連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


年末年始は家計の目標を立てる絶好のチャンス!

年末年始は、家族がゆっくりと過ごせるいい機会。1年に一度くらいは、わが家の家計について夫婦や家族で話し合いたいものです。

考えてみると、サラリーマンは、仕事をしているときは常に「目標」や「計画」に縛られています。役割や目標が与えられ、その到達の度合いによってポストや給与、賞与が影響を受けます。そのため強い心理的なストレスがかかるのも事実ですが、「目標」や「計画」があるからこそ、目の前の仕事に集中でき、ものごとをやり遂げることができるとも言えます。また、仲間と目標や計画を共有しているからこそ、お互いが助け合い、目標達成の喜びを分かち合うことができるのではないでしょうか。

こうした職場の環境への反動もあってか、プライベート領域である家庭では、目標を設定し計画を立てて実行している人は極めて稀です。

「プライベートの世界にまで、『目標』や『計画』など、ビジネスライクなことを持ち込みたくない。家庭はやすらぎを得る場所なのだから、そんなことは考えたくない」と思うのはもっともなこと。

しかし、目の前の「やすらぎ」にばかりにとらわれていると、将来の「やすらぎ」を得ることができなくなるかもしれません。

なぜなら、今のサラリーマンは、親世代とは違って、「なんとかなる」時代ではなくなってきているから。

私たちの老後は、国からの年金や企業年金だけで暮らしていくのが難しくなりそうです。働いているあいだは、限られた収入から、子供の教育費や住宅費用などをまかなっていかなくてはなりません。

使えるお金が限られる中では、私たちは「やりたいこと」に優先順位をつけて、メリハリのある家計の運営を心掛ける必要があります。

そのためには、家族同士で「やりたいことは何か?」、「それはいつか?」、「それにいくらくらいお金をかけるか?」について話し合うことが必要です。また、「そのために今から何をするか?」についても共有化する必要があります。

このことは、家庭に「目標」と「計画」を持ち込むことです。しかし、家庭のそれは、職場のそれとは異なり、「やらされ感」が希薄です。より主体的に取り組めるのではないでしょうか。また、家族が共通の目標を持つことで、目標達成までのプロセスが充実します。さらに、成果は確実に、直接自分の家計を改善させます。

1年が終わり、新しい1年が始まる年末年始は、家計の「目標」と「計画」を考え、話し合う絶好のチャンス。ぜひ有効に活用してほしいものです。

「ライフイベント表」を作ろう!

家計の目標作りに欠かせないのが「ライフイベント表」です。

「ライフイベント表」とは、将来、家族に起きるイベントややりたいことを一覧表にまとめたもの。夫婦の年齢が85~90歳くらいまでの主なイベントを記載します。

【ライフイベン表(例)】

家族の年齢を並べてみると、親子が一緒に暮らせる期間が思ったほど長くないことがわかります。親にとっては、子供の過ごすこの短い時間を、より充実したものにしなければならないという想いが募るのではないでしょうか。

イベントを書き込んでみると、子供がいるうちは、たて続けに大きなイベントがあることがわかります。そしてそれぞれのイベントにはそれなりの支出が伴います。特に教育費は、入学時の一時費用の他に、毎年の費用もかかります。

ライフイベントで一時費用がかかるものには、それがいくらかかるか、見積もり予算額を記載します。

貯蓄目標額を決める!

ライフイベント表ができると、「いつまでに、いくら必要か?」の概要がわかります。

イベントを実現するために、現実的な貯蓄プランができるかどうかの評価次第では、イベントそのものや費用の見直しが必要になります。たとえば、住宅ローンの繰上返済をやめたり、車購入の予算を減らす必要がでてきたりするかもしれません。

逆に、妻が働いて収入を得れば、イベントにもっとお金をかけられるかもしません。

ここでは、夫婦や家族が話し合って、イベントの優先順位と予算を決めるプロセスがとても重要です。家族個々のこだわりや価値観を擦り合わせて調整をしていく中で相互理解が深まるはずです。

期限と貯蓄目標額が決まれば、それを1年単位の目標に落とし込んでいきます。

たとえば、5年後に200万円ということであれば、運用利回りを考慮しなければ、1年間で40万円。具体的な貯蓄は、「毎月の給与から2万円、年に2回のボーナスから8万円ずつを一般財形貯蓄を使って行う」などと決めていきます。

家計の目標は、最終的には「貯蓄目標」という形になります。

そのために「誰がいくら稼ぐか」、あるいは、「現在の家計からムダをいくら削減するか」などの具体的な実行項目が必要になる場合があります。

何にしても「1年の計は元旦にあり!」。

ぜひ取り組んでみてください。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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