連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

投資信託の数は約6,000本、多過ぎて選べない!

これまで資産運用をしたことのない人が、これから資産運用をしようと考えるときに、まず思い浮かぶのは、投資信託ではないでしょうか。その理由は、証券会社や銀行が積極的に販売促進をしており、私たちの目に「投資信託」という言葉が触れる機会が多くなったからです。

もちろん、NISA(少額投資非課税制度)という税制優遇政策によって国が投資のあと押しをしていることも背景にあります。また、投資信託そのものが、投資の初心者向けの金融商品だと考えられていることもあるでしょう。多くの金融機関では1万円から、ネット証券では100円からでも購入できるため、気軽にスタートできます。また、1本の投資信託の中には数多くの銘柄や資産が組み入れられて分散投資されているため、リスクをある程度抑えることができます。

しかし、いざ投資信託を選ぼうと思うと大変です。数が多過ぎます。現在、公募投資信託の数は約6,000本。日本経済新聞では毎日2面を割いて、投資信託の基準価額を掲載しています(土日祝日等の翌日は除く)。中身は玉石混交。6,000本の中から投資初心者が自分に合ったモノを選ぶのは至難のワザでしょう。

金融庁のガイドラインを参考にすれば選ぶことができる!

2018年から、年間40万円までの投資資金から得られる収益に最長20年間税金がかからない「つみたてNISA」制度がスタートします。この制度の目的は、国民に長期の積立・分散投資を促すことで自らが安定的な資産形成を行えるようにすることです。

また、金融機関が真に顧客の利益になる商品・サービスを提供していない現状を改めることにつながるように、金融庁は「つみたてNISA」の対象商品の要件を定めて公表しています。

【つみたてNISAの対象商品の要件まとめ(公募株式投資信託の要件のみ抜粋)】

上記の要件を一言でいうと「低コストで実績のある投資信託」です。インデックス投信とは、TOPIX(東証株価指数)などの指数に連動させることを目標に運用する投資信託ですが、購入時手数料や口座管理手数料が無料、信託報酬も0.5%以下、0.75%以下という条件をつけています。

アクティブ投信は、指数を上回るリターンを目標に運用する投資信託で、「純資産総額50億円以上」「信託開始以降5年経過」「信託期間の3分の2で資金流入超」という条件は、運用期間が5年以上あり、投資家から多くの資金を継続的、安定的に集めて運用実績がある投資信託ということです。

金融庁は、これらの要件を満たす投資信託こそ、長期積立・分散投資が可能で、真に顧客の利益になると考えているのではないでしょうか。「つみたてNISA」の対象商品は、今後金融機関が金融庁に届け出て決まりますが、この要件は、私たちが「つみたてNISA」以外で資産運用をするときの投資信託選びにも活用することができます。

ネット証券やモーニングスターなどのサイトで検索して絞り込む

ネット証券は、大手証券会社や銀行などと比べると、投資信託の品ぞろえが圧倒的に多く、サイトでの投資信託の検索機能が優れています。また、投資信託評価会社であるモーニングスター社のサイトも買いたい投資信託選びに活用することができます。これらのサイトでは、インデックス投信・アクティブ投信の別、購入時手数料の有無、信託報酬の水準、純資産額、運用期間など、様々な条件を指定して絞り込むことができます。

なお、金融機関のサイトでは、その金融機関が販売している投資信託の中から絞り込むことになります。モーニングスターのサイトは金融機関に関係なくすべての投資信託の中から絞り込むことができ、その投資信託を販売している金融機関を照会することもできます。

「つみたてNISA」の対象商品の要件を参考に、条件を指定して投資信託を絞り込んでみてください。「真に顧客の利益になる商品」をたくさん取り扱っている金融機関がわかるかもしれません。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

メルマガ「生活マネー ミニ講座」(平日・毎日配信)
HP「FPオフィス ワーク・ワークス」