決して無視できない決算絡みの相場の動き

たとえば、欧米の投資家は6月末の中間決算では、1月~6月の上半期でできたポジションを実際に決済します。

この6月の中間決算は、7月~12月の下期が、7月~8月が夏休みだったり、12月がクリスマスのホリーデーシーズンであったりして、実働日数が少ないため、本決算より中間決算の方が、手仕舞う額が大きく、年間通しても、決算絡みの相場展開としては、最も目立つものです。

そして、それまでキャリー(転がす)してきたポジションを手仕舞うために反対取引が行われ、これが実際相場に影響を与えます。

彼らは欧米だけに、主にキャリーしているポジションは、ユーロ/ドルを中心としたユーロ絡みが多いと言えます。

この決算絡みの相場の動きは、決して無視できないものがあります。

今年の場合、上期にユーロ売りポジションができていたため、決算処理のために6月1日以降ユーロの買い戻しが活発化し、6月半ば頃までユーロは上昇に転じました。

ユーロ/ドル 日足 2015円6月

それまでのユーロに対してベア(弱気)で売ってきたポジションが、なにも取り巻く環境に変化がなかったのにかかわらず、反転しています。

これが、決算絡みの動きです。

実はこの10月も、こうした決算絡みの動き

今年の場合、決算絡みの調整相場が、その後ギリシャ問題が再燃したため、500ポイントぐらいの反発と小規模なものに終わりました。

しかし、年によっては、2カ月で1500ポイント近くの反転になることもあります。

さて、実は、この10月も、こうした決算絡みの動きが出ました。

15日(木)のドル/円の急落、そして10月に入って同じく15日までのユーロ/ドルの上昇には、実は一種の決算に絡んだ動きがありました。

それは、米系ファンドが、11月決算を前にして、45日ルールに基づいて行った売買でした。

45日ルールとは、1人の投資家の解約がファンド全体に与える影響を小さくするために、ファンドを解約する場合は45日前に通知するというルールです。

11月30日の決算日の45日前(最終日)は、10月15日(木)になるため、この日、ドル/円の手仕舞いの売りが大きく出たことにより、一時118.07までという最近としては大きめの下落をしました。

ドル/円 日足 10月

そして、ユーロ/ドルでも、10月に入ってから延々とユーロの買いが出たのも、このルールによるものと思われます。

ユーロ/ドル 日足 10月

また、同じく10月に入ってからの資源国通貨買い、新興国通貨買いも、同様の背景があったものと考えます。

NZD/円 日足 10月

トルコリラ/円 日足 10月

いずれにしましても、最初にご紹介しました欧米の中間決算といい、欧米の決算絡みに伴う為替取引によって相場が大きく動くことは、チャートをご覧頂ければご理解頂けることと思います。

今後の展開の予想--ドル/円は下がる、ユーロ/ドルはユーロ安に向かう可能性

それでは、今後ですが、いったんきれいになった、あるいは軽くなったポジションから、どのような展開を予想するかについて考えてみました。

まず、ドル/円は、昨年からの原油の大幅安によって貿易赤字は大きく減少していますので、やはり下がるものと見ています。

ただし、2012年以来3年半で50円弱もの上昇してきた上げの勢いが冷めるまで、まだ若干高値圏を維持する可能性はあります。

ユーロ/ドルについては、ユーロ圏の盟主であるドイツの最近出る経済指標は悪く、また難民問題やフォルクスワーゲンの不正問題など政治・経済ともに問題を抱えているだけに、ユーロ安に向かう可能性は高いと思われます。

ギリシャの小国ですら、大騒ぎになったことですから、ドイツともなれば、相場に与える影響は、相当なものになるように思われます。

資源国通貨および新興国通貨の反発も一時的と見ており、下落を再開するものと見ています。

尚、最近、テロ事件も世界的に増えてきているだけに、資源国、新興国に対する投資には、十分な警戒が必要があります。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。