古本屋で希少本を発見する「背取り」

本業をやりながら、ネットの世界で別収入を狙うのに最も効果的な手段は、安く仕入れたものをヤフオクなどのオークションサイトで高く売ることだと思います。

例えば、最も有名なものに「背取り」という方法があります。古本屋の100円均一コーナーなどに並んでいる格安本のなかから、本当は価値の高いものを探し出して、ネットオークションに出品して差額を稼ぐのです。例えば、ブックオフなどは、本の出版時期や状態、定価などを基準に機械的に買い取り価格を決めています。ですから、希少本にも高い値段をつけずに買い取り、そのまま安く売ってしまうケースがあるのです。希少本は、文学作品の初版本だけではなく、写真集、専門書、統計類といった様々な分野に広がっています。古本屋の書棚に並んでいる本の背表紙をみて、価値の高いものを取り出す。だから「背取り」と言うのです。

10年前くらいまでは、背取りは、希少本の相場をある程度知っていれば、確実に儲けられるサイドビジネスでした。私の知人にも、背取り専門で生活してくために、脱サラしてしまった人もいます。ただ、最近は背取りをする人が増えたのと、古本屋さんに知恵がついてきてしまったので、ブックオフも含めて、古本屋で激安本をみつけるのは、難しくなってきたそうです。ただ、地方の古本屋を回ると、まだまだお宝を発見することはできるそうです。

首都圏の古いおもちゃ屋さんを片端から回って古いミニカーを購入

この「背取り」と同じようなことを、他の分野でもやることができます。例えば、私がコレクションをしているミニカーでご説明しましょう。もう40年以上前になりますが、私は大学生になったとき、ミニカーコレクションを本格的に再開しました。ただ、自由になる時間は増えたものの、学生ですから、ミニカーの購入資金には限界があります。そこで、私は友人と一緒に首都圏の古いおもちゃ屋さんを片端から回ったのです。そこで、古いミニカーの在庫をみつけると、根こそぎ買って帰り、自分のコレクションに残す1台をキープして、残りをミニカー専門店に売却したり、委託販売に出したりしました。うまく行くと200円で買ったミニカーが、3000円くらいにもなりました。もちろん、いまは少子化や商店街の衰退で、街のおもちゃ屋さんが消えかかっていますので、まったく同じことはできません。ただ、同じようなことは、いまでも十分可能です。

例えば、以前、私は、ある雑誌の企画で、海外のミニカーを仕入れて、国内のネットオークションで売るという実験をやりました。同じミニカーでも、日本と欧米では嗜好が違います。しかし海外製のミニカーのなかで、日本で人気のある車種だけを輸入するのが困難な場合があります。小売店向けの出荷がアソートになっていて、特定の車種だけを選んで仕入れられない場合などです。

そこで私は、ご主人の転勤でアメリカに住むことになった友人の女性にメールを出して、日本で値段が高くなりそうなミニカーだけを指示して、小売店で買ってきてもらいました。友人には購入総額の30%の手数料を支払い、郵送料や関税を支払った後でも、それらの商品をネットオークションで売り出すと、十分な利益を出すことができました。

目利きの力を鍛えれば、あらゆる方法で仕入れができるように

もちろん、海外から闇雲に仕入れればよいということではなく、どのミニカーを仕入れれば利益を出せるかという目利きの力がどうしても必要です。逆に言えば、目利きの力を鍛えれば、あらゆる方法で仕入れができるようになります。

例えば、フリーマーケットやバザー、企業の在庫処分、倒産品など、さまざまな仕入れルートがあります。朝一番のフリーマーケットは、仕入れのプロたちがたくさん来ています。また、こういった仕入れをするときには、目利きのできる分野が広いほど有利になります。私はミニカーだけでなく、フィギュアやグリコのおまけ、食品パッケージなど60種類以上のコレクションをしているので、かなり広い分野の相場が分かります。そのため、一度フリーマーケットに出かけると、歩けないほどたくさんの商品を抱えて家に戻ることになります。

また、仕入れはネットでもできます。ネット専門の卸売店もありますし、例えばヤフーオークションで「処分」というキーワードで検索してみてください。まとめ売り、バルクセールの商品がたくさん出てきます。そうしたもののなかから、割安のものを買って、一つひとつ綺麗に写真を撮り直して再出品するのです。バルクセールは、本当にお得で、私自身もこれまで多くのお宝を安値でゲットしてきました。

売り出していくらの値段がつくのかは、時の運もありますから、確実なことは言えません。ただ、時にとてつもない値段がつくこともあります。先週も、あるリサイクルショップが出品したトミカ(タラトミーが出しているミニカー)の日本交通特注タクシーが178万7400円で落札されました。もちろん、こうしたものは例外中の例外ですが、ネットオークションは競り合いなので、マニアが熱くなってしまうと、とてつもない価格になることが、しばしばあるのです。

ですから、背取り方式でお金を稼ぐために、まず必要なことは、お宝を見分ける目利きの能力を鍛えることです。それには、相場を普段からこまめにチェックしておくことが必要なのですが、やはり興味がないことは続かないので、まず自分の好きなものをみつけることから始めたらよいのではないかと思います。

※本連載は今回で終了です。ご覧いただきありがとうございました。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 森永 卓郎(もりなが たくろう)

昭和32年生まれ、58歳。東京都出身。東京大学経済学部経済学科卒業。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所等を経て、現在、経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。
専門は労働経済学と計量経済学。そのほかに、金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。
主な著書に『<非婚>のすすめ』(講談社現代新書、1997年)、『バブルとデフレ』(講談社現代新書、1998年)、『リストラと能力主義』(講談社現代新書、2000年)、『日本経済「暗黙」の共謀者』(講談社+α新書、2001年)、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社、2003年)、『庶民は知らないアベノリスクの真実』(角川SSC新書、2013年)など多数。