小さいとき、「学校に泊まる」ことに憧れたことはないですか? 最近では廃校を利用し、いろいろな体験ができる宿泊施設が増えているようだ。秋も本番になり、ご飯が美味しく紅葉が楽しめる季節になってきた。今回は家族のドライブやマスツーリングにオススメしたい「廃校を利用した宿泊施設」を紹介したいと思う。

自然を満喫する体験学習

今回紹介する宿泊施設は、少子化などで廃校になった校舎を生涯学習の施設や宿舎などに活用したもの。「廃校を利用した宿舎がある」と人づてで聞き、「学校に泊まれるなんて面白そうだな」と思って、インターネットで検索すると意外に多くの情報がヒットした。廃校を利用した宿泊施設は、部活の合宿や研修などにも利用され、大人数での宿泊が可能なところも多いらしい。マスツーリングでも、みんなが同じ部屋で眠れるのは楽しそうだ。

今回、私が訪れた栃木県の"星ふる学校 「くまの木]」"は、体験学習プログラムが豊富な宿泊型体験施設。廃校を利用した宿舎には宿泊のみの運営と、ここのように体験プログラムを積極的に取り入れているところがあるので、泊まるときにはチェックしたい。

「くまの木」の最大の目玉は、直径3.5mの天文ドーム「くま天童夢」。校庭にドームに収まった口径35cmの天体望遠鏡が設置されている。体験学習プログラムとして天体観察が用意されているが、ほかにもバードウォッチングなどの自然観察や、蕎麦打ちといった郷土料理体験など、季節に応じて様々な体験プログラムが用意されている。体験プログラムは事前予約が必要なものもあるので確認しておこう。自然を満喫できる体験プログラムは、子どもから大人まで楽しめる。宿泊だけの利用より、興味のあるプログラムに参加したほうがはるかに楽しめるはず。廃校を利用した宿を選ぶとき、私も天体ドームに惹かれて「くまの木」を選んでしまった(笑)。

熊ノ木小学校を再利用した"星ふる学校 「くまの木」"。2888名の児童が卒業したという

現在の学校ではなかなか見ることのできない二宮金次郎の像

校舎の周りは畑が広がり、星を見るには最適な環境

「くまの木」のシンボル、天体ドーム「くま天童夢」

ツーリングスポットの中心に位置する「くまの木」

「くまの木」は、日光や鬼怒川温泉、塩原温泉からのアクセスもいい。私は日光杉並木街道から霧降高原道路を走り、奥鬼怒川温泉と湯西川温泉に寄ってから「くまの木」へ到着した。霧降高原道路は2006年の9月から無料で通行できるのがうれしい。ただし紅葉シーズンは混むので気をつけて走ろう。紅葉シーズンなら中禅寺湖や戦場ヶ原の日光方面や、日光もみじラインを通って塩原温泉郷をまわるのもいいかもしれない。

「くまの木」は、栃木県塩谷町にある旧熊ノ木小学校を利用した施設だ。旧熊ノ木小学校の廃校が決まると、木造校舎を残し、地域のシンボルとして復活させたいという地域の要望が強く、宿泊できる体験学習の拠点施設として、"星ふる学校「くまの木」"として生まれ変わったという。

校門をくぐると、木造校舎と二宮金次郎の銅像が迎えてくれた。校庭にはクルマやバイクを停めるスペースは余るほどあるので、マスツーリングでも安心だ。受付を済ませ、早々に校内探検へ出かけた。廊下や水飲み場などは当時のままに残してあるが、宿泊する部屋(元は教室)や浴場などは、快適に過ごせるように改装されていた。部屋は、1つの教室を2つに分けた4名用の洋室と、合宿などで大人数で利用できるよう教室に畳を敷いた和室が用意されていた。洋室は4名用とあるが、ベッドが6台あるので最大6名まで、和室は最大15名まで利用が可能だという。もちろん1名での利用もできる。私は友達と2人で洋室を利用したが、かなり広々と利用できて快適だった。だた、この部屋を1人で利用するのはちょっと怖いと思う……。夜中のトイレには行きたくないなぁ。

校内には、蕎麦打ちなど行なう「体験室」や、研修室を兼用した「談話室」なども用意されている。興味を引いたのは、旧熊ノ木小学校の想い出の品や体験学習の作品を展示している「展示室」だった。初めて見るガリ版刷り機やスケート下駄などが置かれていて、ここで子供たちが学んでいた様子を感じさせてくれた。廊下には「くま天童夢」で撮影された天体写真が飾られ、夜の天体教室に期待が募る。そのほかに目に付いたことは、部活の合宿の利用が多いらしく、洗濯機が2台設置され、しかも無料で利用できること。ロングツーリング好きの私としては、ポイントがかなり高い。

