【コラム】

音楽をはじめよう!

18 デジタルMTRで気軽に宅録生活(3)

    大坪知樹  [2006/11/01]

    多機能なデジタルMTRであるZOOMのMRS-8、各トラックに録音するだけでなく、曲作りに必須のエフェクト機能もかなり強力だ。今回はエフェクト、そして最終的なミックスダウンからパソコンとの連携機能をチェックしてみることにしよう。

    少々煩雑だが、強力なエフェクト機能

    ギターを弾く人なら、音を歪ませるディストーションやフランジャーといったエフェクトを使ったことがあるだろう。しかしエフェクトはそれだけではない、全体的にイコライザをかけてバランスを取るといったマスタリングエフェクト的な使い方もあり、曲作りにはいろいろな意味で必須なのだ。

    MRS-8にももちろんエフェクト機能が搭載されている。大きく分けてインサートエフェクトとセンドエフェクトに分けることができるが順番にチェックしていこう。

    インサートエフェクトは大きく分けて3パターン、ここでは本文中で(2)で紹介した各トラックの後のパターンで、ベースマシントラックの後ろにインサートエフェクトをセットしている

    インサートエフェクトは各要素、たとえばギターとアンプの間にセットする手法である。MRS-8のインサートエフェクトはそのインサートする位置を3つのパターンから選ぶことができる。

    1. 音声入力端子の後
    2. 各トラックの後
    3. 内蔵ミキサーの各チャンネルとマスターフェーダーの間

    最初に挙げたような「ギターとアンプの間」は(1)にあたる。この場合、MRS-8をアンプ&マルチエフェクトとして使うこともできるし、エフェクトを使いながら録音する、いわゆる「掛け録り」をすることもできるわけだ。(2)のパターンは、原音のまま録音したトラックに後からエフェクトを掛ける場合に使う。そして(3)は全トラックに同一のエフェクトを同じパラメータで掛ける、たとえば曲の完成前に掛けるマスタリングエフェクトとして使うわけだ。

    そしてセンドエフェクトだが、これは内蔵ミキサーからエフェクトへ信号を送り、エフェクトが掛かった音を再びミキサーに戻す方法だ。3パターンのインサートエフェクトと、センドエフェクト。言葉にすると少し煩雑だが、MRS-8は1台でかなり柔軟なエフェクトの使い方ができる、と考えてもらってよいだろう。

    そして肝心のエフェクトの内容だが、インサートエフェクトは94タイプのエフェクトタイプが用意されている。このエフェクトタイプは6つのエフェクトがモジュールとして組み合わされており、例えばギターに使うディストーションならばコンプレッサ→プリアンプ/ドライブ→イコライザ→モジュレーション/ディレイ→ノイズリダクションと信号が流れる。それぞれのエフェクトタイプによって組み合わされるモジュールは異なり、またエフェクトパラメータが異なるエフェクトパッチはトータルで200種類近くも用意されている。

    センドエフェクトは1モジュール構成でリバーブ、コーラス、ディレイを使うことができる。こちらも多くのパッチが用意されているのはいうまでもない。

    各エフェクトモジュールのパラメータは個別に設定可能、ここではイコライザを表示しているが、HI、MID、LOWの3バンドイコライザでそれぞれ独立して設定できる

    実際の使い勝手だが、インサートエフェクトは各モジュールのパラメータを独立して自分でセッティングすることもできるので、かなり自由にエフェクトを使いこなすことができると感じた。ただし、パソコンに比べればやはりディスプレイを中心としてインタフェースが弱いため、慣れるまでは操作が煩雑ではあるが、一度セッティングしてしまえばその内容をパッチとして保存することも可能だ。

    ミックスダウンして完成、パソコンを使えばCD化もできる

    各トラックの録音が終わり、エフェクトもセット、内蔵ミキサーで各チャンネルの音量バランスを調整すれば一応の完成である。ただし、この状態ではあくまでも各トラックはバラバラで、ひとつにまとまってはいない。すべてのトラックを2chステレオトラック(マスタートラック)にまとめる、これがミックスダウンと呼ばれる作業だ。

    MRS-8でのミックスダウンは難しくない。各トラックのステータスキーを緑に点灯させて再生トラックとし、マスタートラックは赤に点灯させて録音トラックとする。この状態でレコーディングを開始すればよいだけだ。これでマスタートラックに、各トラックの内容がまとめられるわけだ。

    ミックスダウンの方法は非常にシンプル、内蔵ミキサーのフェーダーを調整してバランスを取り、各トラックを再生トラック、マスタートラックを録音トラックとして録音を行えばよい

    ミックスダウンしてマスタートラックにまとめれば、一応MRS-8での作業は終わりである。では、MRS-8で録音したトラックや、マスタートラックのデータをパソコンで扱うことはできるのだろうか? 記録メディアとしてSDカードを使っているのだから、カードリーダーがあればパソコンに取り込むこと自体は容易である。

    MRS-8で録音、ミックスダウンしたトラックをカードリーダー経由でパソコンに取り込んでも、独自形式のファイルのためそのままではパソコンで再生などはできない

    無料でダウンロードできるソフト「MRS-8 Card Manager」、Exportボタンを押せばWAVファイルに変換することができ、パソコンでの再生や音楽CD作成が可能となる

    実際には、SDカードの内容をパソコンに読み込ませてみると、MRS-8の独自形式のファイルとなっているため、そのままではパソコンで再生などはできない。しかし、ZOOMのWebサイトには「MRS-8 Card Manager」というソフトが用意されており、無料でダウンロードできるようになっている。これを使えば、マスタートラック、または録音した各VテイクをWAVファイルに変換することができるのだ。WAVファイルにしてしまえばもちろんパソコンで再生もできるし、ライティングソフトの音楽CD作成機能を使って音楽CD化することも簡単だ。

    MRS-8は、コンパクトな本体ながらも曲を作るのに必要な機能はほとんど用意されている。その意味では、宅録派の人にはかなり魅力的な機材だ。価格も機能を考えれば、かなり手が出しやすいだろう。弱点としては、やはりパソコンのディスプレイ&キーボード&マウスに比べるとインタフェースが限られるため、機能によっては操作が煩雑な場合もあること。もっともこれは人によって感じ方が違うだろう。パソコンでDAWソフトを使って曲作りをするだけではなく他にもMTRという選択肢がある、それを踏まえて自分に合った製作環境を選べばよいというのが結論ではないだろうか?

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