【コラム】
バイクの免許を取って2年半の月日が経った。だけど、私は一度もメンテナンスというものを自分の手でしたことがない。工具は車載工具しか持ってなく、日常点検の空気圧チェックも自分でやったことがなかった。それでも1人でロングツーリングができたのは、見ず知らずの優しい人たちがいたからだと思う。「餅は餅屋、バイクはバイク屋」と考えていて、素人の自分が触ってバイクを壊すのが怖かったというのもあった。しかし、本コラムの他のスタッフから「バイクの記事を書いている者としてメンテナンスくらいできなくてどうする。オイル交換ぐらいしてみなよ」と、冬休みの宿題が出てしまった。ネジをなめずに無事交換できるのだろうか? と不安ながらのオイル交換レポートです。
とりあえずオイル交換に必要なエンジンオイルとオイルフィルター、廃油ポイ(廃油受け)、ボルトを外すためのレンチを買うためにバイク用品店へ行く。オイルはどれにしたらいいのだろう? 周りの人から「モチュールがいいよ」「鉱物油より100パーセント化学合成油のほうが性能がいいし劣化もしにくい」「高価なオイル入れとけば間違いない」など、いいかげんなアドバイスをもらう。自分でも事前にオイルの粘度やグレードの表記の読み方などの知識を付け焼き刃で詰め込んだ。しかし、実際に売り場へ行ってみるとオイルの種類があまりにも多すぎて圧倒されてしまった。しかも、どの商品にも「最高級」「最適」「優れている」など書いてあるので、どれを選べばいいかわからない。愛車ジェベル200の取扱説明書と商品棚を長いこと睨めっこ。結局、みんなが良いというモチュールの300V、粘度は取扱説明書に書いてあるとおり「10W-40」のものを選んだ。
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今回購入したオイル交換に必要なアイテム。廃油ポイ、モチュール300V、オイルフィルター、コンビネーションレンチ6本セット。全購入金額は5千円程度。バイク屋さんでオイル・フィルター交換をお願いすると6千円程度なので、高いオイルや工具を買っても自分でやったほうが安くすむと改めて実感 |
オイルフィルターを交換するには、専用のオイルフィルターレンチが必要だと聞いていたので、お店の人に置き場所を聞くとジェベルはスパナだけで交換が可能なことが判明。工具はスパナとメガネレンチが一緒になったコンビネーションレンチを買うことにした。オイル交換ではコンビネーションレンチだけで足りるのに、工具コーナーを見ていたら六角レンチやラチェットまで欲しくなってしまった。どうやら私は道具から入っていくタイプらしい。今まで「メンテナンスで服が汚れるのはイヤだ……」と思っていたのだけど、オイルや工具を買い始めると、汚れながらもひとりでメンテナンスしている姿もかっこいいなと思った。
自宅前でオイル交換開始。さすがにひとりっきりだと不安なので、やはりバイク乗りの弟に立ち会ってもらうことにした。バイク屋さんで無駄話をしながら作業をいつも見ていたので、オイル交換の流れはわかっていたつもりでいた。しかし、オイルを抜くためにドレンボルトを緩めようとしたら、「まずは暖機してエンジンを暖めないとオイルが最後まで落ちないよ」と、すぐに指摘されてしまった。よく雑誌やメンテナンス本で「エンジンが熱いうちはオイルも熱くなっているので抜くときに注意」と書いてあるので、オイルはエンジンが冷えているときに抜くものだと思っていた。しかし、寒い時期は手で触れる程度に暖機をして、粘度を柔らかくしたほうがオイルはしっかり抜けると初めて知る。見ているだけでは気が付かなかったことだ。
暖機を終えてメガネレンチでドレンボルトを緩める。小学校のときに「ネジは時計回りで締まる」と習ったが、ドレンボルトは上向きに付いているから回す方向がよくわからない。地面にへばりついて覗きこんで方向を確認。しかし起きあがるとまたわからなくなる……。
「左手でメガネレンチとボルトの頭を押さえて右手で回す」と工具の基本的な使い方を教えてもらったが、両手でチカラいっぱい回しても緩んでくれない。何度か挑戦して、緩んだ勢いで後ろに転がるというお約束な状態になる。ボルトを少し緩めて、オイルを抜きやすくするためにフィラーキャップを開ける。「手で回すことができる」とメンテナンス本には書いてあったが、これも固かったのでプライヤーを使った。ドレンボルトを外すときに「オイルが熱いから、ボルトはそのまま廃油ポイの中に落としたほうがいいよ」と後ろから見守る弟から一言。汚れたオイルがダラ~っと下に落ちていく。
オイルを抜いている間にオイルフィルターの交換をする。ジェベルのオイルフィルターカバーは3本のネジで留められている。凹んだところにネジがあるためスパナでは1回に15度程度しか緩めることができない。せっかちな私は整備に向いてないのかと思ったが、後で聞いたらソケットレンチというのがあればラクなのだそうだ。フィルターカバーを外して、古いオイルフィルターを抜き取り、中をきれいに拭き掃除。その間に、エンジンオイルは8割がた(?)抜けたので、フロントブレーキを握って車体を揺らしオイルを完全に抜く。風が強い日だったので、揺らしていると下にある廃油ポイに落ちず、地面にオイル染みを作ってしまった。風が強い日はオイル交換は避けたほうがいいのかもしれない。
