新しいエフェクトをどんどん追加できるプラグイン方式だが、その方式は一つではない。今回はまず、現在使用されているプラグイン規格について確認してみよう。

現在主流のエフェクトプラグイン規格

現在のDAWソフトは、購入すると数十種類ものエフェクトがあらかじめバンドルされている製品が多い。これだけのエフェクトがバンドルされているとなると、基本的な種類のエフェクトはほとんど網羅されているといってもよいのだが、プラグインに対応したDAWソフトならばさらに好みのエフェクトを追加することが可能だ。

「SONAR 6 Producer Edition」には高品位チャンネル・ストリップ「VC-64 Vintage Channel」をはじめとして30種以上のエフェクトプラグインがバンドルされている

90種類以上ものハイエンド・エフェクトがセットされたWavesのパッケージ「Mercury Bundle」、VST/DirectXをはじめとして様々なプラグイン形式に対応している

ただし、プラグイン規格にはいくつかの種類があり、完全に統一されているわけではない。具体的にはホストアプリケーション(DAWソフト)とエフェクトプラグインの規格が同じでなければ、DAWソフトにエフェクトを読み込むことはできない。

現在、Windowsの世界ではVSTプラグインとDirectXプラグインが広く普及している形式だ。VSTプラグインはSteinbergの「Cubase」シリーズ、Abletonの「Live」シリーズなど、多くのソフトでサポートされている。DirectXプラグインはCakewalkの「SONAR」や「Project5」といったソフトがサポート、またこの両製品を始めとして、VST/DirectXプラグインの両方が利用できるホストアプリケーションもある。

SONAR 6シリーズではVST/DirectXと二大プラグイン形式に対応、インストールすれば両規格の違いを気にすることなく、使うことができる

Windowsでは他にDigidesignの「Pro Tools」シリーズでサポートされているRTASやTDMというプラグイン規格も存在。Macベースでは、VST、AU(AudioUnits)、MAS、RTAS、TDMといったプラグインが利用されている。

なお、基本的にはホストアプリケーションの対応プラグイン形式と、インストールするプラグイン形式が同じであれば問題なく使うことができるが、例外がないわけではない。DAWソフトに付属するプラグインはそのDAWソフトでしか動作しないものもあるので、DAWソフトを乗り換えたけど使い慣れたエフェクトを新しいDAWソフトに読み込みたい、といった場合は少し注意が必要だ。

ハードウェア以上に自由度が高いエフェクト接続

ハードウェアとしてのエフェクトは、楽器との接続方法に大別して3つのパターンがある。まずは楽器→エフェクト→ミキサーと繋ぐインサーションエフェクト、次はミキサーの各チャンネルからエフェクトを接続しているセンドチャンネルにセンド/リターンするセンドエフェクト、最後がミキサーのマスターバスに接続するマスターエフェクトだ。

この3つの接続方法はエフェクトの性質や、エフェクトを使う目的によって使い分けるのだが、DAWソフトでもハードウェアと同じように、インサーション/センド/マスターエフェクトをソフトウェア上で再現しているものが多い。たとえばSONAR 6シリーズでは各トラックにエフェクトをセットするFX欄が用意されており、ここにセットすればインサーションエフェクトとなる。そしてSONAR 6ではいくつでも自由にバスを追加し、また各トラック・バスのルーティングが変更できるユニバーサル・バス・アーキテクチャという概念が盛り込まれており、センドエフェクト専用のバスを作る、またマスターバスにエフェクトをセットすることで、センドエフェクトとマスターエフェクトとして使える。

SONAR 6のトラック・ビューでは各トラックにインサーションエフェクト用のFX欄が配置されている

バスを何本でも自由に作成できるSONAR6、センドエフェクト・バスを複数作成することも可能だ

SONAR 6の各トラックにはセンドアウトが用意され、作成したセンドエフェクト・バスへルーティングできる。またセンドする信号はプリフェーダ/ポストフェーダと選択することも可能だ

そして、各トラック・バスにセットできるエフェクトは1つだけではなく、同時に複数のエフェクトをセットすることができる。つまり、センドエフェクトバスを10本作成してそれぞれに複数のエフェクトをセットしたり、同じエフェクトをインサーションエフェクトとして各トラックにセットしながらもあえて設定を細かく変更して使う、といった贅沢な使い方が可能だ。これはハードウェアではアマチュアにはまずできない、DTMならではの楽しみ方だろう。

もっとも、DTMでのエフェクトはそのすべてをソフトウェア、つまりパソコンのCPUで処理しているため、ソフトウェア的な仕様とは別に限界点というものがある。最近のDAWソフトであればエフェクトの同時使用数にほとんど制限はないのだが、さすがに同時に100個、1000個のエフェクトを使うことは処理能力的に難しいのだ。ただし、ソフトウェアならではの解決方法が用意されているので、次回はそのあたりも紹介しよう。