【コラム】

円の行方、ドルの行方

17 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?

17/45

英国がEU離脱の国民投票が早ければ今年6月か7月に実施される可能性があるということが英国のリスク要因として挙げられています。

そのため、今年はポンド売りとして見ているマーケット参加者も多く、実際、先月28日の英ボクシングデーの祝日を終え、欧米勢が新年度入りした29日のロンドンマーケットでは、早速ポンド売りが強まりました。

ポンド/ドル 週足

ポンド/円 週足

ユーロ/ポンド 週足(上げがポンド安)

しかし、EU離脱が英国にとって本当にリスク要因なのでしょうか。

イギリスってどんな国?

英国という国がどんな国であるか、実は、あまりご存知ないかと思いますので、その片鱗ではありますが、ご紹介したいと思います。

英国には、「栄光の孤立」という言葉があります。

つまり、連合するよりも孤立することを、肯定しているところがあり、過去にも、欧州大陸とは一線を画してきた、あるいは一線を画そうとしてきたところがあります。

事実、通貨はポンドのままであり、ユーロではありません。

また、地理的には、英国と欧州大陸の間は、確かにドーバー海峡という狭い海峡によって隔たっているのに過ぎませんが、心理的には、米国との距離感がドーバー海峡並みに狭く、欧州大陸との距離感は大西洋ほどに離れている感じです。

ですので、EU離脱は、決して、英国内では悲観的にとらえられるものではないと見ています。

忘れてはならないことは、今の英国は大英帝国の末裔

しかし、マーケットとして見れば、この材料をポンドにとってはアゲンスト(不利)と捉え、ポンド売りのエクスキューズ(言い訳)にする可能性は高いと思われます。

ただし、もうひとつ、英国を語る上で忘れてはならないことは、今の英国は大英帝国の末裔だということです。

日の沈まぬ国と言われるほど、世界中に植民地を持った国であり、今でも、英連邦として、経済的にも、人的交流の面でも、深いつながりが旧植民地とはあります。

つまり、小さなグレートブリテン島の国ではなく、依然として世界中にコネクションのある、いわば帝国であるということです。

従って、EUから離脱しても、英国には、あまりダメージはないものと見ています。

英国で、テレビを観ると、いろいろなワールドカップを放送しています。

たとえば、最近人気のラグビーをはじめ、クリケット(野球に似たスポーツ)、スヌーカー(ビリヤードのようなウィンタースポーツ)、ダーツ(パブのスポーツ)などがありますが、特にラグビーやクリケットは、アフリカや、インドや、オセアニアなどの英連邦の国々が参加しています。

また、経済紙FT(フィナンシャル・タイムズ)の為替のマーケットコメント欄を見ると、ケニア・パウンドがどうしたとか、インド・ルピーがどうしたとか、世界が全く違って見えます。

英国は、未だに地中海ににらみを利かせている

また、あまり知られていませんが、英国は、未だに、地中海ににらみを利かせています。

地中海の大西洋への出口であるスペインのジブラルタル半島の先端(英国領)、地中海の中央にあるマルタ島、地中海の西に位置するキプロス島、この東西に三点がつながる位置に英軍の駐屯地があり、地中海を航行する船舶を監視しています。

そうかと思えば、ロンドン市内に設置されている監視カメラの台数は、桁違いだとも聞いていますし、カメラによっては、スピーカーがついていて、不審者に注意もするそうです。

なんとなく、のんびりしているような国に見えますが、実は、内外の安全保障に本気で取り組んでいます。

来年は、どうもポンド売りの年になりそうだと言われますが、このように、日本から見てはわからない英国の底力がありますので、単にポンドは弱いと言って相場に突っ込むと、意外にも手痛い目に遭う危険性がありますので、どうぞご注意ください。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら

17/45

インデックス

連載目次
第45回 相場の転換に早く気づくには?
第44回 荒波に出航するイギリス
第43回 人の行く裏に道あり花の山、ジョージ・ソロス氏に思う
第42回 通貨当局は、マーケット心理を把握しているか
第41回 英国民投票とドル/円の行方
第40回 意外に知らない、相場エントリーの真実
第39回 理由が後からついてくる - ユーロ/円、大幅下落の可能性
第38回 失敗か? アベノミクス - 注視する米系ファンド
第37回 相場の基本を知って、収益チャンスを拡大! トレンド相場とレンジ相場
第36回 ある噂
第35回 ユーロ/円からドル/円、ユーロ/ドルの将来を占う
第34回 米財務省と日本の財務省との軋轢は回避できるのか?
第33回 マイナス金利適用拡大報道の為替マーケットへの影響は?
第32回 円安頼みの日本経済は、耐えられるのか?
第31回 ドル/円、為替介入の可能性は?
第30回 「リスクの早期発見、早期回避」が身を助く
第29回 BOE vs ジョージ・ソロス氏の教訓
第28回 ヘレンとナディア
第27回 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?
第26回 ユーロ/ドル、防戦買いを突破して下落するか
第25回 今のドル/円の相場のリズムは、グンチャッチャ、グンチャッチャ
第24回 気になるユーロ/円、二極の異なる状況が重なって大幅安か
第23回 介入は怖いばかりではなく、良い話もある
第22回 米系ファンドは、ドル/円にロックオンか?
第21回 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す
第20回 ユーロ/ドル、下落再開か!?--"EUの弱体化"も影響
第19回 原油安で貿易黒字なら恒常的なドル売り発生--円安から円高に相場観が大転換
第18回 ドル/円が急落、どこまで下がるか--「人智では推し量れぬもの」
第17回 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?
第16回 クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!
第15回 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も
第14回 原油価格下落が再開、日本の貿易収支とドル/円への影響は?
第13回 ユーロの悲劇--なぜ急騰し、そして高止まりしたか!?
第12回 ユーロ/円、潜在的な大相場の可能性--110円近辺まで下落か!?
第11回 ユーロ/ドル、超長期からのアプローチ--9.11テロ、リーマン、ドラギ緩和
第10回 フランス同時テロが、FXマーケットに与える影響は?
第9回 ドル/円、どこまで上がるか!?--日本の貿易赤字の変化に注目
第8回 ユーロ/ドルには十分な警戒が必要--ドイツがおかしくなったら大混乱!?
第7回 ECBドラギ総裁は"先手必勝"の追加緩和--FRBイエレン議長には"市場の洗礼"!?
第6回 無視できない、欧米の"決算絡み"の相場の動き--今後はどうなる!?
第5回 トルコ史上最悪のテロ事件が発生、トルコリラはどうなる!?
第4回 ドル/円とユーロ/ドルの膠着相場、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
第3回 フォルクスワーゲン不正問題に思う--ドイツから米国へ富の移し替え!?
第2回 ユーロ/ドルが動くわけ、動かないわけ
第1回 ドル/円、本格的に円高に転換か?

もっと見る

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事

魚介忘太×わんにゃんぷー「殺伐シェアライフ」1巻、化け物2匹のギスギス生活
[23:46 7/27] ホビー
[仮面女子・桜雪]東大出身アイドル念願の「東大受験本」出版に歓喜 狙うはミリオンセラー
[23:26 7/27] エンタメ
男子のことが苦手な女子が、逃げる震える!あづま笙子「すずなの恋」1巻
[23:26 7/27] ホビー
歌舞伎座で初の洋画プレミア開催! 松本幸四郎「感無量でございます」
[23:21 7/27] エンタメ
「サーヴァンプ」10巻と描き下ろし入りガイドブックが同時発売
[23:16 7/27] ホビー