車体やフィルター内についた汚れたオイルをウエスで拭き、新しいオイルフィルターに交換。あとは逆の手順で組み立てつけて、新しいオイルを注入する。モチュールはフタを開けるとノズルが出てくるので、オイルジョッキを使わなくてもオイルを入れることができるのが嬉しい。
「エンジンオイルを少なめに入れ、1度エンジンを始動して点検窓で量を確認しながら適正量にする」とメンテナンスの本には書いてあるのだが、ジェベルはサイドスタンドしかないので1人では確認できず、弟に支えてもらう。適正量を入れてフィラーキャップを締めて作業は終了。意外に簡単にできることがわかり、次回からも自分でやろうと思った。
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今回初めてメガネレンチに裏表があると初めて知る。ドレンボルトの回転方向を確認するため地面にへばりつくことに、始めは抵抗があった(苦笑) |
廃油ポイではなく、ゴミ袋やティッシュの箱に細かく裂いた新聞紙を敷き詰めて代用することも可能らしい。風の強い日だったのでオイルが真下に落ちず地面にオイル染みが…… |
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オイルフィルターの位置は「OIL FILTER」と書いてあるので迷わず発見。しかしネジは一度に15度程度しか回せず、すごく時間がかかった |
パッキンをチェック。まだ痛んでいないので交換はしなくてよいとのこと。汚れたオイルを拭き取ってから、取り付ける前にパッキンに新しいオイルを塗ってなじませるらしい |
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新品のオイルフィルターと並べてみると汚れていることが一目瞭然。カートリッジタイプなので付け替えが簡単。特殊な工具を使わなくて外すことができるのが嬉しい |
車体を揺らして汚れたオイルを完全に抜いていく。車体を起こしたときにオイルが落ちる位置は若干ずれるので廃油受けをずらさなくてはいけない |
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キャップを引き出すとノズルが出てくるモチュールのボトルは便利。ジェベルのオイル容量は0.85リットルなので1リットルボトルがちょうどいい |
点検窓からオイル量を確認。車体をまっすぐにした状態でのぞき込むことができなかった。1人で確認する方法を考えなくては…… |
メンテナンス本によると、エアクリーナーの清掃は「3000キロ走行ごとか6ヶ月ごと」らしい。しかし私のジェベルは走行距離6540キロで、まだ1度も清掃していなかった。この期に一緒にやってしまうことにしたが、洗浄クリーナーやエアフィルターオイルは持っていなかったので弟からわけてもらった。風が強くめちゃ寒かったのでエアクリーナーの清掃を家の中でやったのだが、家中がオイル臭くなってしまった。空気を入れ換えながら作業すると室内でも屋外でも寒さは変わらず、次回は屋外でやろうと反省。
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サイドカバーをとシートを外してエアクリーナーボックスのフタを外し、ネジで留められているエアクリーナーを取り外す。ただのスポンジに見える |
説明書には灯油で洗浄するか書いてあったが、「専用クリーナーのほうかいいよ」と言われ、クリーナーをわけてもらった |
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バットに入れてもみ洗い。本当ならビニール手袋があったほうがいいらしいが、買い忘れたので素手で洗う。もうこの段階になると爪も真っ黒だったので開き直っている |
洗浄剤を水で乳化させて汚れを流していく。水が透明になるまでよくすすぐ |
今回の作業で一番てこずったのはエアクリーナーをネジで再び固定することだった。ネジ穴を手探りで探すのだが、ぜんぜんネジ穴にはまらない。その次はドレンボルトを緩めることだ。しかし一度経験したので、次回からは大丈夫じゃないかと思う。本を見ながらの初めての作業だったので3時間くらいかかってしまったが、普通の人なら1時間もあればできるらしい。面倒くさいと思っていた作業も思ったよりは面倒くさくなかった。この程度の作業ならもっと早く挑戦してみてもよかったと思う。
同時に、自分は誰かに頼って今までバイクに乗ってきたのだと実感してしまった。自分のバイクを自分の手でメンテナンスしてみると、ライダーとして一人前になれたような気がしてくるのが不思議である。オイル交換後、走ってみると低速の粘りが良く、力強くなったように感じた。エンジンオイルを変えると性能がここまで変わるのか? と感激してしまった。
今回はじめてオイル交換を自分でやってみて、乗る以外にバイクをいじる楽しみがわかった気がした。以前は読み飛ばしていたメカニックの記事も読むようになり、ほかのメンテナンスにも挑戦したくなった。自分でもその変化にちょっと驚いている。私は今でもよく立ちゴケをしてレバーを折ってしまうので、次回はレバー交換に挑戦してみたい。
加藤真貴子(WINDY Co.)
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