KORGより新しく発売されたLIVE CONTROL CONSOLE「ZERO8」、今回はDJミキサーには必須といえるEQからチェックしてみることにしよう。

フィルタやアイソレータとしても動作する多機能EQ

PA/レコーディング用ミキサーにも搭載されているEQ、もちろんZERO8でも各チャンネルに用意されている。各音域をブースト/カットして音作りすることはもちろんだが、DJユースでは複数の曲を違和感なく混ぜるためにも多用する機能である。

ZERO8のEQはスペック的には3バンドEQだが「HI」「LO」だけでなく、「MID」の上には「FREQ」というノブが用意されている。これは中音域を受け持つMIDバンドの中心周波数を動かすためのもので、3バンドEQといってもかなり柔軟な使い方ができるはずだ。

3バンド+中音域のフリケンシーを調整する「FREQ」で構成されるZERO8のEQセクション。一番下に配置されたSOLO/CUTスイッチはSOLOに切り替えることでそのチャンネルのみが出力され、CUTに倒している間はそのチャンネルの出力がミュートされる。レコーディング用ミキサーでは標準的な装備だが、DJユースでは珍しい

「EQ SELECTOR」を切り替えることで各バンドのEQはEQ / アイソレータ / フィルタとして動作する。明言はされていないものの、EQプリセットは現場でよく活用されている古今東西の名機を研究してセッティングされているようだ

そして非常に特徴的なのは「GAIN」の右に配置された「EQ SELECTOR」ノブだ。これはA~Kのプリセットを切り替えることで、EQ特性が変わるというもの。具体的にはA~Eは一般的なEQだが、F~Hは-に振ることで各帯域の音を完全にカットオフできるアイソレータ、そしてI~Kは「HI」がローパス・フィルタ、「LO」がハイパス・フィルタとして動作するフィルタとなる。

もちろん同じEQとはいっても、鳴らしながらA~Eを切り替えてみると、明らかにサウンドが異なるわけだ。DJミキサーではEQではなくアイソレータを搭載していたり、またエフェクトとしてフィルタを装備している製品はままあるが、EQセクションでEQ/アイソレータ/フィルタを切り替えることができ、さらに複数のプリセットが用意されているのは非常に使いやすい。もちろんこの切り替えは、各チャンネルごとに独立して設定できる。

次にクロスフェーダーだが、各チャンネルフェーダーの上には「A」「B」というボタンが配置され、Aを点灯させたチャンネルはクロスフェーダーのA側に割り当てられる。たとえば1チャンネルはAを、2チャンネルはBを点灯させ、それぞれのチャンネルフェーダーを上げておけば、クロスフェーダーを左右に動かすことで1/2チャンネルを切り替えることができるわけだ。

クロスフェーダーに限らず、曲を繋いでいくのに必須なのが現在フロアに流れている曲(マスター)と、次に流す曲(キュー)をヘッドフォンでモニターすること。これはモニタリングしたいチャンネルの「CUE」ボタンを点灯させることで、ヘッドフォンモニターができる。このあたりは一般的なDJミキサーと同じだ。

各チャンネルフェーダーにはクロスフェーダーに割り当てるための「A」「B」ボタンを配置。「CUE」を点灯させたチャンネルは、ヘッドフォンでモニターできる

ヘッドフォンジャックが用意されたMONITORセクション、「BAL」でマスター / キューのミックスバランスを調整し、左に回せば「CUE」を点灯させているチャンネル、右に回せば現在フロアに流れているチャンネルの音をモニターできる。なおDJミキサーのモニタリング方法はマスター / キューをヘッドフォンの左右チャンネルで混ぜるタイプ(ブレンド)と、片チャンネルはキュー、もう一方のチャンネルでマスターを聴き分けるタイプ(スプリット)があるが、ZERO8はブレンドタイプだ

パッドでパフォーマンスできるエフェクト、111種ものプリセットを用意

次はZERO8の他の面、エフェクトについてチェックしていこう。ZERO8で目立つのが左下に配置された液晶ディスプレイ。初期状態ではここにBPMカウンターが表示されているが、「ZERO FX」と書かれた「CHANNEL」「SEND」「MASTER」の各ボタンを押すことで表示が切り替わり、エフェクトが使えるようになる。

起動するとBPMカウンターが表示されているディスプレイ。オートBPMカウンター機能を備え、マスターアウトはもちろんだが、特定のチャンネルを選択して入力されている曲のBPMを計測できる。また「TAP」を叩いて手動でBPM計測することも可能だ

ZERO8にはループ、ディレイ、フランジャー、フィルタなどを始めとして、実に111種類ものエフェクトプリセットが用意されている。そしてそのエフェクトにより操作方法が異なるのも特徴だ。

1~8のノブをパラメータに割り当てるタイプのエフェクトは、ディスプレイ上にノブとパラメータが表示され、ノブを動かすことでセッティングする

タッチパネルを活用するタイプは、エフェクトの種類によりいくつかの操作方法があるが、これはX軸(横方向)とY軸(縦方向)で二つのパラメータを動かすタイプ。左下の「HOLD」ボタンを点灯させると、指を離してもエフェクト効果が持続される

まずわかりやすいのは、ディスプレイの表示を見ながらアサインされた1~8のノブを動かしてパラメータを設定するタイプ。そしてリアルタイムに動かしたいタイプのエフェクトはタッチパネルになっているディスプレイ上をなぞることでパラメータを変化させ、サウンドを変えていくことができる。これはKORGの「KAOSS PAD」シリーズでもおなじみのインタフェースだが、それがZERO8にも活かされているのだ。

エフェクトといえば接続方法も気になるところだが、これは「ZERO FX」に3つのボタンが用意されていることからわかるように、エフェクトの基本通り3パターンの使い分けが可能。「CHANNEL」を点灯した場合はノブによりチャンネルを選択してインサーションエフェクト、「SEND」を点灯した場合は各チャンネルの「ZERO FX SEND」ノブを使ってセンドエフェクト、「MASTER」を点灯した場合はマスターアウトにかけるマスターエフェクト、というわけだ。

「SEND」を点灯させた場合は各チャンネルの「ZERO FX SEND」ノブでセンドアウトレベルを、モニターセクション左の「ZERO FX」でセンドリターンレベルを調整する

ZERO8はエフェクト周りもかなり強力で、また柔軟な使い方ができることがわかっていただけただろうか。次回はいよいよ、パソコンと繋いで使ってみることにしよう。