今年はこれからご説明いたしますように、ドル中心の、しかもドル安相場になるものと見ています。

まず、以下のドルの強弱を総合的に示すドルインデックスの月足を見てみましょう。上がドル高、下がドル安です。このチャートはリーマンショックのあった2008年以降から、先月末までのチャートです。

ドルインデックス

リーマンショックという未曽有の大事件が発生したにも関わらずむしろドルは買いで反応したのは、米大手証券会社がリーマンショックによって株で損失を大きく出したため、その損失を穴埋めしようと対外資産を大量に売却しドルに交換したためでした。

いずれにせよ、リーマンショックであってもドル相場は対して動かず、2014年の前半まではむしろ相場が収斂する方向に動いていました。

ところが2014年に入り、まずはECBの量的緩和の追加、そして黒田バズーカ第2弾の実施と続いたことから、ドルは急上昇しその後も高値圏を維持しました。2016年の米大統領選ではトランプ氏が当選して一段の上げを見ましたが、その後は下落に転じています。

そして先月末、月足の実体(ロウソクの寄り付きと引け値の間の太い部分)がネックラインを下回りだし、新たに下落を示唆されています。つまり、ドルは2014年の急上昇を始めた水準である80.0までは下がるのではないかと見ています。

この高さをユーロ/ドルに引き直すと3400ポイントぐらいですので、ここのところの実体の安値であった1.0515に足し合わせると、1.3915ぐらいがターゲットとなります。またドル/円で言えば2280ポイントぐらいですので、これを最近の実体高値124.10から差し引くと101.30近辺まで下がる可能性があります。

要はユーロ/ドルの上昇が主役、ドル/円の下げが準主役となって、基本的にドル安になるのではないかと見ています。

ユーロ/ドル 月足

なぜユーロ/ドルが主役となるのか

ユーロ/ドルが主役となる理由はトランプ大統領にあると思われます。特に北朝鮮との関係悪化は欧米投資家たちの脅威となっているものと思われ、既に4月頃からドルからユーロへの資金移動は始まっているものと考えられます。そしてここにきて更に緊張は高まっており、ドルからユーロへの資金移動が一段と進むものと思われます。

ところで、なぜこうした有事にドルがまずかったらユーロへ、あるいはユーロがまずかったらドルへ資金移動するかと言えば、ドルもユーロも規模が大きく、受け皿になりえるのはお互いしかないためだと言えます。したがって、今般のようにドルで事が起きればユーロへ資金は移動することになります。しかも、米朝関係が更に悪化すればするほど、ドルからユーロへの資金移動は巨額になるものと見ています。

過去にも同様のことが起きており、2001年の米同時多発テロのときは翌2002年から6年間も資金はドルからユーロへ移動し、この間ユーロ/ドルは何と7000ポイントも上昇しました。なお、原因となるトランプ大統領が、在任する限りドル安は続くものと思われます。

ドル/円はどうなる?

さて、準主役のドル/円です。

ドル/円 月足

本来、北朝鮮問題が悪化すれば日本も当事国になる可能性は高いですが、ドル/円の上値は異様に重いです。

ここからいえることは、北朝鮮問題にしても何にしても、円安の見方が非常に強く、前もって円売りしてしまっているマーケット参加者が多いと思います。それは、ユーロ/円でも言えて、ECBの量的緩和縮小を期待してユーロ/円を買い過ぎているため、重くなってきています。つまり、話題の先取りによる円売りがドル/円の上値を重くさせていると思います。

更に申し上げれば、2014年以降の機関投資家の外債・外国株式の購入も為替ヘッジした部分もあるでしょうが、それでもオープン部分はかなりの額になっているものと考えられ、それはどこかで円高加速の原因になるものと思われます。

最初に申し上げましたようにドルインデックスは大きくドル安に向かう可能性を示唆していますので、十分な警戒が必要です。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら