連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

年収は「大企業勤務の大卒30代前半男性」で350万円程度

FPとして個人の方の家計のご相談を受けているときによく聞かれるのが、「私と同じくらいの世帯の平均はどれくらいですか?」という言葉です。収入や支出、財産に関することは極めてプライベートな事柄で、友達との間でも情報交換をすることはまれでしょう。

私たちは、人と比較されたくないと思う一方で、人と比較して自分の位置を確かめたいとも思っています。今の自分が平均的にみて良いのか悪いのかを確認して、良ければ安心し、悪ければ態度や行動を改善するキッカケにしたいのです。

ただ、"お金"のことは人に率直に聞くことがなかなかできません。聞けたとしても正直に回答してもらえるとも限りません。そんなときは、「統計データ」を活用してはいかがでしょうか。自分に近い属性のデータを確認して、自分の現状と比較してみましょう。

学歴・年齢階級・性・企業規模別賃金(厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」より)

厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」によると、収入に関して大学・大学院卒の大企業の男性は、30代前半に約350万円。その後50代前半まで上昇を続けますが、50代後半から減少することがわかります。このような傾向がわかるだけでも、今後のライフプランを考える上で注意すべきことがわかります。例えば、「定年まで右肩上がりに収入が増えるわけではなさそうなので、子供が大学に通う50代後半は、教育費で家計が圧迫されるかもしれない。そうならないように早めに貯蓄をして備えておこう」などと考えることができます。

支出の平均値を参考にして、自分の家計と比較してみる

下の表は、総務省の「家計調査年報(家計収支編/2016年)」の一部です。「家計調査」は、これ以外にも様々な切り口で集計したデータをホームページから入手することができます。自分に近い年齢、世帯人数、居住地域などのデータを参考にして、実際の自分の毎月の支出と比較してみてはいかがでしょうか。

家計簿をつける際は、下の項目を参考にして集計すると、あとで比較するときに便利です。

消費支出と内訳(総務省「家計調査年報(家計収支編/2016年)」より)

30代の金融資産の平均保有額は約600万円

金融広報中央委員会の「2016年 家計の金融行動に関する世論調査」によると、金融資産を持っている世帯の平均保有額は以下の通りです。世帯主の年齢別、職業別、年間収入別のデータを掲載しました。これらを組み合わせて考え、自分の貯蓄額と比較してみましょう。

金融資産保有世帯の1世帯あたり平均保有額(2人以上世帯)
(金融広報中央委員会の「2016年 家計の金融行動に関する世論調査」より)

このデータは、自分の現状を把握するときの参考に活用していただきたいと思います。既に平均を上回っているなら、現在の取り組みを維持しつつゆとりの資産を増やすようにしましょう。逆に下回っている場合は、取りあえず平均値を目標にして、収入の増額、支出の削減に取り組み、金融資産のアップを図りましょう。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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