ユーロ/ドルは、2014年5月の1.39台から、2015年3月の1.04台までの10カ月間で、下落トレンドとなり、約3500ポイントの急落をしました。

ドル/円 日足

ところが、その後、現在2016年3月までの丸一年は、ざっくりと言って、1.05台から1.10台のレンジ相場が続いています。

このトレンド相場とレンジ相場が交互に行われること自体、それほど珍しいことではありませんが、一時的に下抜けした時もありましたが、2015年12月以来、基本的に1.0800の徹底的な防戦買いがなされています。

これは、かなり意図的で人為的に行われているもので、完全には特定できませんが、たぶん、世界的にも大手の公的な機関によるものと思われます。彼らは、通貨オプションのレンジバイナリーあるいはダブルノータッチとも呼ばれるオプションを好んで売って、膨大なプレミアム(オプション料)を手にいれることを好みます。

このオプションを売って、即プレミアムが得られるというのが、この国の人間をオプションの売りに走らせる大きな理由です。もちろん、防戦買いは、下げをある程度食い止められます、しかし、必ず防戦買いが成功するといものではありませんが、その機関は懲りずに続けています。

たとえば、下げさせまいとして、1.0800の手前で防戦買いを行うと、確かに、いったんは止まりますが、この人為的な取引を繰り返していると、相場自体がドンドンロングになります。

買い過ぎた分は、相場が上げたところでは、すかさず売りに回るため、結局上値が重くなり、レンジブレイクしていきかねません。つまり、現在、相当な額をつぎ込んで、防戦していますので、下げのリスクは高まっているものと見ています。

また、オプションには、エクスパイアー(満期)があり、エクスバイアーを迎えると、オプションが消滅し、防戦的な為替でのポジションを手仕舞わなくてはなりません。これがまた、相場の変動要因となります。

3月10日にECB理事会

さて、現在の膠着したユーロ/ドル市場ですが、3月10日には、ECB理事会があります。2月29日に発表された2月のユーロ圏の消費者物価指数・速報値は前年同月比0.2%の低下となり、2015年9月以来5カ月ぶりのマイナスとなりました。これにより、10日の理事会では、追加緩和やむなしとなるものと思われます。

つけ加えるなら、前回のECB理事会後、ドラギECB総裁は、記者会見で、「次回、(つまり3月10日)追加緩和を予告」しており、結論的には、10日時点で追加緩和がなされる可能性は高いものと思われます。

その時でも、たぶん1.0800手前の防戦買いが出るかもしれませんが、中央銀行が追加緩和を決定していながらも、それをも無視した防戦買いは、結局はマーケットによって崩されるものと見ています。

相場と長年付き合ってきて思うことは、おかしいものはやはりおかしく、修正されるものだとういうことです。それに抗して、金額に物を言わせて、相場操縦しようとしてもそれには無理があると思います。

むしろ、昨年3月から丸1年間の膠着相場で溜まっているエネルギーの方が、大きく、動き出したら止まらなくなる、可能性を秘めていると思います。

現状、ユーロ圏がかかえる、難民・移民、景気後退、ドイツ銀行のみならず欧州の銀行の不振などの問題を抱える以上、大口投資家は、ユーロへ資金を投入するよりもドルへ資金を移すことの方が優先課題だと思われます。

そして、彼らは、ECBが追加緩和を決定すれば、それを確認したうえで、迷うことなく行動に移す、つまり、ユーロからドルへの資金移動が行われることになるものと思われます。

防戦買いが良い売り場を提供してくれることになると見ています。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら