連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

マイナンバーを金融機関に提示しないとどうなる?

証券会社や銀行で投資信託(証券会社では株式も)の取引をする場合、その金融機関に証券口座を開設する必要があります。近年、税制の関係で証券口座はとても複雑になってきていますので、まずは、下のイメージ図をご覧ください。

証券口座のイメージ

証券口座を開設するときには、特定口座、NISA口座も開設することもできます。多くの場合、特定口座は証券口座と同時に開設し、この中で株や投資信託の取引を行います。

特定口座は複数の金融機関に開設でき、各金融機関が顧客の1年間の取引の損益を通算し、収益があった場合には所得税・住民税を源泉徴収し納税する機能等を持っています。そのため投資家にとっては確定申告の手間を省くことができます。特定口座を開設せずに一般口座で取引をすると、損益通算や確定申告をすべて投資家本人が行う必要があります。

NISA口座は、税制優遇があるため1つの金融機関にしか開設することができません。ただ、1年ごとに金融機関を変更することができます。

マイナンバー制度がスタートした2016年1月以降、証券口座の開設には法令によって「マイナンバー」の提示が必須となりました。そのため、それ以降にNISA口座を開設して運用している人は、特別な手続きをしなくても2018年以降も引き続き、同じ金融機関で自動更新することができます。

しかし、2015年12月以前に証券口座を開設した人で、2014年に始まったNISA制度を使って資産運用をしている多くの人は、「マイナンバー」を提示していないでしょう。この方たちは、2017年9月末までに「マイナンバー」を金融機関に提示する必要があります。

それまでに「マイナンバー」を提示しない場合、2018年以降自動更新されないため、引き続きNISA口座を使うには、再度口座開設の手続きをする必要があります。当然、その時には「マイナンバー」を提示しなければなりません。

ただし、2017年までの運用資産については、引き続き最長5年間の非課税期間が適用されます。つまり、2018年からの新規投資で非課税優遇を受けることができなくなるのです。

なお、今回はNISA口座の保有者に限定していますが、証券口座を持っている人でまだ「マイナンバー」を提示していない人は、遅くとも2018年12月末までには提示する必要があります。提示しない場合、証券口座でのさまざまな取引ができなる可能性があります。

これをキッカケに金融機関の切り替えも検討しよう

NISA口座を開設して資産運用をしている人の中には、金融機関を変更したいという考えを持っている人もいるでしょう。金融機関によって商品の品揃えや手数料は大きく異なります。これをキッカケに、投資信託の種類がたくさんあり、安い手数料の投資信託を取り扱っているネット証券などに変更してはいかがでしょうか。

また、2018年からは「積立NISA制度」がスタートします。現在の「NISA制度」よりも1年間の非課税投資枠が40万円と3分の1に減額されますが、非課税期間は最長20年と4倍に延長されます。そして、「積立NISA口座」と「NISA口座」は選択制になり、口座も別になりそうです。若い長期運用が可能な方は、これをキッカケに、2018年からは「積立NISA制度」への切り替えを検討してはいかがでしょう。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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