多く備えているのが特徴だ。

本体上面に4つのマイクを装備し、ステレオだけでなく単体でのサラウンドレコーディングもできるZOOMの「H2」

ZOOMの「H2」もSD/SDHCカードスロットを備える。本体に4つのマイクを搭載し、ステレオ録音だけでなく単体でサラウンド録音までできてしまうのが特徴だ。またパソコンとUSBで接続すればオーディオインタフェースとして動作、USBマイクとしても使えるなど、個性的な機能を備えている。

ここで挙げたリニアPCMレコーダの新製品群は、どれも本体にマイクを備え、内蔵メモリやメモリカードにリニアPCMのWAVファイルとして録音できるという共通はあるものの、本体のサイズや価格、そして細かい機能には違いがある。そこで次回以降からは実機を触りながら一機種ずつチェックしてみよう。