【コラム】
梅雨も明けて、バイクシーズンがやってきた。今回はよりツーリングが楽しくなるイベントやプランを考えてみたいと思う。ツーリングの楽しみ方は人それぞれだけど、普通に観光地を回ってくるだけではもったいない。ひとつ工夫してみてはどうだろうか?
バイクのツーリングがクルマや電車の旅行ともっとも違う点は、走る過程そのものが旅として蓄積されやすいということだろう。ライダーは体で感じた情報を元に常時バイクに対して何らかの操作をしていることもあり、漫然と走りるということが少ない。1km、10km、100kmと走るごとに「ここまで来たんだ」と実感できる。簡単にいえば汗をかきながら走っているということ。だからその先にある目的地も、いつも同じ姿の観光地より、イベントなどで盛り上がれるほうがバイクに似合う。
最近は地方で行われる音楽祭が増えていて、「夏フェス」などとも呼ばれている。これにバイクでいくのも楽しいが、音楽は人によって好き嫌いが激しいもの。日本の夏のイベントといえば、やっぱり花火大会。今回は地方で行われる有名な花火大会やお祭りをチェックしてみた。
筆者(東京在住)は以前ネットを見ていて「秋田県男鹿半島花火大会」が妙に気に入り、そのまま出かけてしまったことがある。なまはげや半島という先っぽ感にも惹かれたのだと思う。ちょうど無職だったこともあり、一週間後の花火大会に間に合えばいいと、東京から下道を使って東北をゆっくり楽しみつつ北上したことを憶えている。
花火大会は全国で数多く催されているが、なかでも一度見てみたいのは「諏訪湖祭湖上花火大会」だ。毎年8月15日に行われ、今年で58回目を迎える。今年は39セット、40,000発が打ち上げられるという。この花火の魅力は、湖上で打ち上げられること。湖畔公園の前にある初島と、湖面上に設置された特設打ち上げ台を使うのだが、この初島は、花火の打ち上げ場として作られた人工の浮島だというから驚く。諏訪湖は回りが山に囲まれているので、花火の音が周囲の山に反射して、他では味わえない迫力になる。水上大スターマインやフィナーレの大ナイアガラ瀑布、スターマイン連発など見所が満載だ。
諏訪湖の花火はこの1日だけではない。8月1日~9月3日(※8/15・9/2を除く)は、「サマーナイトファイヤーフェスティバル」 と名づけられ、毎晩花火が打ち上げられる。毎晩開催されているので、自分のツーリングの日程に合わせて花火が見られるのも魅力だ。諏訪湖祭湖上花火大会ほど大規模でないが、9月2日に行われる「全国新作花火競技会」 は、花火師たちの技術とセンスが競われる、従来の枠にとらわれない芸術性の高い大会になっている。
本州の西端、関門海峡をはさんだ北九州市門司区と山口県下関市の両都市共同で行なわれる「関門海峡花火大会」も見応えがありそう。海峡の両岸で同時に開催される花火大会は、世界でもあまり例がない。見所は門司側で1尺玉100連発、下関側で1尺5寸の大玉が打ち上げられること。海岸沿いならどこでも見られるのもいい。
もうひとつ、新潟県長岡市の「長岡まつり大花火大会」は、例年どおり2日間の開催だが(8月2~3日)、今年は市政100年の「世界の花火ショー」が8月4日に行われるため、実質3日間の開催になる。長岡まつり大花火大会の主役は、名物の3尺玉が1日2発、計4発打ち上げられる。昨年に続いて打ち上げられる復興祈願花火「フェニックス」は世界一の花火を目指したというから楽しみ。
日本の夏には、祭という熱いイベントがあるのも忘れてはいけない。日本の祭の中でも、青森の「ねぶた祭」は、バイク乗りにも人気のイベントだ。7月から北海道に上陸しているバイク乗りも、ねぶた祭のためにわざわざ海を渡って参加し、終わるとまた北海道へ戻っていくという。
ねぶた祭開催中は、臨時のサマーキャンプ場が設置され、クルマの駐車はできないが自転車とバイクの駐車場があり、申し込み不要、無料で利用できるのがうれしい。キャンプ道具を持ってねぶた祭に参加するというのは、一夏のビックイベントになるのは間違いない。ハネト(ねぶたの衣装)はレンタルも可能。これさえあれば、登録や受付もなく誰でも参加できる。
その他、長い歴史と伝統を誇る「仙台七夕まつり」や、4日間、徹夜で踊り続け日本三大盆踊りのひとつに数えられる「郡上おどり」 もおもしろそうだ。
ツーリングプランにイベントを織り込む場合の注意点は、多くの人出が予想されるため、まず間違いなく交通規制が行われること。早めに着いてバイクを安全な場所に止めておくか、一駅くらい離れた場所にバイクを停めて、電車や歩いて現地まで行くようにしたい。いくらバイクの機動性が優れているといっても、大勢の人がいるところにバイクで乗り入れるのは迷惑。周りの人への心配りを忘れないように。
花火や祭りなど、既存のイベントをツーリングに組み込むのが基本だが、実は、自分オリジナルのイベントを作り上げてしまうのが達人のツーリングなのだ。かといって「花火大会を主催しろ」という話ではない。例えば好きな映画のロケ地を訪れる、自分でルールを作って走る、思い立ったらいきなり出かけるなど、自分を中心に据えたツーリングを考えるのだ。
テレビや映画のロケ地は、インターネット上で公開されていることもある。2004年に公開された『いま、会いにゆきます』のロケ地は山梨県が多く使われ、八ヶ岳や塩山のツーリングの際に立ち寄ることができる。山梨県北杜市明野町のひまわり畑は7月下旬から8月が見頃なので、この季節、これをメインの目的地にしてもいいほどだ。童心に返り、大分県佐伯市宇目町南田原轟にある「トトロのバス停」に立ち寄るなんてのもいい。
自分でルールを作って走るなら、できるだけくだらないルールが楽しい。例えば「同じ道は走らない」「左折しかしない」「1日3回以上違った温泉に入る」「現地の人と必ず話す」「地図を見るのは5回まで」などの制約を付けてみたらどうだろうか。プランも難しいが、困難なほど面白い。本人以外わからないが、走り終わったときの達成感は実に気持ちのいいものだ。
「月がキレイに出ているので明日は晴れるはず。朝日でも見に行くか」などと、急に思いたって出かけるのも立派なツーリング。「ガソリンがなくなるまで走って、なくなったら給油して引き返す」というお馬鹿なツーリングも好きだ。予定を立てない「行き当たりばったりツーリング」は一度は試してほしい。思い出深いツーリングになるはずだ。走っていて面白そうな情報を手に入れたら進路を変更するのがこれの醍醐味。もちろんある程度の日数は必要だが、社会人でも夏休みならなんとか取れるのではないだろうか?
バイクは走っているだけで楽しいもの。観光地を見て帰るだけでも十分に楽しめるが、行き当たりばったりツーリングは、思いがけない発見や出会いがある。そのほうがより思い出深いモノになることが多い。実は、こういったお馬鹿なことは若者の特権でもなんでもなく、心に余裕がある人の特権なのだ。胸を張ってお馬鹿なツーリングに出かけよう。一夏の武勇伝ができるかもしれない。
加藤真貴子(WINDY Co.)
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