連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


住宅ローン選びには「コスト」も大事

マイホーム購入に関するご相談は、景気の良し悪しに関わらず寄せられます。それは、「マイホーム」を考えるきっかけが、経済環境以上に、年齢や家族構成、ライフステージの変化によってもたらされるからではないでしょうか。

「アラフォーになったから」、「結婚したから」、「子供がある程度大きくなって手狭になったから」などがきっかけになっていることが多いようです。

ただ、買う気にはなっても、マイホームの購入は多くの人がはじめての経験。わからないことだらけです。住宅ローン選びもそのひとつ。購入後も長期間返済が続くだけに、最初にちゃんとポイントを押さえておきたいものです。

住宅ローン選びでは、「金利」だけに目が向きがちです。「変動金利タイプ」、「固定金利タイプ」などの金利タイプを決めたあとは、適用金利さえ低ければ有利だと考えがちなのですが、実際は違います。

金利が低い分コストが高く、トータルでみると不利になるケースがあるのです。

住宅ローン選びをするときに配慮すべきおもなコストは、次の3つです。

  • 「融資事務手数料」

  • 「保証料」

  • 「団体信用生命保険料」

金融機関ごとのコストの有無や特徴を把握する!

■融資事務手数料

「融資事務手数料」には、「定額タイプ」と「定率タイプ」があります。

「定額タイプ」は、いくら借りても金額が変わらないタイプ。消費税抜きで、3万円、4万円、5万円、10万円などと、金融機関ごとに決まっています。

いっぽう「定率タイプ」は、借入金額に対する一定割合の額です。これも金融機関ごとに、税抜きで借入金額×1%、借入金額×2%などとなっています。

たとえば、借入金額が同じ3,000万円でも、融資事務手数料が定額タイプなら3万円ですむところ、定率タイプ(2%)なら60万円もかかることになります。

定率タイプのほうが不利のように見えますが、その分定率タイプを採用している金融機関は定額タイプよりも適用金利を低く設定しています。

同じ金融機関で両方のタイプを提示しているところもあります。

融資事務手数料は、自己資金の少ない人は定額タイプ、多い人は定率タイプなどの使い分けが考えられます。

■保証料

「保証料」とは、住宅ローンを借りるときに、連帯保証人の代わりに信用保証会社の保証をつけるために支払う費用です。この保証は、お金を貸す金融機関が貸し倒れリスクを避けるためのもので、お金を借りる人を守るためのものではありません。

保証料は、金融機関によっても異なりますが、目安として借入金額1,000万円、返済期間35年のときに約20万円です。

3,000万円を35年返済で借り入る場合は、約60万円かかることになりますから、かなりの金額です。

なお、「保証料0円」をうたって集客している金融機関もあります。ソニー銀行、住信SBIネット銀行、新生銀行、イオン銀行などが代表的。

また、都銀や地銀、信用金庫、ノンバンクなど、たくさんの金融機関が取り扱っている「フラット35」という半官半民の住宅ローン商品も保証料は無料です。

このように、金融機関や商品によって有・無があるため、保証料はローン選びの比較ポイントになるのです。

■団体信用生命保険料

団体信用生命保険(通称「団信」)は、ローン返済中に死亡・高度障害になったとき、借りた人に代わって保険会社がローン残高を一括して支払う仕組みの生命保険です。ローンを借りる人にとっては、自分に万が一のことが起こっても家族に負担をかけずにすむ重要なもの。お金を貸す金融機関にとっても貸し倒れを防ぐものです。

ほとんどの民間金融機関は、団信加入を住宅ローンの借り入れ条件にしています。したがって、健康状態が悪く団信に加入できない人はローンを借りることができません。しかし、加入できれば、保険料は銀行の負担なので、自分に負担はかかりません。

ただ、「フラット35」は、団信への加入が任意となっており、加入する場合は保険料を払わなければなりません。毎年一度、ローン残高に応じて支払う必要があります。

借入金額3,000万円、返済35年、金利2%の場合の支払保険料総額は、約214万円になります。

(住宅金融支援機構のサイトでは、機構団信特約料シミュレーション< http://www.jhf.go.jp/simulation_danshin/index.php >をすることができます)

「機構団信特約料シミュレーション」画面(出典 : 住宅金融支援機構Webサイト)

フラット35の団信保険料は、総額ではかなりの金額になります。

したがって、フラット35と民間金融機関の住宅ローンを比較検討する場合には、団信保険料にも配慮する必要があるのです。

金利とコストを含めた住宅ローンの具体的な比較方法については、次回。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CPF認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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