連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

これまで専業主婦や公務員は加入できなかった確定拠出年金

確定拠出年金には「企業型」と「個人型」があります。会社が退職金制度として導入した「企業型」に加入している従業員の数は2016年5月末時点で約580万人にも及びます。

従業員は、会社に在籍している間、会社から毎月拠出される掛け金(投資資金)を自分で運用して老後に向けた財産形成をしていくことになります。「個人型」は主に自営業者等が老後資金を準備するために、自分で掛け金を拠出して運用していく仕組みです。

確定拠出年金は自分で運用して老後資産を準備する仕組み

確定拠出年金制度がある会社を中途退職した場合は、その後の進路によって対応が変わります。転職先に確定拠出年金がある場合は転職先の制度(「企業型」)に加入しますが、自営業や専業主婦、公務員、確定拠出年金がない企業に転職する場合は、原則として「個人型」に移行することになります。

具体的には、口座管理手数料などのコスト水準や商品ラインナップなどから自分で銀行や証券会社など、金融機関を選んで個人型確定拠出年金の口座を新たに開設し、それまで企業型の口座の中にあった運用資産を移換して、原則60歳までは運用を継続することになります。

自営業者になる場合は、「個人型」の口座に自分の掛け金も拠出することができますが、専業主婦や公務員等になる場合、これまで(2016年まで)は自分の掛け金を拠出できず、前の会社で積み立てた資産のみを60歳まで運用することしかできませんでした。

しかし、2017年からは、専業主婦や公務員を含め、誰でも「個人型」の確定拠出年金を活用することができ、その口座に自分の掛け金を拠出して運用することができるようになります。

確定拠出年金の大きな優遇メリットはNISAをしのぐ

確定拠出年金は、原則60歳までは口座からお金を引き出して受け取ることができないという制約さえ受け入れることができれば、大きな税制優遇のメリットを享受することができます。それはNISA(少額投資非課税制度)の税制優遇をしのぎます。

NISAの税制優遇は、5年間の運用収益が非課税になるというだけです。 しかし、確定拠出年金には「掛け金に所得控除が適用される」「運用収益は期間に関わらず非課税」「お金を受け取るときも所得控除が適用される」と、3つの段階でそれぞれ優遇が設けられています。

例えば、パート収入のある専業主婦が、毎月2万円(年額24万円)を確定拠出年金口座に拠出する場合、所得控除によって年額24万円は所得から控除することができるため、課税対象所得がその分減額されて所得税・住民税を節税することができるのです。

ただ拠出できる掛け金の額には限度が決められています。 

【専業主婦、公務員の掛金の拠出限度額】

老後に国から支給される年金の将来像が不透明です。少子高齢化の影響で公的年金制度を維持していくためには、将来の年金支給水準を引き下げざるを得ないとも言われています。

そんな中、私たちは自助努力で老後の備えをしなければなりません。来年から変わる確定拠出年金制度は、自助努力による財産形成をサポートするものです。うまく活用して、少しでも安心できる老後を迎えることができるようにしたいものです。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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