【コラム】

円の行方、ドルの行方

23 介入は怖いばかりではなく、良い話もある

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最初に、介入の基礎知識を確認しておきたいと思います。よく、「日銀による介入」と言われますが、正しくは「政府・日銀による介入」です。

ここでいう政府とは財務省のことで、財務省に介入権限があり、執行部隊である日銀に介入額、介入方向、介入のタイミングなどを財務省が指示を与えます。

そして、それにしたがって日銀はブローカー(仲介業者)経由や電子ブローキングシステム経由、あるいは直接銀行へ、プライスを聞きにいき、いずれも売り買いをすることになります。ですから、日銀が実施する介入の後ろには、財務省がいる、言い換えれば、財務省の意向が介入に現れます。

簡単にはドル/円で介入は出ない?

さて、ドル/円は、先週6円強の急落をしたことから、現在株式市場の下落を助長していることもあって、急速にドル/円での買い介入に警戒感を強めています。

ドル/円 日足

しかし、個人的には、それ程簡単には、ドル/円で介入が出るとは見ていません。というのも、そのもの自体が本当にあるのかどうかよくわかりませんが、125円に黒田シーリングがあったという話がありました。もし、それが正しいなら、黒田シーリングから、たった14円ほど円高へ行ったからと言って、介入はしないと思います。

また、今の先進国の通貨当局の介入姿勢は、「できるだけ、市場に任せる」ということだけに、よほどのことがない限り介入はないと思ったほうがよいように思います。

2014年7月頃から2015年3月に掛けてドル高がその他の主要国通貨に対して急速に進みました。EUR/USDで言えば、3500ポイントものドル高が進みました。FRBは、ぶつぶつは行っていましたが、結局は容認していました。つまり、3500ポイントも動いても、今の時代、介入はできるだけ差し控えられているということです。

東日本大震災時の為替介入

さて、ここで、今となっても感謝の気持ちが湧く為替介入についてお話ししましょう。

2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。この事態に対して、ニューヨークのある投資会社の社長が、「日本の震災被害は甚大で、日本の損害保険会社は、外貨で持っている資産を取り崩して、膨大な金額の保険金支払いにまわすので、円買いが発生し、為替相場では、ドル安円高が大幅に起きるだろう」コメントしたために、ドル/円は急落しました。

本邦損害保険会社からは、再三否定発言は出ましたが、投機筋は売りの手を休めず、相場は80円を下回り、さらに売られ続けました。そこで、とうとう政府・日銀が、ドル買い介入で入ってきしたが、売り圧力が強く、日本の通貨当局は劣勢を強いられました。

ところが、ロンドンタイムに入ると、先進国の中央銀行が協調して動き出しました。つまり、協調介入が実施されました。ロンドンでは、BOE(英中銀)が、ECBが、SNB(スイス中銀)がドル買いを始め、さらにニューヨークに入ると、ニューヨーク連銀(NY FED)が、Bank of Canada(カナダ中銀)が、続々とドル買いで参加してくれたことで、政府・日銀は窮地を脱することができました。

協調介入で上がっていく相場を見ながら、強面(こわもて)だとばかり思っていた先進国の通貨当局が、大震災で大変な時の日本を助ける側に回ってくれ、本当に捨てた者じゃないなあと思いました。それも、淡々と介入をこなして去って行った姿には、やるべきことをやっただけという淡々としたものがあって、本当にかっこ良かったです。

このように、皆で日本の窮地に手を差し出してくれたことは決して忘れてはならないと思いました。そして、この恩に報いるには、大震災時に手を差し伸べてくれた国々だけでなく、各国で何かが起きれば、率先して今度は、手を差し伸べるべきかと思います。

また、実際に、今回の参加した、日本をはじめとした各国通貨当局は、日頃から、よく連絡を取り合っていることがわかりました。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら

