連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


【ステップ2】将来の生活設計とそれぞれの思いのすり合わせ

【ステップ1】で、現状把握や分析を行ったあとには、2人で将来のことを話し合いましょう。

生活設計をすることは、今後の大きな支出項目を洗い出すことでもあります。

【ライフプラン検討表】

上の「ライフプラン検討表」には、夫婦がお互いの未来を語るときの切り口になりそうなことを列挙しています。

この他にも、それぞれ夫婦独自の検討すべき事項があるでしょう。

大切なことは、それぞれのテーマについてすぐにハッキリと決めることではなく、まずは夫婦がちゃんと向き合って話し合うことです。「お互いがどんなことを問題と考えているのか?」、「何に不安を感じているか?」、「どんな望みを持っているか?」を知ることです。毎日いっしょに暮らしていながら、大切な事をじっくりと話し合ってこなかったことに気がつく夫婦も多いのではないでしょうか。

若い夫婦にとって、リタイア後のことなどはまだぴんとこないでしょう。その場合は、当面この先5~10年程度のことをしっかり話し合い、決められることは決め、まだ決められないことはとりあえず棚上げして時間をおいて考えてもいいでしょう。

【ステップ3】家計の目標設定と共有化

将来の思いをすり合わせると、おぼろげながら、家族の将来のカタチが見えてくるものです。そのなかで、実現に向けて具体化できそうなものは、できるだけ具体的にしておいたほうがいいでしょう。

その方法は、将来の夢や希望に、期限(年号や夫婦の年齢など)と予算を入れること。

たとえば、子供の教育費については、国公立中心で大学卒業までを見据えると、1人当たり総額で1,000万円程度かかります。時間をかけて準備する教育資金の代表的なものは、大学進学のための資金約200~300万円程度(受験、入学金、初年度授業料など)です。

マイホームを取得したい場合は、「どこに何を買うか?」によって予算が大きく変わります。「いつごろ買うか?」、「頭金をいくらに準備するか?」なども考える必要があります。

夢や希望に期限と予算を入れれば、目標が明確になります。

目標が明確になれば、【ステップ1】で把握した現状とのギャップが明らかになります。

家計の目標設定はつまるところ、夢や希望の実現に向けて、夫婦それぞれが、「いつまでに、あといくら蓄えるか?」を決めることです。

【ステップ4】お互いのプランの実行

夫婦それぞれが、「いつまでに、あといくら蓄えるか?」を決めて共有できれば、それを実行計画に落とし込んで、淡々と実行すればよいですね。

たとえば、5年後までに200万円を蓄える目標を立てた場合、「毎月3.3万円ずつ積立定期に積み立てる」という方法でもいいですし、「毎月の給与から2万円ずつ、夏冬のボーナスから8万円ずつ、会社の財形貯蓄制度を活用して積み立てる」方法でも実現することができます。

ゼッタイに200万円でなくてもいい場合には、少額投資非課税制度(NISA)を活用して、リスクを抑えた投資信託で月3万円程度の積立投資をしても、ムリなく実現できそうです。

現在の給与やボーナスから積み立てるお金が簡単に捻出できない場合は、目標達成のために、毎月の支出の見直し・削減をしてでも捻出しなければなりません。

自分ひとりで決めた目標や実行プランよりも、夫婦で一緒に決めた目標・プランのほうが達成しやすくなります。

【ステップ5】定期的なモニタリングと見直し

年に2回程度、実行していることが滞りなく進んでいるかどうかの確認をしたいものです。

予定通りに財産形成ができていない場合は、やり方を変える必要があるかもしれません。目標そのものを見直す必要があるかもしれません。

将来の夢や希望が変わる可能性もあります。

夫婦や家庭を取り巻く環境は変化します。自分たちの気持ちも変わります。

定期的なモニタリングと見直しを通して、夫婦でその変化を確認し合い、目標や実行計画も柔軟に変更していけばよいでしょう。

「どうせいろんなことが変化するので、将来はどうなるかわからない。どうなるかわからないことは考えてもムダ」ではありません!

ともにフルタイムで働いている夫婦なら、会社の仕事を通じてわかっているはずです。

会社の仕事は、前回と今回述べた【5つのステップ】で動いており、どんなに大きな環境変化があろうとも、この【5つのステップ】を愚直に回していくことで、メンバー間のコミュニケーションや意思の疎通が生まれ、大きな目標に団結して向かって行くチカラが発揮できます。目標をクリアすると大きな達成感を味わうことができます。

夫婦や家庭も同じではないでしょうか。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CPF認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

メルマガ「生活マネー ミニ講座」(平日・毎日)→http://www.mag2.com/m/0000113875.html

FPオフィス ワーク・ワークスのHP→http://www.e-workworks.com/index.html