連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


世帯主が万が一死亡した場合に備える保障の考え方

子供が生まれたらすぐに考えるべき「お金のこと」が2つあります。ひとつは教育資金準備。そしてもうひとつは世帯主が万が一死亡した場合の保障です。この中でも優先して考えたいのが死亡保障です。

一般的に、子供がいない夫婦の世帯主が死亡しても、妻は経済的にはさほど困らないでしょう。もちろん非常事態には違いありません。しかし、"生活費を稼ぐ"ということに関しては、それまで共働きであったら、妻はそのまま働き続ければいいでしょう。共働きでない場合でも、妻が働き始めることへの障害は特にありません。

しかし、子供が生まれたらそうもいきません。育児が必要な時期は十分に働けません。また、子供には教育費がかかります。公立学校中心の教育でも大学卒業までに1,000万円以上の教育費がかかります。私立学校や仕送りが必要な場合はもっとかかります。 遺族年金という公的な年金制度や、児童扶養手当などの福祉制度があるにはありますが、十分な額とは言えません。

そのため、子供ができたら、世帯主の死亡リスクに備えて大きな死亡保障を確保する必要があります。

そのときのポイントは、次の3つです。

1. 子供が経済的に自立するまでの期間限定(目安として大学を卒業するまでの23年~25年)
2. 教育費と生活費の一部をカバーする金額
3. 必要な保障金額は、子供の成長に伴って少なくなる

この3つのポイントを兼ね備えた生命保険商品が「収入保障保険」です。

「収入保障保険」は保険金を年金の形で受け取れる定期死亡保険

収入保障保険のイメージは、下の図の通りです。

「収入保障保険」とは

契約時に保険期間と年金月額を設定します。保険期間は、下の子供が経済的に自立するまでの期間を目安にします。年金月額は、世帯主の収入や子供に受けさせたい教育、生活費にもよりますが、10万円~30万円くらいの範囲です。

年数が経過すると、子供が成長するのに合わせて保障額も減っていきます。

なお、収入保障保険は、被保険者(世帯主)が死亡した時点で、一時金で受け取ることも可能です。ただし一時金での受取額は、受取年金総額よりも少なくなります。

タバコを吸わない人にはリスク細分型の収入保障保険が人気

収入保障保険は様々な保険会社が提供していますが、なかでもタバコを吸わない健康体の方に人気なのが、リスク細分型の商品です。人気の理由は、タバコを吸う人や標準体の人に比べて、保険料が安く設定されているからです。割引率は商品によって異なりますが、3割以上も安くなる場合もあります。

このようなリスク細分型の収入保障保険は、主に外資系の生命保険会社や、損害保険系の生命保険会社が販売しています。

配偶者(妻)も共働きを続ける予定なら「収入保障保険」に加入を!

死亡保障によって万が一の事態に備える必要があるのは、世帯主だけではありません。子供が生まれても共働きを続ける場合は、配偶者(妻)も収入保障保険への加入を検討した方がいいでしょう。

万が一妻が死亡した場合、それまでの妻の収入が途絶えてしまいます。さらに、国の遺族年金も夫や子供には支給されません。

そのため、妻の収入を生活費や住宅ローン返済、教育費の一部に使おうと考えている場合には、妻も収入保障保険に加入する必要があります。

万が一のことは考えたくないものです。しかし、それが起こると遺族の生活が壊れてしまいます。子供ができたら、まずは収入保障保険のような死亡保障で備え、その上で貯蓄などによるライフイベント資金の準備を検討するようにしましょう。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

メルマガ「生活マネー ミニ講座」(平日・毎日配信)
HP「FPオフィス ワーク・ワークス」