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インデックス

連載目次
第62回 トランプ氏当選後、「投機筋」対「本邦輸出企業」のバトル
第61回 ヘッド・アンド・ショルダー
第60回 いなくなった、縁の下の力持ち - ドル/円相場
第59回 チャートパターンの落とし穴
第58回 FXトレードは、世界が相手
第57回 天国と地獄
第56回 相場の鮮度に応じたトレーディング・スタイルを取る
第55回 米系ファンドの45日ルール
第54回 ケーブル、一日天下
第53回 理由が後からついてくる
第52回 今年これまでのドル/円と今後
第51回 ひらめきが現実になるには
第50回 メダルと国力
第49回 貿易収支に大きく影響を受けるドル/円
第48回 意外に相場に影響がある夏休み要因
第47回 トレンド相場とレンジ相場
第46回 ユーロ圏を悩ますISとの宗教戦争
第45回 相場の転換に早く気づくには?
第44回 荒波に出航するイギリス
第43回 人の行く裏に道あり花の山、ジョージ・ソロス氏に思う
第42回 通貨当局は、マーケット心理を把握しているか
第41回 英国民投票とドル/円の行方
第40回 意外に知らない、相場エントリーの真実
第39回 理由が後からついてくる - ユーロ/円、大幅下落の可能性
第38回 失敗か? アベノミクス - 注視する米系ファンド
第37回 相場の基本を知って、収益チャンスを拡大! トレンド相場とレンジ相場
第36回 ある噂
第35回 ユーロ/円からドル/円、ユーロ/ドルの将来を占う
第34回 米財務省と日本の財務省との軋轢は回避できるのか?
第33回 マイナス金利適用拡大報道の為替マーケットへの影響は?
第32回 円安頼みの日本経済は、耐えられるのか?
第31回 ドル/円、為替介入の可能性は?
第30回 「リスクの早期発見、早期回避」が身を助く
第29回 BOE vs ジョージ・ソロス氏の教訓
第28回 ヘレンとナディア
第27回 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?
第26回 ユーロ/ドル、防戦買いを突破して下落するか
第25回 今のドル/円の相場のリズムは、グンチャッチャ、グンチャッチャ
第24回 気になるユーロ/円、二極の異なる状況が重なって大幅安か
第23回 介入は怖いばかりではなく、良い話もある
第22回 米系ファンドは、ドル/円にロックオンか?
第21回 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す
第20回 ユーロ/ドル、下落再開か!?--"EUの弱体化"も影響
第19回 原油安で貿易黒字なら恒常的なドル売り発生--円安から円高に相場観が大転換
第18回 ドル/円が急落、どこまで下がるか--「人智では推し量れぬもの」
第17回 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?
第16回 クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!
第15回 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も
第14回 原油価格下落が再開、日本の貿易収支とドル/円への影響は?
第13回 ユーロの悲劇--なぜ急騰し、そして高止まりしたか!?
第12回 ユーロ/円、潜在的な大相場の可能性--110円近辺まで下落か!?
第11回 ユーロ/ドル、超長期からのアプローチ--9.11テロ、リーマン、ドラギ緩和
第10回 フランス同時テロが、FXマーケットに与える影響は?
第9回 ドル/円、どこまで上がるか!?--日本の貿易赤字の変化に注目
第8回 ユーロ/ドルには十分な警戒が必要--ドイツがおかしくなったら大混乱!?
第7回 ECBドラギ総裁は"先手必勝"の追加緩和--FRBイエレン議長には"市場の洗礼"!?
第6回 無視できない、欧米の"決算絡み"の相場の動き--今後はどうなる!?
第5回 トルコ史上最悪のテロ事件が発生、トルコリラはどうなる!?
第4回 ドル/円とユーロ/ドルの膠着相場、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
第3回 フォルクスワーゲン不正問題に思う--ドイツから米国へ富の移し替え!?
第2回 ユーロ/ドルが動くわけ、動かないわけ
第1回 ドル/円、本格的に円高に転換か?

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