Intelプラットフォームのマザーボードにおいて、現在の主流のチップセットは言うまでも無くIntel P45 Expressだ。当然、各社からも非常に多くのバリエーションモデルが発売されている。ただ、モデル数が多いだけに、どの製品を選べば良いのか迷ってしまう面もあるわけだが、メインマシンとして組むのであれば、コスト重視で選ぶよりは、なるべく隙の無いハイエンドモデルを選ぶことをオススメしたい。

というのも、現行のIntel P45を中心としたプラットフォームは、そもそも今後しばらくはメインマシンとして力不足にはなりそうもない高性能を備えているし、次の世代までの"繋ぎ"で使いたいというのならまだしも、そうであってもメインストリームクラスのチップセットのアップデートはもう少々先になりそうな見通しがあるからだ。NehalemのIntel X58チップセットの姿が視野に入り始めてはいるものの、それもあくまでエクストリームクラスの話なのであって、Intel 4シリーズの寿命自体はまだまだ長いものになりそうなのだ。

そういった事情も考慮すれば、現時点でメインマシンを組むのであれば、第一線で長く使えるIntel P45のハイエンドモデルという選択肢が有力である。今回は、エムエスアイコンピュータージャパンのIntel P45搭載マザーボードのフラグシップ「MSI P45 Diamond」を紹介したい。

MSI「P45 Diamond」

MSI P45 Diamond

■主な仕様
メーカー MSI
製品名 P45 Diamond
フォームファクタ ATX
対応ソケット Socket 775
対応CPU Core 2 Extreme QX/X、Core 2 Quad/Duo、Pentium Dual-Core、Celeron
対応FSB 1600(OC)/1333/1066/800MHz
チップセット Intel P45 Express+ICH10R
対応メモリ PC3-16000(OC)/14400(OC)/12800(OC)/10600/8500×4スロット(最大8GB)
拡張スロット PCI Express 2.0 x16×2(x16+x8)、PCI Express x1×2、PCI×2
ストレージ SATA×6+2(RAID対応)、eSATA×2、PATA×1
ネットワーク 1000Mbps×2(Realtek RTL8111C)
オーディオ Creative Sound Blaster X-Fi HDオーディオ対応8Chオーディオチップ搭載 PCI Express x1カード付属
インタフェース USB2.0×12(×4はヘッダピン)、IEEE1394×2(×1はヘッダピン)

まずは製品仕様だが、チップセットはIntel P45+ICH10Rという構成で、基本的には以前に本連載で紹介した同社の「MSI P45 Platinum」のパワーアップ版と考えていただければ問題ないだろう。Platinumとの最大の違いはメモリで、ハイエンドの"Diamond"らしく高クロックなDDR3メモリをサポートしている。

バックパネル部。eSATAポートの右隣にあるのはCMOSクリアスイッチだ

特徴は数多いが、まず注目したいのは同社おなじみの冷却機構「Circu-Pipe」についてだ。P45 DiamondのCircu-Pipeは、もちろんそのままでも高い冷却性能を実現しているのだが、加えて市販の水冷ユニットを追加することで水冷化できる「Circu-Pipe Liquid」が搭載されている。製品パッケージには専用のアタッチメント等が同梱されているので、容易に水冷を導入できる。

水冷に対応した「Circu-Pipe Liquid」。水冷用のチューブ等も同梱する

製品パッケージの同梱物の充実で言えば、サウンドカードとして「Sound Blaster X-Fi Xtreme」が付属している点も見逃せない。PCI Express x1スロットに装着するタイプのカードで、Creative Media Source Audio Consoleソフトウェアもセットで提供される。ゲーム分野では定評のあるSound Blasterのサウンド機能なので、特にゲーマーには嬉しいだろう。

サウンド面にも力が入っており、「Sound Blaster X-Fi Xtreme」を標準添付

また、電力の消費量や効率などのリアルタイムモニタが出来る独自機能「GreenPower Center」に対応。電源のメインケーブルに経由して接続することで、より詳細なデータをGreenPower Centerからモニタできる「GreenPower Genie」も同梱されている。細かなチューニングの際など、色々と活用できそうな機能である。

電源関連をリアルタイムモニタリングできる「GreenPower Center」。細かなシステムチューニングの際にも利用価値があるだろう

こちらが「GreenPower Genie」。電源側とマザーボード側を繋ぐメインの電源ケーブルに経由して接続する

実際に「GreenPower Genie」を繋ぐとこんな感じ。これのおかげでより詳細なデータが採れるのだ

そして、P45 Diamondの特徴……というよりは、最新の高機能MSIマザーボード全般の特徴でもあるが、二つのMOSFETと制御チップを一つのパッケージにまとめた「DrMOS」を電源回路に採用していることもアドバンテージだ。電力効率の向上による省電力・低発熱化の効果も大きいが、電力供給を安定させ、システムのパフォーマンスを最大化できる利点もある。

もうおなじみかもしれないが「DrMOS」の概要

参考までに、DrMOSチップの殻割り写真

ちなみに、少し話は変わるが、MSIは次世代BIOSと目される「EFI」の導入に積極的姿勢を見せている。本誌の記事などでも関連するニュース等を掲載しているが、そのEFIを採用したMSI独自BIOSである「MSI Click BIOS」の提供が近日中に開始される見込みとなっている。今回のP45 Diamond向けにもアップデート提供がされる予定であり、これについて、現在の最新開発版を入手できたので、ついでに紹介しておこう。

最新開発版の「Click BIOS」メイン画面。近日提供予定

マウスで操作でき、メニューの対応言語も非常に多い

高機能化の恩恵で、BIOSから利用できるユーティリティも充実させることが可能に

従来よくあるBIOSメニューもグラフィカルで操作しやすく工夫される予定だ

実用的かどうかは別として、BIOS上でゲームを遊べたりもできる

安物買いはアレなのだ

さて、「MSI P45 Diamond」。ここまででクローズアップしなかった機能もまだまだ盛りだくさんで、マザーボード上のジャンパピンでFSBを制御できる「OC Jumper」、フロントパネルのスイッチ類などをスマートに接続できる「M-Connector」、キャパシタに耐久性とノイズ低減に優れた「Hi-C CAP」の採用、メモリとノースブリッジ用電源回路の2フェーズ化……などなど、およそMSIマザーボードの特徴として知られるポイントはほとんど網羅している。

CPUソケット周りの「Hi-C CAP」(写真左)やオンボードの電源スイッチ類(写真右)などなど、とにかくフル機能なのだ

このマザーボードで一度システムを組んでしまえば、用途の変化に応じて多少のパーツ交換などは必要になるかもしれないが、大きくは手を加えることなく、少なくとも次世代の後継プラットフォームが登場してくる時期までは、最前線のメインマシンとして活躍してくれることだろう。Intel 4シリーズ搭載マザーボードの"決定版"たりえる一枚として、末永い付き合いが期待できる製品だ。

「MSI P45 Diamond」の製品パッケージ