【コラム】
交通事故には誰しもが巻き込まれたくないもの。でも巻き込まれてしまった以上、重要になるのが、どちらが加害者でどちらが被害者かを決める過失割合だ。自動車保険に加入していれば、ケガをした場合の治療費はもちろん、事故で壊れてしまったクルマやバイクの修理費用もこの過失割合に応じて支払われる。しかし、当事者同士の主張が食い違って時間だけが過ぎてしまうということも多い。しかし、そういった事態を収拾するのに有効な第三者の視点で事故を記録できる装置がある。それが「ドライブレコーダー」だ。
国土交通省の交通事故統計情報ページによれば、平成16年の交通事故件数は約94万件。同ページでは平成12年以降のデータが掲載されている。事故死者数は減っているが、事故そのものの件数は毎年着実に増え続けている。安全に気をつけ、事故を未然に防いだほうがいいのはいうまでもないが、起きてしまった事故はなるべくスムーズに処理したいものだ。
とはいっても実際の事故に遭った人ならわかると思うが、自分の証言と相手の証言が食い違っている場合、第三の目撃者がいない限り、どちらが悪いのかを決める手だてになるのは状況証拠しかない。しかし、状況証拠だけではどちらに非があったかまでを客観的に判断できない場合も多い。例え自分は悪くないと言い張ったところで、相手が非を認めなければどちらかが妥協するまで決着がつかないということになってしまう。
また、警察では物損事故や人身事故などの認定や、どちらが加害者でどちらが被害者かの認定まではするが、その後の保険の決め手となる過失割合を決めるのはあくまで保険会社だ。その場合には警察の判定は参考にしかならず、実際の過失割合を決めるのは過去の判例ということになる。
飛行機ではフライトレコーダーという機体の状態や通信内容までを随時記録し、事故時の原因究明に役立てる装置が装備されている。その自動車版がドライブレコーダーだ。一般的にはフロントウィンドウの内側に設置し、広角レンズで撮影した映像をコンパクトフラッシュカードに記録する。ただし、記録するのは静止画ではなく動画のため、常時記録しているとすぐにCFの容量がいっぱいになってしまう。
そこで、数10秒の映像を常にバッファーに蓄えておき、事故の衝撃や急ハンドル、急ブレーキなどをきっかけとして、事故の瞬間の前後20~30秒程度の映像をCFカードに記録する方法が採用されている。また記録はマニュアル操作でも可能で、スイッチを押した瞬間の前後20~30秒程度を記録することも可能だ。つまり目の前で事故を目撃した直後にスイッチを押せば、10~20秒程度遡って事故の瞬間を記録することができる。
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ホリバアイテックのドライブレコーダー「どら猫」で撮影された事故時の状況。事故の日付やGPSによる緯度経度、走行速度、内蔵Gセンサーで測定された衝撃までもが記録されている |
左画面の画像をクリックすると動画が再生される。右上にはウインカーやブレーキなどの情報も表示可能だ。事故の映像はこれから事故が起きるとわかっていても非常に衝撃的 |
ドライブレコーダーというと、一般ユーザー向けというよりは、タクシーや運送会社など自動車を使う企業向けという印象が強いが、ホリバアイテックの「どら猫」や、ドライブ・カメラの「Witness」など、個人ニューザーを対象とした製品も登場している。
ドライブレコーダーはいざというときの保険だが、一度購入すればランニングコストはかからないとはいえ、市場価格は5万円程度と安くない。気になる効果だが、映像はデジタルデータで記録されているため、厳密な意味での証拠能力はないという。ただし、タクシーなどでの採用で警察への認知も進んでいるようで、記録データを警察に提出することで過失割合に影響を与えることも多く、なにより事故処理そのものが早くなるというメリットもあるという。
気になる販売台数だが、市販用ドライブレコーダー「どら猫」を販売するホリバアイテックでは、これまでの販売累計がおよそ2万台と、まだまだ普及しているとは言い難い。しかし、タクシー会社などで既に正式採用されているほか、自動車関連イベントではドライブレコーダーのコーナーが設けられていたり、クルマへの標準装備としてドライブレコーダーを検討している自動車メーカーもあるなど、普及へ向けて進んでいるようだ。
実は今回、ドライブレコーダーで事故の瞬間を撮影した映像を預かったのだが、著作権や個人情報の関係で残念ながらここには掲載できなかった。ただ、テレビで同様の映像を特集したこともあるようなので、目にしたことのある人もいると思う。それは、明日からもっとゆっくり走ろうと思うほど衝撃的な映像だった。路地から飛び出してくる自転車がボンネットに跳ね上げられるシーン、交差点に遅れて入るクルマとスタートのいいバイクの事故、車線をまたいではみ出してくるクルマとの衝突など、事故の瞬間を見事に映し出していた。第三者の目で捉えられた映像には驚くほど説得力がある。可能なことなら、ドライブレコーダーが必須になるような状況は避けたいと思うのだが……。
平雅彦(WINDY Co.)
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