【コラム】

円の行方、ドルの行方

83 その通貨を扱うなら、その国へ行ってみる

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その通貨を扱うなら、その国へ行ってみる。

私が新米ディーラーのとき先輩ディーラーから言われ、実際その国へ行ってみて確かにそうだなと実感したことです。これはお金と時間のかかる話ですので、そう簡単にいってらっしゃいとは言えませんが、ご機会があれば是非ご自分がよく取引をする通貨の国へ行ってみることをお勧めします。

その国へ行って、何も銀行の調査部や役所に顔を出すとかそういうことではなく、町を歩いてみるだけでもその国のスメル(匂い)やその国の雰囲気、ひいては、その国の通貨の特性のようなものが実感できるものです。

著名投資家ジム・ロジャーズ氏も投資対象の国を定期的に訪問して、自分の足でその国が投資の対象に足りうるかを検分しています。彼のすごいところは、必ずその国の一番危険とされる地域に足を踏み入れているところです。多分、そこにその国の縮図が見えるのでしょう。ただし、これは彼の場合であって命あっての物種ですので、決して皆様にはお勧めしません。

その通貨を扱うなら、その国へ行ってみること(画像はイメージ)

北欧出張

私がロンドンにいたとき、スカンディナビア半島の三国、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーの各首都を2泊3日で出張したことがありました。実に飛行機で1時間そこそこで移動できる隣り合わせの国同士ながら、それぞれに違いがあって、驚きました。

フィンランドはアジア系のフィン人の国で、フィンランド語でフィンランドのことを「ソーメン」と言います。首都ヘルシンキの町の雰囲気に底知れぬ力強さを感じました。男女同権の意識が強いのか、バスの運転手も女性が当たり前のようです。また、白夜を初めて経験したのがフィンランドでした。

スウェーデンの首都はストックホルム。ここは、ボルボやサーブを生産輸出する北欧一の経済大国ですので、首都の町の雰囲気にもどこかしら洗練されたものを感じました。また、国防意識が強く、地下鉄が核シェルターになっていることは有名な話です。

最後にノルウェー、バイキングの国です。この国の首都はオスロです。このオスロの国際空港はフィヨルドの中にありますが、行った当時その規模の小ささには驚きました。地方空港という趣で、ヘルシンキ、ストックホルムの空港と比べようもありませんでした。オスロの町もこじんまりとしていてのどかで、バイキングのふるさとにふさわしい雰囲気を感じました。この国は水産国であると同時に、北海油田を持つ産油国でもあります。

ここであげた例はあくまでも一例です。英語で「ステレオタイプ」、つまり既成概念を持っていると、既成のイメージでその国・その通貨を見てしまい、本質を見誤ってしまうことがあります。その意味からは、やっぱりその国に行ってみることが一番です。

北欧のディーリングルーム

スウェーデンは北欧の中でも工業化が進んでいる国で、それに伴って金融機関も発達しています。訪れたのは大手のスカンジナビスカ・エンスキルダ・バンケンという銀行のディーリングルームでした。こわもてのチーフディーラーの下、結構な大所帯です。圧倒的に金髪で白い肌のディーラーが多く、さすがは北欧のディーリングルームという感じでした。

当時、私は2国間金利差の拡大縮小を予測してトレードするスワップディーラーでしたので、その銀行のスワップディーラーと話してみたいと思っていました。ところが、さすがは本店だけに実需取引が多いようで、スワップディーラーは立ったままひっきりなしに顧客にプライスを出していて、その忙しさには驚きました。

彼の動きに見ほれていたところに、良く焼けた肌のディーラーがディーリングルームに入ってきました。彼はその銀行のシンガポール支店のディーラーと見え、お土産にアジアで買ったパチもん(偽物)の腕時計を皆に配っていました。

