連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


投資をするなら「投資信託」を活用しよう!

2月から「マイナス金利」がスタートし、元々、日本銀行の金融緩和政策下で低かった預金金利が、更に一段と下がっています。

現在、大手銀行の普通預金金利は0.001%。100万円預けて1年間に受け取れる利息はたったの10円です。なお、このなけなしの利息からもしっかり約20%の所得税・住民税が差し引かれるため、実際の手取りは8円にしかなりません。銀行のATMの時間外手数料が108円とすれば、1回使っただけで約14年分の利息が一瞬にして消し飛んでしまうのですから、私たち生活者は、くれぐれも用心しなければなりません。

こんな経済環境の中で少しでもお金を増やそうと、こわごわ「投資」に踏み出そうと考える方々もいらっしゃるでしょう。

投資をスタートするのであれば、購入する金融商品としては「投資信託」を活用するのがよいでしょう。よく「投資信託は初心者向け」などと言われますが、それは投資信託の仕組みが簡単だからではありません。どちらかというと仕組みは株式などよりも難しいくらいです。また、ファンドマネージャーという運用のプロに任せることができるので儲かりやすいということでもありません。

主な理由は以下の通りです。

「投資信託が初心者向け」と言われる理由
1. 銀行や証券会社で取り扱っているので身近な金融機関で購入することができる。
2. 少額(500円、1,000円、10,000円など)の投資資金から始めることができる。
3. 複数の株や債券に銘柄分散されているので、1社の株式に投資をする場合などよりもリスクが低い傾向がある。
4. FX(外国為替証拠金取引)や「金」、「不動産」などへの投資では使えない税制優遇制度のNISA(少額投資非課税制度)を活用できる。

つまり、比較的簡単に購入できて優遇制度も使えるからなのです。

ただ、日本で販売されている公募投資信託の本数は2016年2月末時点で実に5,929本(一般社団法人 投資信託協会)もあります。こんなにたくさんある理由は、多くの運用会社が似たようなものを次から次へと作っているから。そのおかげで、私たち一般投資家にとって、投資信託はとても選びにくくなっています。

コストが安い「ノーロード」&「インデックス型」を選ぶ!

投資信託を選ぶときの第一のモノサシは、コストの安さです。 投資信託にはコストがかかります。コストの種類は主に3種類。

投資信託のコスト

3種類のコストの中で重視したいのが、「購入時手数料」と「信託報酬」です。 「購入時手数料」は、金融機関が顧客に販売するときのコンサルティング料のような意味合いだとされていますが、コンサルティングを受けたら儲かるというわけでもありません。購入時手数料の水準は、投資信託や金融機関によっても異なりますが、銀行員や証券会社の社員が対面で応対してくれるような金融機関で販売されるものは2%~3%(税別)が多いようです。3%の場合を例にとると、投資信託を買おうと顧客が資金100万円を払うと、先に購入時手数料として3万円が差し引かれ、残りの97万円で投資信託が買われることになります。運用の最初からマイナス3%スタートになってしまうのです。

最近はネット証券を中心に「ノーロード」と言われる購入時手数料0円の投資信託を販売する金融機関も出てきています。他の金融機関もインターネット限定で取り扱いをするところが増えてきました。私たちは、できればノーロードの投資信託を選ぶようにしたいものです。

「信託報酬」の水準は、購入時手数料以上に投資の成果に影響を与えます。そのため、「購入時手数料が高くて信託報酬が安いもの」か「購入時手数料が安くて信託報酬が高いもの」のどちらを選ぶかと問われたら、「購入時手数料が高くて信託報酬が安いもの」を選びたいですね。

信託報酬は、その投資信託を保有している間ずっとかかります。投資信託ごとに、保有額に対して年率0.2%台~2.0%程度が差し引かれます。運用成果が良くても悪くても差し引かれます。

例えば、信託報酬が1.5%の投資信託を10年間保有し、その間の保有額がずっと100万円だったとすると、10年間で1.5%×10年=15%、つまりざっくり100万円×15%=15万円を金融機関にコストとして支払うことになるのです。購入時に一瞬差し引かれる購入時手数料とくらべると信託報酬の方が大きな金額になります。

信託報酬が安い投資信託は、インデックス型(パッシブ運用)の投資信託です。 インデックス型(パッシブ運用)とは、市場平均に連動する運用成果を目指す運用のこと。つまり「平均並み」の運用を目指すことです。

例えば、日本株の投資信託を例にとると、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に値動きを連動させるものです。

日本株以外でも、日本債券、外国株式(先進国、新興国)、外国債券(先進国、新興国)など、市場ごとに平均を示す指数があります。その指数に運用成果を連動させることを目標にした投資信託は、いずれもインデックス型(パッシブ運用)です。

(次回に続く)

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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