【コラム】

クレバーなモーターライフ

8 あなたのバイクは狙われている

    西尾淳  [2006/08/29]

    開放感のためか、暑さがつのってイライラするのか、夏はバイク盗難の季節でもある。バイク盗難はなんと年間12万件以上も発生しているという(2004年)。この盗難からバイクを守る手はないものだろうか? 今回はバイクの盗難についてまとめてみることにした。また、大手バイク用品店「ナップス」にもアドバイスをいただいた。

    コゾーのしわざか? プロの仕事か?

    バイクの盗難は大きくふたつに分けられる。ひとつは素行の悪い若者、ここではコゾーと呼ぼう、が自分の足代わりや、衝動的にバイクを盗んでいく場合。もうひとつは盗難車両を売りさばき、金儲けのために行うもの。つまり窃盗のプロによるものだ。一部に廃品業者を装い、「中古のバイク買い取ります」などスピーカーで流しつつその地域を見て回り、スキがあれば駐車してあるバイクを持っていくというケースもあるようだが、これもプロの一種とみていいだろう。

    コゾーの狙うバイクは原付(50cc)からせいぜい400ccまで。まれに大型を狙うこともあるが、やはり気軽に乗れる小型のバイクが多いようだ。数時間から数日乗り回し、ガソリンが切れるとそのあたりに乗り捨てられることが多い。高価なパーツは取り外して自分で使うか、オークションで売りさばくなんてこともあるという。

    プロの窃盗団が狙うのは、以前は東南アジア向けのカブが多かった。しかし現在はもっとお金になる大型バイクが中心。ハーレー・ダビドソンやBMWといった輸入車がその筆頭だ。「最近では250ccクラスのスクーターの盗難がものすごく増えています。人気が高いので売りさばきやすいということでしょうね」(ナップス、以下同)

    コゾーには盗む気を起させないこと

    まずはコゾー相手の対策を考えてみよう。もっとも危険なのはハンドルロックのみ施錠している場合。最低限の駐車方法だが、その気になったらハンドルロックなんて無いも同じ。最近のバイクは多少丈夫になっているとはいえ、ハンドルロックだけでは盗まれても文句は言えないと思った方がよい。

    左はメインキーシリンダーと一体になった一般的なハンドルロック。外車や旧車の一部には別の位置にハンドルロックがある(左)

    次はU字ロックやチェーンロックなどで施錠を行うパターン。かなり有効だが、安モノのロックは大型のワイヤーカッターで簡単に切れてしまう。太くて頑丈なものほど有効だが、そのぶん重くなり、持ち運びが不便になるのが難点。「丈夫さという点ではキタコさんの「スチールリンクロック」の人気が高いです。高価ですが(メーカー希望小売価格:186,900円!)、自宅用としては最強でしょう」。

    ブレーキディスクに取りつけるディスクロックは小型軽量というだけでなく、チェーンやバー部分がほとんどないためカッターを差し込むすき間がないのがメリット。できれば複数のロックを使い、地面に埋めこまれたパイプなど、移動できないものにバイクをつなぐのが基本だ。

    U字ロック。純正品ではシート下にきれいに収まるものもある。これは斉工舎の「WXA-6」(右)と「WXA-7」

    頑丈なチェーンロック。写真は斉工舎ゴジラシリーズの「スチールリンクロック27」

    車体が揺れたりショックを感じたりすると警笛を鳴らすアラームも増えている。小型軽量なので持ち運びがラクなのもいい。またアラーム機能を備えたU字ロックやディスクロックも登場している。「盗もうとするヤツは、まずバイクを蹴っ飛ばしてアラームが鳴ったら退散、鳴らなかったら鍵を壊すんです」ということだから、アラームも効果はありそうだ。

    イモビライザーを搭載したバイクも増えている。これは異常を察知したら車体の電源をカットしてエンジンをかからないようにするといったシステム。各部への配線が必須なので、メーカーオプションとして新車時から搭載することが多い。「当店で人気の高いアラームは「スパイボール」ですね。シートの下などに取り付けるので外から切断できませんし、リモコンも付いていますから、バイクから離れたところにいても異常を知ることができます」。

    アラーム機能付のディスクロック「XENA(ゼナ)」。非常に種類が多いが、これは新しい「XN18」

    コンパクトなディスクロック。斉工舎の「DLX-14」

    意外に使われていないのがバイクカバー。頑丈なロックをしているのに、バイクはむき出しというのもよく見かける。カバーをかけておけば車種はわからないし、素通りされる可能性も高くなる。「バイクカバーが少ないのは手間がかかるということだと思いますが、防犯のためにはぜひ使ってください。難燃性のものがお勧めです」。

