行き着く先が同じでも、相手に合わせてさまざまな入口を用意するのは、さまざまな場面で見られる話だ。逆にいえば、入口が分かれているから中身も分かれているかと思いつつ入ってみたら、結局は同じ場所に行き着いてしまった、ということになる。

これは、Webサイトについてもいえる話。行き着く先が同じコンテンツであっても、そこにリンクする「ポータル」が目的別・想定ユーザー別に複数用意されていることは少なくない。今回は、そうしたコンテンツのひとつとしてMSDNアーキテクチャセンターについて取り上げてみたい。

ITアーキテクト向けのコンテンツ

MSDNオンラインは "Developer's Network" のWebサイトだから、ソフトウェア開発者を主な利用者に想定しているものである、という先入観がある。確かに、全体的には開発者向けのコンテンツが多いのだが、ソフトウェア開発を進める前に必要となる土台作り、つまり全体のアーキテクチャを作る作業も疎かにできない。

そのアーキテクチャ作りを担当するのが、いわゆるITアーキテクトということになる。開発の現場だけでなく、ユーザーが置かれている状況やテクノロジーの動向にも通じている必要があるし、経営的なセンスも求められるだろう。そのITアーキテクト向けのコンテンツとして、MSDNオンラインでは「MSDNアーキテクチャセンター」を用意している。

MSDNアーキテクチャセンター
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/architecture/default.aspx

ITアーキテクト向けの情報サイト「MSDNアーキテクチャセンター」は、どちらかというと知られていないコンテンツかも知れない

アーキテクトといっても、建築業を手掛けるわけではない。MSDNアーキテクチャセンターが企図しているのは、ソフトウェアアーキテクト、あるいは経営に関する意思決定を行う層を対象として、情報やコミュニケーションの場を提供することだ。たとえば、会社でCIO(Chief Information Officer)といったポジションに就いている人であれば、MSDNアーキテクチャセンターは重要な意味を持ってくることだろう。

そうした想定ユーザーに合わせて、MSDNアーキテクチャセンターでは最新のテクノロジーに関する情報はもちろんのこと、そのテクノロジーやアプリケーションを組み合わせて実現するアーキテクチャ作りの作業、あるいはテクノロジーやアプリケーションの将来展望、といった情報にも主眼を置いている。確かに、アーキテクトを標榜するのであれば、目先の課題だけでなく、将来のことまで視野に入れて長期的なビジョンを持っていなければならないだろう。

そういった情報提供の中で、過去の本連載で取り上げてきた開発者向けのコンテンツをリンクしている場面も出てくる。行き着く先は同じでも、「ITアーキテクト」と想定ユーザーの的を絞り、関連する情報を集約することで、情報へのアクセス性を改善することができる。

確かに、いくら行き着く先が同じだからといっても、MSDNオンラインがもつ膨大なコンテンツをいきなりすべて「ドカン」と見せられても迷子になってしまう。それであれば、「開発者向け」「アーキテクト向け」、あるいは前回に取り上げた「MSDNアカデミックアライアンス」のような「教育機関向け」という具合に想定ユーザー層を絞り込んで、入口の段階で交通整理してくれる方が親切だ。

意外と知られていない? アーキテクチャジャーナルに注目

MSDNアーキテクチャセンターでは、ITアーキテクトが求める情報の提供という見地から、「インダストリセンター」「特集」といった形の情報提供に加えて、ユーザー同士のコミュニケーションの場を実現する「コミュニティエリア」や、ITアーキテクト向けの無償オンラインマガジンである「アーキテクチャジャーナル」を用意している。

「アーキテクチャジャーナル」は、これまで本連載では取り上げてきたことがないし、一般的にもあまり知られていない部類に属すると思われる。これは著名なITアーキテクトや技術者が寄稿している季刊のオンラインマガジンで、本稿執筆の時点では日本語を含む9ヶ国語版が存在している。この「アーキテクチャジャーナル」がトップに表示されているところから、MSDNアーキテクチャセンターが企図しているものを読み取れる、といえるだろう。

号数を見ると、2010年11月の時点で21号までリリース済みだから、単純計算すれば5年以上の歴史が存在することになる。

アーキテクチャジャーナル (日本語版)
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/architecture/bb410935.aspx

The Architecture Journal (英語版)
http://msdn.microsoft.com/en-us/architecture/bb410935.aspx

「アーキテクチャジャーナル」(21号)のトップ画面。XPS、あるいはPDF形式のファイルをダウンロードしておいて、手元で読むこともできる

このほか、開発者向けのオンラインマガジンである「MSDNマガジン」についても、MSDNアーキテクチャセンターからリンクされており、容易にアクセスできるようになっている。

MSDNマガジン
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/magazine/ee441157.aspx

MSDNマガジンについては以前にも取り上げたことがあるが、個々のテクノロジーの具体的な内容、あるいはテクノロジー相互の関係を知ってもらうのに有用なコンテンツだ。つまり、大所高所から見た長期的ビジョンに関わる話は「アーキテクチャジャーナル」、それを具現化するための具体的なテクノロジー関連の話は「MSDNマガジン」という使い分けになるのだろう。これも「行き着く先は同じだが、入口を分けて交通整理」の一例といえる。

だから、アーキテクチャセンターのトップで「アーキテクチャジャーナル」をフィーチャーして、その下で「コミュニティエリア」や「MSDNマガジン」などへのリンクをまとめた形になっているわけだ。