連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


年収770万円と370万円が分岐点

1カ月の医療費の自己負担額が高額になった場合、一定額を超える部分が払い戻される「高額療養費制度」が2015年1月から変わります。

サラリーマンの場合(70歳未満)、年収約770万円以上の人は自己負担が増え、年収約370万円以下の人は負担が軽減されます。

持病があり、今後計画的に入院や手術をしようとしている方の場合、2014年中にするか、年明けの2015年にするかで負担額が大きく変わる可能性がありますので、注意が必要です。

「高額療養費制度」の現行と改正後(2015年1月~)

高額療養費制度は、1カ月(1日~月末まで)の医療費の自己負担額(保険診療のみです)が高額になった場合、家計への負担が大きくならないよう上限額を設けている仕組みです。

現在は所得を3区分に分けて上限額が設定されていますが、2015年1月からはそれが5区分になるため、所得によってはこれまでよりも自己負担が増える人、減る人が出てきます。

(平成26年1月22日 厚生労働省保険局保険課「高額療養費の見直しについて」より)

たとえば、年収800万円の人の医療費が1カ月で100万円かかったとしましょう。

現行の制度だと、

  • 80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円

が自己負担の限度額です。

しかし、2015年からは、

  • 167,400円+(1,000,000-558,000円×1%=171,820円

となり、負担が84,390円増えます。

一方、年収が300万円の人の場合は、現行制度だと、87,430円ですが、2015年からは57,600円となり、負担は29,830円減ります。

事前に「限度額適用認定証」を申請すれば病院の窓口負担が限度額ですむ

治療費等が高額になると予想される場合には、あらかじめ会社の健康保険の担当部署などに「限度額適用認定証」を申請しておいたほうがいいでしょう。この「認定証」を病院に提示すれば、窓口での支払いが限度額までですみます。

「認定証」がなければ、病院でいったん医療費の3割(70歳未満)を支払ったあとで、会社の健康保険担当部署に請求して、限度額との差額を受け取ることになります。一時的にせよ多額な治療費を自分で準備しておく必要があります。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CPF認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

メルマガ「生活マネー ミニ講座」(平日・毎日)→http://www.mag2.com/m/0000113875.html

FPオフィス ワーク・ワークスのHP→http://www.e-workworks.com/index.html