日本で最も長い鉄道路線はどこか? 正解は東北新幹線で、営業キロ713.7km。では2番目は? 山陰本線の673.8km(支線を除く)だ。山陰本線は在来線で最も長い。普通乗車券で乗れる最も長い路線ともいえる。そこで、秋に発売される普通・快速列車限定のきっぷで、起点の京都駅から全線乗り通してみよう。はたして、1日で到達できるだろうか?

架け替え前の余部橋梁を走る山陰本線の列車(写真はイメージ)

今回使用するきっぷは、この秋にJR西日本から発売される「鉄道の日記念 JR西日本一日乗り放題きっぷ」。利用期間は10月6~21日で、有効期間は1日。料金は大人3,000円、こども1,500円。JR西日本全線の普通・快速列車の普通車自由席と、JR西日本宮島フェリーが乗り放題となる。山陰本線は全区間がJR西日本の路線だから、これがぴったりだろう。

この時期にはもうひとつ、JR旅客各社から全国版の「秋の乗り放題パス」も発売される。昨年まで「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」として発売されていたが、今年から名前が変わり、値段も下がった。ただし3回分ではなく連続3日間有効になったとのこと。前後の日程を考慮すると、こちらのきっぷも検討の余地あり。料金は大人7,500円。こども3,750円。1日あたりの料金はこちらのほうがちょっと安い。

山陰本線は1日で走破できる!

1日で山陰本線を踏破するプラン(土休日ダイヤ)

それでは時刻表をめくってみよう。スタートは山陰本線の起点、京都駅。出発は6時38分。近畿圏から始発で到着できる時刻で、東京からだと夜行バスでも間に合う時刻。ベストプランは全室トレインビューが売りの「ホテル近鉄京都駅」で前泊だろう。

今回の行程表では園部駅で乗り継ぐように見えるけれど、時刻表を見ると園部駅に到着した列車がそのまま次の福知山行になるようだ。その後、豊岡駅、浜坂駅、鳥取駅で乗り継ぎ。鳥取駅では待ち時間が6分ある。ここで昼食の駅弁を入手したい。大判時刻表の欄外を見ると、「元祖かに寿し」「あご寿し」などの地元食材を使った弁当が並ぶ。ところで、「鳥取大砂丘おこわ弁当」って何だろう? 砂に見立てた何かが入っている!? さらには「ゲゲゲの鬼太郎風呂茶漬け」なる駅弁まで! どんどん妄想が膨らむなあ……。

この行程で最も興味深い列車は、米子発浜田行の列車番号「135K」だ。米子駅13時45分発、浜田駅17時26分着(途中の出雲市駅より「331D」に)。途中のすべての駅に停車し、所要時間3時間39分という長距離ランナー。かつて山陰本線を走った日本最長距離鈍行「824列車」には及ばないけれど、長距離鈍行の旅を楽しめそうだ。ちなみに列車番号末尾の「K」は、土休日運行の列車を示すようだ(今回の行程は土休日を使うことを前提としている)。平日は同じ時刻で「137D」となる。

この調子で乗り継いでいき、終点の下関駅には23時0分に着く。山陰本線の終点はひとつ手前の幡生駅だけど、列車はすべて下関駅まで足を伸ばす。この時間だと下関で泊まったほうがよさそうだが、山陽本線の電車で小倉駅まで足を伸ばせば、「ステーションホテル小倉」にトレインビュープランがある。

普通列車だけでも、1日あれば山陰本線を走破できる。本当は長門市駅と仙崎駅を結ぶ支線も含めて乗り通したかったけれど、この時間は列車がない。まあよしとしよう……。いや、これでいいのかな? ずっと列車に乗っているだけではないか。

山陰をまるごと楽しむ3日間プラン!

そこで3日間有効の「秋の乗り放題パス」を前提に、山陰本線の旅を再検討してみた。

3日間で山陰をたっぷり楽しむプラン(金曜日出発)

山陰本線といえば名所・余部橋梁を見たいので、最寄り駅の餘部駅で途中下車することに。いまは架け替えられ、我々の記憶に焼き付けられた赤い鉄骨の橋ではないけれど、現在のコンクリート橋の姿も美しいらしい。ここでランチタイム。橋の下には「道の駅 あまるべ」がある。付近には1986年に起きた列車脱線転落事故の慰霊碑もあるので参拝したい。

次に訪問するスポットは若桜鉄道だ。鳥取駅で因美線に乗り換えると、若桜鉄道に直通する若桜行がある。ただし若桜鉄道はJRではないので別料金だ。若桜駅の滞在は約1時間を見込んだ。構内にはC12形蒸気機関車が展示されている。300円の入構券を購入すれば、機関車付近の立ち入り見学もできるという。

鳥取駅に戻り、山陰本線で米子へ。1日目はここで終わり。この3日間プランは金曜日出発で考えたけれど、土日出発だと休日運転の列車に乗れるので、米子駅にも少し早く着ける。とはいえ、今回は欲張らずに宿へ。おすすめは「ホテルハーベストイン米子」。トレインビュープランはないけれど、線路側の部屋から米子駅構内が見渡せるという。

翌日は遅めの出発で境線に乗る。「鬼太郎列車」で知られ、妖怪の名前がついた駅が楽しいローカル線だ。終点の境港駅を降り、妖怪たちの彫像が並ぶ「水木しげるロード」を歩くこと約10分、「水木しげる記念館」がある。ちなみに、境線は米子空港拡張のために線路を迂回させたところがあり、車窓から飛行機も眺められる。

米子駅に戻り、次に途中下車するのは松江駅だ。観光ルートを走る「レイクラインバス」で松江しんじ湖温泉駅に行けば、「バタデン」こと一畑電車に乗り換えられる。でも松江を通過するなんてもったいない。松江城を散策し、お堀を巡る遊覧船に乗ってみよう。車が走る沿道と、江戸時代の天守を残す松江城に挟まれた、時代の境目をゆく船。どんな景色だろうか? この日は松江に泊まろう。小泉八雲記念館などを訪れるのもいいかもしれない。

2泊目のおすすめの宿は「ニューアーバンホテル」。駅弁「島根牛みそ玉丼」付きの宿泊プランがあるという(11月30日まで)。「第46回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会 おいしかった駅弁アンケート」で1位、第47回は販売個数第2位という人気駅弁。これはうれしい。駅弁は朝7時30分以降の引き渡しとのことだから、翌日の朝食はホテルでビュッフェスタイルにしよう。お昼はこの駅弁だ。

駅弁を受け取ったら一畑電車だ。山陰の旅で出雲大社を外してはいけないだろう。宍道湖を眺めつつ揺られる電車は、元京王電鉄5000系かもしれない。一畑電車といえば、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』のロケ地。レトロな電車、デハニ50も拝みたいところだけれど、朝は車庫の中だろう。出雲大社をお参りした後は電鉄出雲市駅へ。隣接するJR出雲市駅から山陰本線の旅を再開する。

次の途中下車は大田市駅。世界遺産の石見銀山へバスが出ていて、ここも山陰の旅では外せない。でも、列車の時間を考慮すると滞在時間は2時間くらいだ。大丈夫かな……? 下関駅23時0分着の列車に乗るためには、時刻表を逆にたどって、大田市駅16時46分発の列車がリミットになる。浜田駅で乗り継ぎ時間が16分あるから、ここで夕食を調達したい。

山陰本線沿線の観光地を網羅できる

以上、3日間の予定でプランを作ったら、山陰本線沿線のおもなスポットを巡る欲張りな旅になった。ちょっと慌ただしい気もするから、どこかひとつを外して、その時間を別の場所の滞在時間延長に振り向けてもいいかもしれない。筆者の場合、すでに出雲大社と一畑電車は訪問済みだから、その時間を石見銀山に振り向けてもいいと思っている。