連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


繰上返済は、元金を少なくして支払利息を削減すること

サラリーマンの方はもうじきボーナス、という方も多いでしょう。

使い道をもう決めた方もいるでしょうが、住宅ローンを返済中のご家庭なら、使い道のひとつに、「繰上返済」も加えてほしいものです。「繰上返済」は確実に、しかもはっきりした効果を得ることができます。

繰上返済は、次のイメージ図のようになります。

【繰上返済のイメージ図】

毎月返済額の内訳は「元金部分」と「利息部分」。繰上返済は、手元のお金で「元金部分」を減らすことにより、それに対応した「利息部分」を削減することです。

図の場合、3年後に100万円の繰上返済を行うと利息削減額は約68万円、短縮される返済期間は15カ月です。いっぽう20年後に同じ100万円の繰上返済を行うと利息削減額は19万円、期間短縮は10カ月になります。返済が進むにつれて毎月返済額の「元金部分」が多くなり、逆に「利息部分」は少なくなるため、繰上返済は早ければ早いほど大きな効果を得ることができるのです。

しかも、繰上返済額によって削減できる利息額、短縮できる期間は、あらかじめはっきりとわかります。

いくら増えるかわからない資産運用の投資資金にお金を使うよりも、繰上返済をするほうが、短期に確実な成果を得ることができます。

ただし、一度繰上返済したお金は手元に戻ってこないため、生活予備資金や近い将来確実に使う予定のあるお金で繰上返済をしないよう注意が必要です。

よくある繰上返済に関するQ&A(1)


Q1:繰上返済はある程度お金を貯めてから行ったほうがいいでしょうか? あるいは、少しずつでもゆとりのお金ができた時点で行ったほういいでしょうか?


A1:少しずつでもいいので、ゆとりのお金ができたら繰上返済をしたほうがいいですね。

イメージ図と同じ借り入れ条件で、毎年20万円ずつ10年で合計200万円の繰上返済をした場合と、10年後に一括して200万円の繰上返済をした場合の利息額を比較してみましょう。

最近は、繰上返済の手数料が無料の金融機関が増えてきました。メガバンクでもインターネットで手続きをすると無料になります。また、最低金額も「1円」、「1万円」、「10万円」など少額から行うことができます。そのため、手数料を気にすることなく繰上返済ができるようになっています。

よくある繰上返済に関するQ&A(2)


Q2:現在、変動金利タイプでローンを返済しているのですが、繰上返済は金利がアップすることがわかってから行ったほうがいいでしょうか? それとも、金利が低い今のうちから行ったほういいでしょうか?


A2:ゆとりのお金ができたら、金利が低くても早く繰上返済をしたほうが、それだけ元金を少なくするできるので支払利息を減らすことができます。

その後に金利がアップしても、すでに元金が少なくなっていれば、影響も小さいはずです。

よくある繰上返済に関するQ&A(3)


Q3 : 住宅ローン減税が終了する返済開始から10年後に繰上返済をしたほういいですか?それとも、減税期間中でもゆとりのお金ができたらしたほういいですか?


A3:住宅ローン減税は、返済開始年から10年間にわたって、毎年年末のローン残高の1%相当額の所得税・住民税が減税される制度です。

元金の1%が1年間の減税額の上限になるので、ローン金利が1%を上回っている場合には、減税期間中でも早く繰上返済をしたほうが有利になります。

ローン金利が1%未満の場合でも、減税対象になる年末ローン残高の上限額が決まっていたり、ローン契約者が支払っている所得税額・住民税額によって減税額が変わるため、早く繰上返済をしたほうがいい場合があります。したがって、事前に詳細なシミュレーションをして判断したほうがいいでしょう。

なお、住宅ローン減税は、返済期間が当初から10年未満になった年から適用されなくなることにも注意が必要です。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CPF認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。

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