こんな具合で、ディーリングルームに活気と明るさがあって、どこの国のディーリングルームも似たり寄ったりだと感じたことが出張の大きな収穫だったように思います。為替のマーケットは世界に広がっていますが、実はスモールワールド(世間は狭い)な世界です。

為替介入

この出張で、為替介入(Intervention、インターベンション)の現場を中央銀行で見る機会がありました。それは決して日銀でもなく、ニューヨークFEDでもなく、ECBでもBOEでもありませんでしたが、こんな感じなんだなと大変勉強になりました。

それは、ノルウェーの首都オスロにあるノルウェー中銀(Norges Bank、ノルゲスバンク)でのことでした。表敬訪問したノルウェー中銀のディーリングルームは、こぢんまりしていました。訪ねていったときからどうも緊迫した雰囲気が漂っていましたが、そのうちディーラーが集まりチャートに首引きになり、何やら真剣にノルウェー語で議論を始めました。そして結論が出たらしく、一斉に地場の銀行(多分)をホットラインで呼び為替介入を実施したもようでした。

一服ついて、マネージャーが待たせていた私のところにやって来て、「待たせてすまなかった」と言うので、「為替介入をしていたのでしょう」と答えたところ、「ノルウェー語がわかるのか?」と言うので、「いやいや、それは中央銀行のあの雰囲気はそれしかないじゃないですか」という話になり、やけに打ち解けた雰囲気になったことがありました。

今時、さすがのノルウェー中銀でもこんな外部者に為替介入の一部始終を見せるようなのどかなことはしないと思いますが、中銀サイドから為替介入を見るというとても貴重な経験をしたと思っています。こうした経験は、その国・地域の通貨のバックグラウンドを知る上で、大変役に立つと思いますので、機会がありましたら、是非行ってみてください。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら

