【コラム】

クレバーなモーターライフ

4 安全なヘルメットはバイクの世界を広げる

    西尾淳  [2006/07/18]

    街を走り抜けるバイクは見ているだけで楽しそうだ。しかし気になることがないわけではない。それは「ヘルメット」。バイクにおけるヘルメットは、クルマのシートベルトと同じか、それ以上に重要なモノ。しかしそのヘルメットが妙に安っぽいお椀型や、中には明らかにバイク用ではない自転車用や工事現場用をかぶっている人もいる。今回はこのヘルメットについて考えてみたいと思う。

    形状からみるヘルメット

    まずはヘルメットの種類から。図1にまとめたように、ヘルメットは「フルフェイス型」「ジェット型」「お椀型」に大別できる。フルフェイスは顎の部分まで被われたタイプで、ジェット型は顔面は開いているが、耳や首筋までカバーするタイプ。そしてお椀型は、まさに大きなお椀をひっくり返したような形状で、耳や首筋はカバーされない。

    言うまでもなく、もっとも安全性の高いのは頭の全てを覆うフルフェイス型。ただ見た目の暑苦しさのためか(実は換気性はもっとも高いのだが)、街中では比較的少ないように思う。図1の下のタイプはオフロード用のフルフェイス型だ。

    ジェット型は、ジェット機のパイロットが使用するヘルメットに似ているところからこの名が来ている。ジェット型にもいくつかあって、図1の下のものは(株)アライヘルメットの「SZ」というモデル。これはフルフェイスと同じ思想で作られていて、頬の部分まできっちりカバーされている。そのためメーカーでは「オープンフェイス型」と呼び、他のジェット型とは区別している。

    そして見るからに危なそうなお椀型。球を半分に切ったような形状のため「ハーフ型」と呼ばれることもある。後ろが少し長くなっている「スリークオーター型」などもJISに規定されているが、ジェット型に比べて覆う範囲はずいぶん少ない。

    図1:形状によるヘルメットの分類。見ただけでとりあえずの安全性が分かる

    図2:般的なヘルメットなら、縁や内側にこれらのマークが貼られているはず

    ヘルメットの規格はいくつもある

    もうひとつ重要なのが、どういった規格を取得しているかだ。図2の「PSC」マークは消費者生活用製品安全法、「SG」マークは製品安全協会による認定といった違いはあるが、このふたつはセットになっていると考えていいだろう。実際、「PSC-SG」のようにまとめて表記されることも多い。バイク用ヘルメットとして使うには、このPSC-SGマークが付いていることが必須だ。

    残念ながら、バイク用品店でもPSC-SGマークのないヘルメットを販売していることがある。たいていは「装飾用」としているのだが、バイク用品店に並んでいれば普通は乗用と考えてしまうわけで、よく知らないライダーは飾り物をアタマに乗せて走ることになる。そういったヘルメット(らしきもの)を見かけたら、その店は信用しないほうがいいだろう。

    バイク用(乗車用)ヘルメットには、PSC-SGの上に任意規格がある。日本の「JIS 2000」(JIS T8133)、さらに世界でもっとも厳しいといわれる「スネル規格」(SNELL M2000)だ。この違いは図3のように、どれだけ厳しいテストに耐えられるかということ。つまり「PSC-SG」→「JIS 2000」→「スネル」の順に安全性が高いことになる。

    またJISやPSC-SGには、125cc以下のバイクに限定したものと無制限の2種類があり、テストの内容も異なっている。テストの一例を図3にまとめたが、耐えられる衝撃は数倍にもなる計算だ。お椀型のヘルメットは、ほとんどが125cc以下用として作られている。

    間違えやすいのは、法規的にお椀型ヘルメットで中型以上(126cc以上)のバイクに乗ってよいかどうか。道路交通法第七十一条の四には、「乗車用ヘルメットをかぶらないで運転、または乗車させてはならない」といったことは書かれているが、ヘルメットの規格までは指定されていない。JISやPSC-SGはあくまで製造者に向けたものなのだ。

    だから125cc以下用のヘルメットをかぶって大型バイクに乗っていても、原則的には取り締まり対象にならないはず。このあたりは現場の判断があるので断言できないが、筆者は少なくともヘルメットの規格で捕まったという話はいままで聞いたことがない。ただ、ヘルメットのアゴ紐を締めないでいると、ヘルメットをかぶっていないと見なされる場合がある。

    実際のテストは一度落とすだけでなく、同じ場所に2度の衝撃を与える。他に耐貫通テストやアゴヒモの強度テストなどが行われ

    アライニュース 1994年7月 Vol.75 より転載。アライヘルメットの社長が転倒したときに実際に使用していたヘルメット

    ヘルメットはカッコ悪いのか?

    速度が上がるほど衝突エネルギーは高くなる。だからレースに参加するには厳しい規格やフルフェイス形状のヘルメットが指定される。当然だろう。ではスピードが上げられない街の中、原付スクーターならお椀型のヘルメットでいいのだろうか? いきなり開くクルマのドア、トラックに積まれた鉄パイプ、フェンスから突出した鉄ボルト、工事中の路肩に置かれたコンクリートブロック……。街の中にはサーキット以上の危険があふれているのだ。

    なぜお椀型をかぶるのかを調べてみると、「ヘルメットはカッコ悪いから」ということらしい。だから無帽に近いお椀型になるのだと。しかし、「カッコ悪い」からといって、つまらない事故で怪我をしたり最悪死んだりするのがカッコイイだろうか? 自分は絶対に事故を起さないもらわないと思っているのだろうか? それでは想像力が足りなくはないだろうか?

    「風を受けたいから」という理由ならわからないでもない。私も子供のころにはそう思っていた。しかしバイクのおもしろさを知ると、風を受けることはほんの些細な楽しみだということがわかる。むしろヘルメットがあることで運転に専念できる。集中できるから上達もする。結果としてバイクがもっと楽しくなる。バイクはもっと奥が深いものだ。

    なにがなんでもフルフェイス、とは言わない。しかし顔面をすべて覆うシールドを付けたジェット型が最低条件だと筆者は思う。何か顔面へ飛んできても、街中の速度域なら高い確率でシールドが守ってくれる。規格についてはいいほうがいいとしかいえないが、JISかスネルを選択すれば安心だろう。

    もうひとついえるのは安全で周りに迷惑をかけない、スムーズな運転を心掛けようと言うことだ。道路交通法の第一章第一条には「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り(略)」と書かれている。安全で円滑、誰も何も傷付けないことこそが大切なのだ。

    最後に、アライヘルメットが毎月バイク誌に掲載している「アライニュース」を2点掲載させていただく。この駄文よりも、よほど説得力があるに違いない。

    アライニュース 1999年9月 Vol.137。ストリートライダーへの提言
    原寸画像

    アライニュース 1996年1月 Vol.93。この記事はJIS規格が変更になる前なので現在とは多少状況が変わっているが、意図は伝わる
    原寸画像

    西尾 淳(WINDY Co.)

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