【コラム】

クレバーなモーターライフ

23 さよならキャブレター? - 2007年 二輪排ガス規制

    西尾淳  [2007/01/10]

    2007年。バイクの排ガス規制が強化されるのは知っているだろうか? これがかなり厳しいもので、車種ラインナップの整理や、車両価格が上がる可能性が高いのだ。さらにキャブレターがなくなるかもしれない。インジェクション化だ。新しい二輪の排出ガス規制「2007年規制」を調べてみた。

    世界でもっとも厳しい2007年規制

    今回テーマにするのは新しい二輪の排出ガス規制について。正式には「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年7月15日国土交通省告示第619号)等の一部改正」 というもので、規制名称も開始が複数年にわたるため、それぞれ「平成18年規制」「平成19年規制」「平成20年規制」ということになるのだが、たいへん呼びづらい。ここではまとめて「2007年規制」と呼ぶことにする。

    それ以前に施行された大きな二輪の排出ガス規制としては「平成10・11年規制」がある。このときにホンダNSRなどの2ストロークスポーツバイクがほとんど姿を消してしまった。今回の2007年規制はそれよりはるかに厳しいものだ。

    2007年規制のきっかけになった環境省・中央環境審議会の六次答申を見ると、HC(炭化水素)が主な狙いらしいが、CO(一酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)も当然厳しくなっている。これは欧州などの規制値を超えて、世界でもっとも厳しいレベルの規制なのだという。

    規制値は下の表にまとめた。HCは2.0g/kmから0.3g/kmへと85%減(125cc以上)、COは13g/kmから2g/kmへと、これも85%減の規制値になっている。ちなみに「新車規制」は車両認定時にクリアすべき規制で、ユーザーがかかわることはあまりない。「使用過程車両規制」というのは車検時にクリアすべきもの。

    2007年規制の開始も表にまとめたが、原付(50cc以下)や250ccクラスの新型車はすでにスタートしている。大型車は2007年から。それぞれ継続生産車は1年弱の猶予があるとはいえ、販売されるモデルがすべて2007年規制対応になるのもそれほど遠いことではない。

    ちなみに、すでに販売されている車両や、現在乗っているバイクがいきなり乗れなくなるということはない。その車両が発売されていたときの規制をクリアしていれば車検も通る。しかし、「2007年規制以前のモデルは乗ってはいけない」というお達しが出る可能性がゼロというわけではない。

    二輪車排出ガス 2007年規制 規制値

    二輪車排出ガス 2007年規制 適用時期

    性能面よりもコストアップが問題か?

    2007年規制でバイクがどうなるのだろうか? いまのところ情報が少なく、規制をクリアしたモデルも少ないため予測の域を出ないが、いくつかのモデルが生産を終了するかもしれない。終わらないにしても、キャラクターが変わる可能性はある。

    現在、2007年規制をクリアしているのはホンダの「ゴールドウイング」「VFR」、ヤマハの「XJR1300」「VOX」といったところ。VOXを除く大型モデルはすべてインジェクション(燃料噴射)+三元触媒を使用している。VOXは50ccのスクーターだが、ヤマハの50ccとしては初めてインジェクションを採用した。スズキ、カワサキにも問い合わせたが、「現在はまだ発表していないが、対応を進めている段階」とのことだった。

    ここから読み取れるのは、2007年規制をクリアするのにはインジェクションによる正確な燃焼コントロールが必須になるということ。つまり、キャブレターはその役目を終える可能性もある。

    「バイクはつまらなくなる?」と思うかもしれないが、それほどではないはずだ。「ドライバビリティは下がらないように開発を行なっています」(ホンダ広報)というように、それほど単純なものではないが、ヤマハのXJR1300も、対応前後で最高出力は変わっていない。その点ではメーカーを信じていいだろう。

    しかしどのメーカーも2007年規制は「バイクにとってかなり厳しい」ものだと語っていた。それはパワー面ではなく、コストに現れている。XJR1300は規制前の96.3万円から103万円へ、VFRは105万円から112万円へ値段が上がった。VOXは20万円と、原付スクーターにしては少々高めだ(いずれも消費税を別にした希望小売価格)。もちろん新しいサスペンションやABSといった装備も強化されているので、価格上昇がすべて排ガス対策のためではないが、コストアップがゼロとは考えにくい。

    また、設計の古いエンジンは2007年規制をクリアできず、生産終了になるのではないかという懸念もある。メーカーの発表を待つしかないが、ヤマハのSRのように30年近く生産されているモデルが生き延びることもある。「長く愛されてきた火を消してはいけないと思っています」(ヤマハ広報)というコメントは実に頼もしかった。

    もうひとつ打撃が大きいのは、主に吸排気系アフターパーツだろう。触媒付きのアフターパーツマフラーは一般化しているが、更なる能力向上を始め、規制をクリアするためにかなりの努力が必要になるはずだ。大手マフラーメーカーのヨシムラも2007年規制についてはまだ開発中だが、「マフラーを止めるつもりはありません」ということなので、期待して待ちたいと思う。

    クルマの世界では、こういった度重なる排出ガス規制を乗り越えてきた。チューニングパーツもそれを前提に作られているほどだ。全体で見ればバイクの排出ガスは少ないが、すでにお目こぼしを受ける立場にはない。慌てず騒がず、2007年規制を受け入れてほしいと思う。

    ホンダ ゴールドウイング。スペック表を見ると「平成13年規制に適合」とあるが、2007年規制値もクリアしているとのこと

    ホンダVFR。「HECS3」と呼ばれる排出ガス浄化装置を搭載している。最新モデルではABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を標準装備

    VFRに使われている触媒「300セルキャタライザー」。これとPGM-FI、排気ガス再燃焼システムの組み合わせで排出ガスを浄化

    ヤマハXJR1300。基本設計が古い「空冷マルチはツライのではないか?」という噂を裏切って2007年規制にいちはやく対応

    ヤマハVOX。インジェクションの採用だけでなく、燃焼効率の高い3バルブ(吸気2、排気1)SOHC単気筒エンジンを採用

    「第18回 セカンドバイク」の補足

    バックナンバーについて少々補足を。本連載の第18回「セカンドバイクを手に入れよう! 」で、「選ぶべきモデルがとても少ない」と書いた。しかしこれは国内生産モデルに限定した話であって、逆輸入まで考えれば嘆くほどではないのかもしれない。

    現在、日本の各メーカーは125cc以下の小型バイクの生産拠点を東南アジアに移しているが、該当記事ではその件に触れていなかった。これら小排気量車ではスクーターが多いのは当然としても、ホンダのCB125F、CBR125や、スズキのGN125といったスポーツ(ギヤ付き)バイクを始め、業界では「タイバイク」と呼ばれるスクーターとスポーツバイクの中間のようなモデルがたくさん日本に逆輸入されている。というわけで、原付二種はその姿を変えながら新しい世界を広げつつある、としておきたい。

    西尾淳(WINDY Co.)

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