    結局のところ、窃盗コゾー対策は「盗む気にさせない」ということに尽きる。「アラームやカバーもそうですが、「私は防犯に気を使っています」とアピールすることが大切なのです。だからロックもできるだけ派手な色にするとか、そういった部分にも気を配って下さい」。

    バイクカバーは雨に濡れないだけでなく、盗難からもバイクを守ってくれる

    カバーをかけたらチェーンロックなどで固定する。慣れてしまえば面倒ではない

    窃盗のプロに対抗できるか?

    では、プロの窃盗についてはどうだろうか。バイク窃盗のプロは行き当りばったりの仕事はしない。事前にリサーチして、オーナーのいないスキを狙ってバイクを持ち去る。音が聞こえづらい雨の日の盗難も多いという。いくら頑丈なチェーンロックを使っていても、クレーンを使ってバイクを丸ごとトラックに積み込むので、地面につないでおかなければ意味はない。つないであっても、窃盗団はチェーンカッターを装備していたりするのだが。

    昼間堂々とバイクを持ち出すケースもある。オーナーのいないときに家にやってきて、「もうバイクに乗らないから引き取ってくれと言われました」と、親に合鍵をもらって運び出したという、笑い話のような本当の話もある。そのほか、何度もアラームを鳴らして誤作動に見せかけ、近所迷惑を気にしたオーナーにアラームを切らせるなど、実に窃盗団はアタマがいい。あらゆる方法を考えてバイクを盗もうとする。

    プロの窃盗団に狙われたら、それを防ぐ手はまずないと考えていいだろう。ロックはもちろん、アラームが仕掛けてあっても盗んでいく。最後の方法は、自宅の中かガレージにバイクを入れてしまうことだ。オープンな車庫は別として、ちゃんと鍵のかかるガレージから盗まれたという話はあまり耳にしない。幸い駐車場に設置できるバイク用のガレージも販売されている。お金をかけた本当に大切なバイクなら、高価だがバイク用のガレージも検討すべきかもしれない。

    バイク専用のガレージ。バイク用では「SHELLO(シェロー)」が有名。これはレンタル用だが個人でも購入できる

    盗難後に役立つココセコムと盗難保険

    盗まれてしまったとしても、対抗手段がないわけではない。「ココセコム」はGPSと携帯電話の基地局を利用し、バイクなどの位置を特定するセコムのサービスだ。バイク専用ではないが、ライダーの間では非常に有名だ。盗まれても連絡すれば位置を教えてくれるし、場合によってはセコムのスタッフが急行し、車両を保全してくれる。GPSや携帯電話の使えない場所に持ち込まれた場合は位置が確認できなくなるので過信は禁物だが、有効なサービスであることは間違いない。

    盗難保険はどうだろうか。一般の自動車保険ではバイクの盗難保険は扱ってくれないか、可能だとしても新車から1年の間だけ。しかし中古車でも加入できるバイク盗難専門の保険もいくつか存在する。パーツ盗難や鍵穴を壊された場合などの補償もあってありがたい。保険料が高めだが、盗難の多いバイクでは仕方がないだろう。補償されない場合などもいろいろあるので、加入する前に規則などを十分検討してほしい。

    また、当たり前のことだが、通報やココセコムで車両が見つかると、盗難補償が受けられなくなることも頭に入れておきたい。盗まれたバイクが見つかる場合、だいたいはパーツが取られていたり、ボロボロになった状態で発見される。先のようにパーツ盗難補償があればいいが(それでも上限があるので注意)、修理については補償外になることもあるのだ。

    ココセコムの本体。これはバッテリーで駆動するタイプだが、車体から電源を取るタイプもある

    今回は触れていないが、クルマの盗難も年間数万件も発生している。クルマの場合はチェーンロックで縛りつけておくわけにもいかないから、アラームやイモビライザーしか対抗手段はない。もしくはココセコムや盗難保険などの盗難後のフォローを考えるのもいいだろう。

    どこかで読んだが、究極の盗難対策は不人気車に乗ることだという。正しいかもしれないが、なんとなく淋しいではないか。どんどん治安の悪くなる日本。盗難を前提にモーターライフを考える時代になったということなのだろう。

    西尾 淳(WINDY Co.)

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