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インデックス

連載目次
第109回 相場の構造変化のときか?
第108回 マーケットセンターによって気質に変化
第107回 自分を鍛える
第106回 相場の四季を忘れずに
第105回 工夫と努力
第104回 変形ダブルトップ
第103回 作られた情報
第102回 ドル/円、2005年
第101回 相場は、これ一回限りではない
第100回 相場見通し - 掲載100回記念
第99回 情報を推理する
第98回 個別に違う通貨ペアの動きに警戒
第97回 ドル/円の悪循環
第96回 8月相場を控えて
第95回 トレンド相場発生のメカニズム
第94回 エネルギッシュな中国
第93回 温故知新、LTCM
第92回 ブレグジットから1年
第91回 マーケット情報とのつき合い方
第90回 スピード感に温度差
第89回 素直さがなくなった米雇用統計後の相場
第88回 ユーロ/ドルはフローで動く
第87回 フランス
第86回 欧米投資家の動きに注視
第85回 投機をなす者、楽悲を戒む
第84回 トレーダーにとってのファンダメンタルズ分析
第83回 その通貨を扱うなら、その国へ行ってみる
第82回 考察、ドル/円相場
第81回 自分を信じること
第80回 気をつけよう、4月相場
第79回 急騰・急落のメカニズム
第78回 右ならえ運用の顛末は?
第77回 銀行ディーラーと個人投資家
第76回 予想以上に密接な関係 - 決算と為替
第75回 ドル/円、レンジからトレンド移行の可能性は?
第74回 休むも相場
第73回 過去の為替政策に学ぶ - プラザ合意
第72回 相場に連れを作らず
第71回 結構、難しいか? 今年のドル/円相場
第70回 ステレオ・タイプ
第69回 日本はオーバー・ポピュレーション?
第68回 2016年の総括
第67回 予想以上のドル高円安の可能性は?
第66回 「誰が売った、買った」だけでは、生き残れませんよ
第65回 安定から動乱の時代へ
第64回 ドル/円の急上昇を支える5日移動平均線
第63回 為替市場で無視できない、本邦個人投資家層
第62回 トランプ氏当選後、「投機筋」対「本邦輸出企業」のバトル
第61回 ヘッド・アンド・ショルダー
第60回 いなくなった、縁の下の力持ち - ドル/円相場
第59回 チャートパターンの落とし穴
第58回 FXトレードは、世界が相手
第57回 天国と地獄
第56回 相場の鮮度に応じたトレーディング・スタイルを取る
第55回 米系ファンドの45日ルール
第54回 ケーブル、一日天下
第53回 理由が後からついてくる
第52回 今年これまでのドル/円と今後
第51回 ひらめきが現実になるには
第50回 メダルと国力
第49回 貿易収支に大きく影響を受けるドル/円
第48回 意外に相場に影響がある夏休み要因
第47回 トレンド相場とレンジ相場
第46回 ユーロ圏を悩ますISとの宗教戦争
第45回 相場の転換に早く気づくには?
第44回 荒波に出航するイギリス
第43回 人の行く裏に道あり花の山、ジョージ・ソロス氏に思う
第42回 通貨当局は、マーケット心理を把握しているか
第41回 英国民投票とドル/円の行方
第40回 意外に知らない、相場エントリーの真実
第39回 理由が後からついてくる - ユーロ/円、大幅下落の可能性
第38回 失敗か? アベノミクス - 注視する米系ファンド
第37回 相場の基本を知って、収益チャンスを拡大! トレンド相場とレンジ相場
第36回 ある噂
第35回 ユーロ/円からドル/円、ユーロ/ドルの将来を占う
第34回 米財務省と日本の財務省との軋轢は回避できるのか?
第33回 マイナス金利適用拡大報道の為替マーケットへの影響は?
第32回 円安頼みの日本経済は、耐えられるのか?
第31回 ドル/円、為替介入の可能性は?
第30回 「リスクの早期発見、早期回避」が身を助く
第29回 BOE vs ジョージ・ソロス氏の教訓
第28回 ヘレンとナディア
第27回 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?
第26回 ユーロ/ドル、防戦買いを突破して下落するか
第25回 今のドル/円の相場のリズムは、グンチャッチャ、グンチャッチャ
第24回 気になるユーロ/円、二極の異なる状況が重なって大幅安か
第23回 介入は怖いばかりではなく、良い話もある
第22回 米系ファンドは、ドル/円にロックオンか?
第21回 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す
第20回 ユーロ/ドル、下落再開か!?--"EUの弱体化"も影響
第19回 原油安で貿易黒字なら恒常的なドル売り発生--円安から円高に相場観が大転換
第18回 ドル/円が急落、どこまで下がるか--「人智では推し量れぬもの」
第17回 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?
第16回 クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!
第15回 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も
第14回 原油価格下落が再開、日本の貿易収支とドル/円への影響は?
第13回 ユーロの悲劇--なぜ急騰し、そして高止まりしたか!?
第12回 ユーロ/円、潜在的な大相場の可能性--110円近辺まで下落か!?
第11回 ユーロ/ドル、超長期からのアプローチ--9.11テロ、リーマン、ドラギ緩和
第10回 フランス同時テロが、FXマーケットに与える影響は?
第9回 ドル/円、どこまで上がるか!?--日本の貿易赤字の変化に注目
第8回 ユーロ/ドルには十分な警戒が必要--ドイツがおかしくなったら大混乱!?
第7回 ECBドラギ総裁は"先手必勝"の追加緩和--FRBイエレン議長には"市場の洗礼"!?
第6回 無視できない、欧米の"決算絡み"の相場の動き--今後はどうなる!?
第5回 トルコ史上最悪のテロ事件が発生、トルコリラはどうなる!?
第4回 ドル/円とユーロ/ドルの膠着相場、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
第3回 フォルクスワーゲン不正問題に思う--ドイツから米国へ富の移し替え!?
第2回 ユーロ/ドルが動くわけ、動かないわけ
第1回 ドル/円、本格的に円高に転換か?

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