4名用の洋室は6部屋用意されている。部屋の名前はすべて星座の名前だった

子供会や部活など、大人数に対応できる和室は2部屋用意されている

廊下には天体望遠鏡で撮影した天体写真が展示されている

懐かしい水飲み場。ネットに入った石けんが学校っぽい

熊ノ木小学校の想い出の品が展示された展示室

スケート下駄。昔の子どもはこれを履いて氷の上を滑ったのだろう

初めて見たガリ版刷り機。私は教科書でしか見たことがなかった

談話室兼研修室。研修用に貸し切り使用も可能(有料)

無料で利用できる洗濯機と乾燥機は旅人にとっては嬉しいもの

広々とした浴槽は1日の癒してくれる

郷土料理はお袋の味

宿舎をひと通り探検したところで夕食の時間になった。元給食室の調理室と繋がった食堂は、学校給食を思い出した。しかし学校給食とちがうのは、暖かくて美味しい郷土料理が出てきたこと。メニューは自家製味噌のすいとん、塩谷町の特産品であるヤーコンの葉など地元野菜の天ぷらと煮物、鮎の塩焼きなどを堪能した。ひとり暮らしでレトルト食品やコンビニばかりで済ませることが多かったので、お袋の味のような郷土料理は嬉しかった。アルコール類も頼むことができ、地ビールのヤーコンビールも興味があったが、食後に天体教室を予定していたので諦めた。ヤーコンの天ぷらは、山菜のたらの芽のような苦みがあったので、ビールになるとどんな味がするのだろう? 自家製味噌はとても香りが良くて美味しかったので、お土産に買ってしまった。

元給食室の調理室。地元の方々が美味しい郷土料理を作ってくれる

食堂でみんなで食べる夕食は給食の時間を思い出す

地元の野菜を使った郷土料理。自家製味噌はお土産で買うこともできる

ロマン感じる天体講義

夕飯も食べ終え、楽しみにしていた天体観測の時間だ。はじめに談話室で天体の講義を聞く。話していただいたのはボランティアの増田さんと小原さん。参加者は私と友人の他に2家族がいて、合計7名が天体観測に参加した。天体観測は4名以上の参加で開催される。しかし、増田さんから「今日は雲が出ているので、もしかしたら天体観測はできないかもしれません」と、残念なお知らせが……。講義の最中に雲が晴れるのを願うしかない。

天体ドーム「くま天童夢」で撮影した天体写真のスライドショーを見ながら、わかりやすい太陽系や銀河系のお話し聞く。昔、学校で習ったはずなのだけど、すっかり忘れてしまった内容で懐かしかった。果てしない宇宙の話、地球に生命がいる奇跡など、スケールの大きな話はロマンを感じてしまう。なんとなく映画の「コンタクト」を思い出してしまった。

講義の後、双眼鏡の倍率の見方やピントの合わせ方など正しい使い方を教わった。全てが終了し、空の様子を見た結果、雲が厚く出てしまっているので天体観測は不可能ということになってしまった。楽しみにしていたので、とても残念だったが、こればかりは自然の都合なので仕方ない。しかし、天体講義はとても面白かった。

23時には布団に入って寝たが、夜中に一度目が覚めたときに窓の外を見たら、想像もつかないような星空が広がっていて、興奮した。平成12年の環境庁と日本環境協会の調査によると、この「くまの木」が全国「星が良く見える場所」調査のトップだったのだという。夜中に見た星空を見るとそれも納得できた。三脚などの撮影機材を持ち合わせていなかったことがとても悔しかった。

朝食も地元の野菜を使った料理を中心の料理で美味しくいただくことができた。朝食後、ボランティアの増田さんが来校され、昨日天体観測ができなかった変わりにと、天体望遠鏡で太陽の黒点とプロミネンスを観察させてもらった。増田さんが言われるには、夏より秋、秋より冬のほうが空気が澄んでいて天体観測が開催できる日が多いらしい。これからの季節が天体観測の本番なので、また来て欲しいとのこと。深夜に見た満点の星空を、天体望遠鏡でも見てみたい。必ずリベンジに来ようと心に誓った。

天体観測ではボランティアの増田さん(右)と小原さん(左)が講義や双眼鏡の使い方を教えてくれる。

天文ドーム「くま天童夢」の天体望遠鏡。太陽のプロミネンスや黒点を観測。見える画像は8分前の太陽だという

「くまの木」のアイドル、ちっぷ(♀)。趣味は犬小屋の屋根に登ることなのだそうだ