異なる曲を繋いでいくDJプレイは、ターンテーブルやCDプレイヤーなど2台の機器の音楽をDJミキサーでミックスするのが基本。しかしiPod1台だけでDJプレイを可能とする機材が登場した。これは面白そうだ。

iPodでDJプレイできる機材が登場するも…

携帯音楽プレイヤーで一番の人気を誇るアップルのiPodシリーズ。その人気の高さゆえアクセサリや周辺機器も多く、保護ケースや外付けスピーカーなど、多くの製品が各メーカーから発売されている。

NumarkのiPod用DJコンソール第1弾「iDJ」。iPodを接続するためのドッキングステーションを2系統搭載している

その数は膨大だが、見たり触ったりしたiPod用周辺機器の中でも個人的に印象に残っていたのがNumarkの「iDJ」だ。これはiPodを接続するためのドッキングステーションを備えているDJコンソールで、iPodに保存した曲を使ってDJプレイが楽しめる、というもの。クロスフェーダを使うDJミキサー機能だけではなく、iPodの再生や停止、曲のスキップはもちろんのこと、ホイールを使ってキューポイントを探すなど、iDJからiPodをコントロールすることもできる。

一般的なDJミキサーでは、基本的に2台のターンテーブル、またはCDプレイヤーを接続し、それぞれの音をミックスしていく。ではこのiDJはどうだったのか?というとやはりiPodを接続するドッキングステーションを2系統搭載し、iPodを2台使っていた。DJミキサーの構造を考えればごく普通ではあるものの、iPodを2台用意するのは金銭的にもなかなか厳しいなあ…と記憶に残ったのだ。

さらにこの話には続きがある。DJプレイでは基本であり、またもっとも重要となるのは2つの曲のビートをぴったり合わせること。わかりやすい例でいえば、4つ打ちのバスドラがまったく同じタイミングでなければならない。これが少しでもずれていると、いくらクロスフェーダで2曲を繋げようとしても、ビートがずれてしまうからだ。

ここで問題となるのは、先にかけている曲と次にかけたい曲のテンポがまったく同じということはまずありえないため、曲をそのまま流しては、いくらビートを合わせても曲が進むにつれ、どんどんずれていってしまう。そこでDJ用のターンテーブルやCDプレイヤーには、テンポを調整するためのピッチコントロール機能が必ず用意されている。

ところが実際に触ったiDJは、iPodの再生や停止はコントロールできても、ピッチコントロール機能が用意されていなかった。つまりテンポの異なる曲を綺麗に繋げることは、ほぼ無理だったのだ。

iPod1台でDJプレイ可能となった「iDJ2」

このように、DJ機材としては(個人的には)期待外れに終わってしまったiDJだが、2007年夏ごろにNumarkはiPod用DJコンソールの第2弾を発表した。それが「iDJ2」だ。一見、ちょっとしたマイナーチェンジ版に感じそうなネーミングではあるものの、スペックは別物といえる存在のようで、再び期待が高まった。非常に前フリが長くなったがここからが本題、試用機をお借りしたのでiDJ2をチェックしてみよう。

カラー、サイズともiDJから大きく変貌し、またカラーディスプレイも備わったiDJ2

まず外観はカラーがホワイトからブラックにチェンジし、サイズもiDJに比べて二回り近く大きくなった。iDJはほぼ正方形でコンパクトであったのに対し、iDJ2は横長で、2chDJミキサーとしては大柄な部類だ。各チャンネルにはチャンネルフェーダやEQが用意され、DJミキサーには必須のクロスフェーダももちろん搭載されている。

目立つのは本体の中央にカラーディスプレイが備わったこと。詳しくは次回以降に紹介するが、iDJ2はiDJに比べてかなり多機能となっており、その機能を単体で使うためにもディスプレイが必須の存在となっている。

最大の変更点はiPodを接続するためのドッキングステーションが1つだけとなったことだ。そう、iDJ2は1台のiPodで、別々の曲を流すことができるのだ。このドッキングステーションはダイヤルで簡単にサイズを調整可能、モデルや世代によってサイズが異なるiPodを別パーツを組み込むことなくセットできる。

iPod用のドッキングステーションはディスプレイ上部に装備、1台のiPodに保存されている曲を別々に流すことが可能となった。製品により動作状況が多少異なるが、ほとんどのiPodをセットできる

ドッキングステーションを背面側から見たところ、手前のダイヤルを回すことでサイズが可変し、厚みの異なる各世代のiPodをセットすることができる

音源として使える機材はiPodだけではなく、RCA入力も2系統用意される。これはLINEとPHONOを切り変えることができるため、CDプレイヤーだけでなくターンテーブルも接続可能。また背面にはUSBポートが2系統用意されており、ここにUSBメモリやUSBハードディスクを接続すれば、その中に保存されている音楽ファイルをDJプレイに使うことも可能となっている。

LINE/PHONOの切り替え可能な入力を2系統装備し、通常のDJミキサーとしても使用できる。フォノアンプを内蔵しているため、ターンテーブルの直接接続もOKだ。USBポートはUSBメモリやハードディスクだけでなく、USBキーボードを接続してiDJ2をコントロールすることもできる

マスターアウトはXLRバランスとRCAアンバランスを装備。Sビデオ端子も備え、iPod内の映像の出力も可能だが、現行のiPod classicおよび第3世代iPod nanoは映像出力非対応

出力はMaster Outとレコーディング用のRec Outの2系統。前面にはマイク入力やヘッドフォン出力が用意されており、DJミキサーのため現在流している曲と次に流す曲をヘッドフォンでミックスして確認できる仕様となっている。

前面左側はマイク関連がまとまっている。「CF SLOPE」はクロスフェーダのフェードカーブを切り替えるものとスクラッチ向けの鋭いカーブ、ロングミックス向けの緩やかなカーブが用意されている

前面右側にはヘッドフォン関連がまとまっている、ステレオミニプラグ用の端子も用意されているのは珍しい

細かい操作方法はさておき、1台のiPodでDJプレイができるということで期待が高まるiDJ2。次回は1台のiPodをソースとしてどのようにDJミックスを行うのか、実際に使ってみることにしよう。