【コラム】

円の行方、ドルの行方

21 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す

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当コラム「円の行方、ドルの行方」の第16回「クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!」で毎年繰り広げられる1月相場についてお話ししましたが、本年はどのようになったか、例年のパターンと照らし合わせながら検証してみたいと思います。

まず第16回では、以下のように申し上げました。

「新年度(年末年始)に入った欧米の為替ディーラーは、例年猛攻を加えてくることが多々見受けられます」

「最近の傾向としては、新年最初の営業日に攻撃してくるケースが増えています」

「また、例年、ドル/円が狙われやすいとも言えます」

「日本勢が正月気分になり、脇を甘くしている一方、クリスマス休暇を終えた欧米勢は『さあ、攻めるぞ』とばかりにエンジンふかしているわけですから、ドル/円が狙われるのは、ある意味、必然的とも言えます」

「年末年始相場は、一般的に1月15日前後に終わりますので、それまでには、いったん手仕舞うことが、賢明かと思います」

それでは、今年の1月はどうだったでしょうか。

ドル/円 日足

今年の最初の営業日となる1月4日に、サウジアラビアがイランと外交関係を断絶、中国景気の先行き不透明、年末のニューヨークダウ下落などを材料に東京タイムに日経平均が急落、これを受けてドル/円も120円を割り込み、ロンドンタイムには一時118.70近辺まで下落しました。

年初早々、消化できないほどのドル売り材料が噴出し、この後も相場はロング(買い持ち)筋の投げを誘い、1月11日には116.98まで下げました。

その後マーケットセンチメントは、完全にドルブル(ドルに強気)からドルベア(ドルに弱気)に切り替わり、戻りを積極的に売り込んで、1月20日には115.97の安値をつけました。

今回は、例年ひと相場が終わる15日前後よりも5日程長引いたところに、マーケットの熱気を感じます。

ただし注意したいのは、マーケットが本気になって売り込んできている時に、年初来仕掛けてきた欧米勢は静かに買い戻して利食っており、知らず知らずのうちに他のマーケット参加者のポジションはショート(売り持ち)になっていきます。

さらにこうした下げに勢いのある相場では、どうしても多くのマーケット参加者が相場の流れに出遅れてしまうということです。

というのも、どんどん下げている間は底値を売っていく勇気はなかなか出ないもので、そうしたマーケット参加者は戻り始めている相場で売ろうとします。

既に申し上げましたように、仕掛けた欧米勢は買い戻し、他のマーケット参加者にショートがパスされているところに、戻りで売り上がろうとするマーケット参加者が加わるため、マーケットはどんどんショートが膨らんでいきます。

ここで問題は、安値で売ったマーケット参加者の中には、上げ始めた相場にそれ以上損失はできないと買い戻す参加者もいるのですが、別のマーケット参加者が良い売り場とばかりに売るため、相場が上がりながらも、ショートポジションの総量は変わらないか、むしろ増えていくということです。

こうして、1月27日のニューヨークタイムには、119円前後まで値を戻してしまいましたが、依然としてマーケットポジションは大きくショートに傾いたままのため高止まりしてしまいました。

そして、悲劇が起こりました。

月末の1月29日、この日、日本銀行は金融政策決定会合を開きました。

年初来の金融市場の混乱と景気後退を危惧した日銀は、この会合でマーケットの予想を超えたマイナス金利の導入を決定しました。

これは、ドルショートでパンパンに膨らんだ風船に針を刺すようなこととなり、ドル/円はショート筋のロスカットを巻き込みながら急騰、その日のニューヨークでは、一時121.70の高値をつけ、121.13で今年の1月相場は終わりました。

1月に限らず、毎年、相場は違うようでありながら、同じ時期に同じようなことが起きていることが、今年の1月の相場展開からもお分かりいただけたことと思います。

そうした相場の四季を、前もって知っているか知らないかで、相場に身構えていられるかノーガードでいくかが決まり、もちろんトレードの成績に大きく響いてくることを決して忘れないことです。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら

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インデックス

連載目次
第45回 相場の転換に早く気づくには?
第44回 荒波に出航するイギリス
第43回 人の行く裏に道あり花の山、ジョージ・ソロス氏に思う
第42回 通貨当局は、マーケット心理を把握しているか
第41回 英国民投票とドル/円の行方
第40回 意外に知らない、相場エントリーの真実
第39回 理由が後からついてくる - ユーロ/円、大幅下落の可能性
第38回 失敗か? アベノミクス - 注視する米系ファンド
第37回 相場の基本を知って、収益チャンスを拡大! トレンド相場とレンジ相場
第36回 ある噂
第35回 ユーロ/円からドル/円、ユーロ/ドルの将来を占う
第34回 米財務省と日本の財務省との軋轢は回避できるのか?
第33回 マイナス金利適用拡大報道の為替マーケットへの影響は?
第32回 円安頼みの日本経済は、耐えられるのか?
第31回 ドル/円、為替介入の可能性は?
第30回 「リスクの早期発見、早期回避」が身を助く
第29回 BOE vs ジョージ・ソロス氏の教訓
第28回 ヘレンとナディア
第27回 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?
第26回 ユーロ/ドル、防戦買いを突破して下落するか
第25回 今のドル/円の相場のリズムは、グンチャッチャ、グンチャッチャ
第24回 気になるユーロ/円、二極の異なる状況が重なって大幅安か
第23回 介入は怖いばかりではなく、良い話もある
第22回 米系ファンドは、ドル/円にロックオンか?
第21回 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す
第20回 ユーロ/ドル、下落再開か!?--"EUの弱体化"も影響
第19回 原油安で貿易黒字なら恒常的なドル売り発生--円安から円高に相場観が大転換
第18回 ドル/円が急落、どこまで下がるか--「人智では推し量れぬもの」
第17回 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?
第16回 クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!
第15回 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も
第14回 原油価格下落が再開、日本の貿易収支とドル/円への影響は?
第13回 ユーロの悲劇--なぜ急騰し、そして高止まりしたか!?
第12回 ユーロ/円、潜在的な大相場の可能性--110円近辺まで下落か!?
第11回 ユーロ/ドル、超長期からのアプローチ--9.11テロ、リーマン、ドラギ緩和
第10回 フランス同時テロが、FXマーケットに与える影響は?
第9回 ドル/円、どこまで上がるか!?--日本の貿易赤字の変化に注目
第8回 ユーロ/ドルには十分な警戒が必要--ドイツがおかしくなったら大混乱!?
第7回 ECBドラギ総裁は"先手必勝"の追加緩和--FRBイエレン議長には"市場の洗礼"!?
第6回 無視できない、欧米の"決算絡み"の相場の動き--今後はどうなる!?
第5回 トルコ史上最悪のテロ事件が発生、トルコリラはどうなる!?
第4回 ドル/円とユーロ/ドルの膠着相場、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
第3回 フォルクスワーゲン不正問題に思う--ドイツから米国へ富の移し替え!?
第2回 ユーロ/ドルが動くわけ、動かないわけ
第1回 ドル/円、本格的に円高に転換か?

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