【コラム】

円の行方、ドルの行方

27 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?

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ユーロ/ドル相場の見方を、180度変えることにしました。

ユーロ/ドル 日足

その見方変更について現象面から申し上げれば、ユーロ/ドルは、いずれパリティー(1.0000、等価)と見てきましたが、そのわりに、1.0800の買いが執拗に出ることは否めないということがあります。

先週木曜、ECBが発表した金融緩和措置自体は予想を上回る規模で、ユーロ/ドルは売られ、一時1.0822まで下げました。

ところが、理事会後、ドラギECB総裁は、「一段の利下げは必要ない」と発言したことでマーケットは、ショートの買い戻しを中心に買いが強まり、1.1218まで、約300ポイントの反騰となり、多くの犠牲者が出たものと思われます。

リスク発生時の資金の本国還流「レパトリ」

そして、もっと大きなヒントは1987年に起こった、米ブラックマンデーと呼ばれる株の暴落時と同じような反応を為替相場が反応する可能性があるということでした。

ブラックマンデーの時、米株は暴落しましたが、ドルは最初こそ投機筋が売ってきましたが、その後、逆に上昇したということでした。 その理由は、米系証券が、アメリカの顧客から株の現金化を求められ、その手当のため外貨資産を売る一方、ドルを大量に買ったということでした。

そして、現状のドイツが、難民・移民のテロ活動を含む問題を抱えているのと同時に、ドイツ銀行の経営不安やフォルクス・ワーゲンの不正に伴う問題などを抱えています。

たとえばドイツ銀行が破たんするようなことになった場合、先に上げたブラックマンデー時と同じ様に、ドイツ国内での顧客からの株の現金化を求められ、その手当のために大量のユーロ買いに走る可能性があります。

これをレパトリ(レパトリエーション)と言って、リスク発生時の、資金の本国還流を言います。 このレパトリに伴うユーロ買いのため、ユーロは下がらず、むしろ上がる可能性があります。

ユーロ/ドル 週足

また、最近のユーロを見ていて思うのですが、下落を始めた2014年5月の1.39台から、安値1.04台をつけた2015年の3月までの一方的な下落なあとの、ざっくりと言って、1.05台~1.15台のレンジが、2015年から現在まで続いています。

今まで、これは、下落途上の踊り場だと思っていましたが、特にここ最近の1.08台の買いは引かず、よしんば突破するにしても、よほど、助走距離が必要だと思っています。従い、その点からも、ユーロ/ドルはいったん上がる必要があるのではないかと見ています。

このように、為替の世界で、相場が一方向に向かうには、資金のフロー(資金移動)が必要で、決して上がるべき下がるべきという精神論だけでは、一方向への動きは長続きはしません。

資金移動が止まっている要因とは

特に、ユーロ/ドルの場合、フローを作る大本は、投資家と呼ばれる人々で、彼らの方針によってユーロからドルへ、ドルからユーロへと、資金が一方向に動きます。

先に述べました、2014年5月から2015年3月までの一方向への動きは、まさにこうした投資家筋からのユーロ売りドル買いの流れができていたためだと思われます。一方、2015年3月以降、レンジ相場になったことは、つまりは、投資家が動いていないことを示しているものと思われます。

資金移動が止まっている原因としては、ここ何年か、ユーロ危機や、ギリシャ危機などが続いたことから、投資家のユーロからドルへの資金移動(ユーロ売りドル買い)も、既におおかた済んでいる可能性があるようにも思います。

ユーロからドルへの移動すべき資金がなければ、こうしたレンジが長引くことになる可能性すらあると思われます。

なお、投資家と呼んできましたが、具体的には、どのようなマーケット参加者かと申し上げますと、政府系ファンド、ペンションファンド(年金の運用機関)、そして中央銀行などです。

どれも、お堅い人たちであり、決定するまでは、慎重に検討を重ねる一方、動き出すと怒涛のように動き、そのため、マーケットに大きなフローを作ります。特に、ユーロ/ドルで散見されます。

なぜなら、世界一の通貨ドルと第二位も通貨ユーロが、それぞれに資金移動するだけの流動性を持っているのは、お互いでしかないからです。それが、既に、ユーロ圏のいろいろな問題から、ユーロからドルに大きく移動してしまっているというのが現状だと思います。

つまり、ユーロ売りドル買いは満杯なのに対して、ユーロ買いドル売りはガラガラだと思われます。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら

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インデックス

連載目次
第45回 相場の転換に早く気づくには?
第44回 荒波に出航するイギリス
第43回 人の行く裏に道あり花の山、ジョージ・ソロス氏に思う
第42回 通貨当局は、マーケット心理を把握しているか
第41回 英国民投票とドル/円の行方
第40回 意外に知らない、相場エントリーの真実
第39回 理由が後からついてくる - ユーロ/円、大幅下落の可能性
第38回 失敗か? アベノミクス - 注視する米系ファンド
第37回 相場の基本を知って、収益チャンスを拡大! トレンド相場とレンジ相場
第36回 ある噂
第35回 ユーロ/円からドル/円、ユーロ/ドルの将来を占う
第34回 米財務省と日本の財務省との軋轢は回避できるのか?
第33回 マイナス金利適用拡大報道の為替マーケットへの影響は?
第32回 円安頼みの日本経済は、耐えられるのか?
第31回 ドル/円、為替介入の可能性は?
第30回 「リスクの早期発見、早期回避」が身を助く
第29回 BOE vs ジョージ・ソロス氏の教訓
第28回 ヘレンとナディア
第27回 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?
第26回 ユーロ/ドル、防戦買いを突破して下落するか
第25回 今のドル/円の相場のリズムは、グンチャッチャ、グンチャッチャ
第24回 気になるユーロ/円、二極の異なる状況が重なって大幅安か
第23回 介入は怖いばかりではなく、良い話もある
第22回 米系ファンドは、ドル/円にロックオンか?
第21回 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す
第20回 ユーロ/ドル、下落再開か!?--"EUの弱体化"も影響
第19回 原油安で貿易黒字なら恒常的なドル売り発生--円安から円高に相場観が大転換
第18回 ドル/円が急落、どこまで下がるか--「人智では推し量れぬもの」
第17回 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?
第16回 クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!
第15回 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も
第14回 原油価格下落が再開、日本の貿易収支とドル/円への影響は?
第13回 ユーロの悲劇--なぜ急騰し、そして高止まりしたか!?
第12回 ユーロ/円、潜在的な大相場の可能性--110円近辺まで下落か!?
第11回 ユーロ/ドル、超長期からのアプローチ--9.11テロ、リーマン、ドラギ緩和
第10回 フランス同時テロが、FXマーケットに与える影響は?
第9回 ドル/円、どこまで上がるか!?--日本の貿易赤字の変化に注目
第8回 ユーロ/ドルには十分な警戒が必要--ドイツがおかしくなったら大混乱!?
第7回 ECBドラギ総裁は"先手必勝"の追加緩和--FRBイエレン議長には"市場の洗礼"!?
第6回 無視できない、欧米の"決算絡み"の相場の動き--今後はどうなる!?
第5回 トルコ史上最悪のテロ事件が発生、トルコリラはどうなる!?
第4回 ドル/円とユーロ/ドルの膠着相場、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
第3回 フォルクスワーゲン不正問題に思う--ドイツから米国へ富の移し替え!?
第2回 ユーロ/ドルが動くわけ、動かないわけ
第1回 ドル/円、本格的に円高に転換か?

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