DTMという枠を超え、パソコンソフト全般として見ても一大ムーブメントとなったソフト、それがバーチャル・シンガーと銘打たれた「初音ミク」だ。シリーズ第2弾として「鏡音リン・レン」が発売されたので、早速使ってみた。

リアルな歌声をパソコンで作り出すVOCALOID2

DAWソフトを中心に、音源としてさまざまなソフトシンセがリリースされている現在のDTMシーン。たとえばギターが弾ける人ならば、ギターパートはオーディオインタフェースにギターを接続してオーディオレコーディング、ドラムにベース、ピアノといった他のパートはソフトシンセを音源として使いMIDIで作成…と、実際に楽器を所有、また弾くことができずとも、曲作りが可能だ。

現在のソフトシンセは非常に強力で、DAWソフトに付属するものだけでもかなり多彩な楽器の音を再現できるし、それで物足りなければ単体で発売されているソフトシンセを購入することで、パソコンはどんな楽器にでも変身できるといってよい。ただしひとつだけ例外がある、それは人間の歌声、ボーカルパートだ。

もちろんマイクを使えば、自分の歌声をレコーディングし、曲にボーカルパートを加えることはできる。とはいえ万人が上手に歌えるかといえばそうとは限らず、また性別による声の差を越えることはできない。音声を合成して作り出すソフトがないわけではなかったがやはり不自然さが拭えず、女性ボーカル入りの曲が作りたくても作れない、といった男性の作り手は少なくなかったはずだ。

と、ここまでは少し前の状況。現在はパソコンで自然な歌声を作り出すことも可能となり、そしてそのソフトが大ヒット作となった。それがクリプトン・フューチャー・メディアの「初音ミク」だ。

アイドルポップスやダンス系ポップスを得意とする大ヒット作のシリーズ第1弾「初音ミク」

初音ミクはヤマハが開発した「VOCALOID2」というエンジンを利用し、プロの声優の声をサンプリングしたデータを元に、リアルタイムで音声合成を行うソフト。ヤマハ開発の音声合成エンジンはVOCALOID2が初めてではなく、それ以前に「VOCALOID」というものが存在し、製品としても「KAITO」や「MEIKO」といったソフトが発売されていたが、VOCALOID2ベースの初音ミクは以前の製品に比べてより自然な歌声を再現している。またキャラクターの魅力もあり、従来のDTMユーザーに限らず、YouTubeやニコニコ動画を通じて今まで音楽制作に関心のなかった層にも広がるヒット作となった。

女性&男性のツインボーカルライブラリを収録した鏡音リン・レン

初音ミクはVOCALOID2の中でもキャラクター・ボーカル・シリーズの第1弾として位置付けられている。2007年12月末には同シリーズの第2弾として「鏡音リン・レン」という製品が発売されたので、今回はこの鏡音リン・レンをチェックしてみよう。

女性ボーカルのリンと男性ボーカルのレンを収録したツインボーカルも可能な第2弾「鏡音リン・レン」

鏡音リン・レンも初音ミクと同じくプロの声優の声をサンプリングしているが、最大の特徴は女性ボーカルの「鏡音リン」と男性ボーカルの「鏡音レン」の二種類の声を収録していること。同時に歌わせて、ツインボーカル構成にすることも可能だ。「リン」の得意ジャンルはエレクトロ&ロック系ポップス/歌謡曲から演歌系ポップス、得意なテンポは85~175BPM、得意な音域はF#3~C#5、「レン」の得意ジャンルはダンス&ロック系ポップス/歌謡曲から演歌系ポップス、得意なテンポは70~160BPM、得意な音域はD3~C#5となっている。

仕様としてはスタンドアロンでも、プラグインとしても動作する。スタンドアロンで使うときは「VOCALOID EDITOR」を使い、プラグイン形式はVSTiに対応。またReWireにも対応している。

スタンドアロン動作時の打ち込みや再生に利用する「VOCALOID EDITOR」、インタフェースはシーケンストラックがMIDIではおなじみのピアノロールで、下側はベロシティやダイナミクスをコントロールするコントロールトラックとなっている

シーケンストラック左側の鍵盤をクリックすれば、それぞれの音程が「あ~」という歌詞で確認できる

VOCALOID EDITORはMIDIシーケンスエディタとしては一般的なピアノロール形式だ。使い方に関しては次回に触れるが、DAWソフトでMIDIの打ち込みをやったことがあれば、メロディの入力はわかりやすいはずだ。

現在パソコンにインストールされているライブラリがVOCALOID EDITORに読み込まれている。なおリンとレンは別のライブラリだ

なおVOCALOID2の概念を紹介しておくと、音声合成エンジンとしてのVOCALOID2と、歌声のライブラリは別のものとなっている。そのため操作インタフェースは同じVOCALOID EDITORで操作・見た目とも変わりはなく、あくまでもインストールされるライブラリが違うだけだ。一般的なソフトシンセとして考えれば、歌声ライブラリ=音色のプリセットと読み替えてもよいだろう。つまり同じパソコンに初音ミクと鏡音リン・レンをインストールすれば、同じメロディ・歌詞を、歌手を切り替えて歌わせることは簡単に可能だ。次回は具体的な操作方法を見ていこう。